悪役令嬢は王子の本性(溺愛)を知らない
霜月せつ/ビーズログ文庫
1章 箱庭①
あれはよく晴れた日のことだった。雲一つないからりとした快晴の下、私は静かに絶望したことを覚えている。
忘れもしない、九歳の時であった。私はとある事情で
王宮内では値段を聞くのも
初めて
お城を探検してみたいという子どもながらの
ここでお待ちください、と声をかけられてハッと我に返る。
気合いを入れ直すためにぐっと
この国では、王族の男児は十歳になるまでに自ら
そんなわけで、今日は私も家の名を背負ってここに来ている。私の家は王家に次ぐ歴史を持つ、
王族とのお見合いは基本的に自分と相手の二人きりで行われる。もちろん、お
最後の方はもはやゾンビと化した。
しかし、まぁ、両親が期待してしまうのも分からなくもなかった。なにせ、私は
世の男はメロメロだわ、と鏡の前でほくそ
王子様だって男の子。そこらの貴族の美少女だって地位も容姿も私には
そう、その時までの私は世間知らずのクソナルシストだったのだ。
王子のいる部屋に案内されて、
半年のレッスンも馬鹿にはできないな、とこの時初めて思った。案外体が勝手に動いてくれる。
十分礼をした後、顔を上げて王子を見た
私は、彼を知っている――?
白い
この人は。
思い出そうとしたところで自分がいまだ名乗っていなかったことに気付く。
なんて無礼なことをしてしまったの!
内心
目が合うと、首を
私は胸が
あぁ……なんて美しい方なのかしら!
固まっている私を見ても、王子は何も言わずに待っている。
――必ずこの美しい王子様の婚約者になってみせる。
私の頭の中はそのことでいっぱいだった。
「お初にお目にかかります、第二王子
ベルティーア?
自分の名前なのに
すると王子も立ち上がって、
「初めまして、ベルティーア
ヴェルメリオ王国、第二王子、ディラン。
この三つが頭の中で理解できた瞬間、ピンク色に染まった脳は冷え、
だってこの瞬間、私は〝前世の自分〞を思い出してしまったのだ。
痛む頭を
なんとかお見合いを終わらせ屋敷へ帰る。王子との会話など全く覚えていなかった。
自室へ
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