まずあなたは不思議の国のアリスを読む。面白さに驚嘆してもいい。奇天烈さに卒倒してもいい。次にどうしようかなと考えたとき、その続きを読みたいと思うのであれば、鏡の国のアリスをお勧めしよう。でも、その裏側を見たいと思うのであれば、本作、『ネヴァー・ネザー・エヴァーランドと刻ウサギ』を読んで欲しい。
ある日、そそっかしい刻ウサギは全世界の時刻を記した時計を破壊してしまった。時間は世界に秩序をもたらす。秩序が混乱した世界は正気のままでいられるか?
この刻ウサギには奇妙な双子の弟がいる。歴史の影に存在したツギハギだらけの刻ウサギ。何故かぬいぐるみの身体をもつ不思議なウサギ。彼は世界を修復するために時計のカケラを回収する旅に出る。それは数多の物語世界を横断する大冒険だった。行き着く先はマザーグース、アリス、そして……?
1000年後に刊行される『ノンセンス大全』にはこの作品への言及が不可欠だ。芸術は自らの先駆者をつくる。この作品を媒介として、あの作品やその作品もノンセンスに通じることが明らかとなったのだ。そして、この異聞の刻ウサギは、ノンセンスに対するノンセンスを体現してみせる。彼は境界の越境者として、カオスにコスモスをもたらす脱領域の知者して、世界の影にいる英雄として、わたしたちの記憶に残るだろう。