胡蝶蘭の花びら。え、胡蝶蘭って美味しいの?うげ、匂いが臭え…ケッ、食べれないじゃん。砂糖漬けとか揚げ物にして食べたかったのによ
笠を被り、歩いている伊吹。
ここは摂津。茨木童子がよく出没すると言われ、
また頼光四天王らの墓場がある地でもあった。彼の
隣には親しい仲の沖田総司、永倉新八がいた。
「まだかよ、渡辺綱の墓場は」
沖田が愚痴文句を吐き出す。随分長い時間歩いた
ので頭に血が昇っているのだ。暇でいつでも
行けるが、本来は甘味を食べる予定だったそうだ。
…仕事しろと言いたい。
「もう直ぐですから我慢して下さい。土方さんらに
秘密裏に来るの大変なんでしょうが。だったら秘密
にする分頑張って歩いて下さい」
きつい。全く持ってきつ過ぎる言葉だった。
どうも彼は知り合いと話すと口調が悪くなる。
それが仲の良い、心を開いている証拠なのかも
しれない。
「煩いですよ、永倉さん。そんな目で
見ても俺は止まらないですから」
気づかれた永倉は舌打ちをした。
舌打ちされた伊吹は傷付いた表情を出していた。
何故、お前が傷付く。
「…ただ剣強いからって何一人だけ休もう
としてたんだよ、子供かよ」
「あぁ?!」
永倉が片眉を吊り上げる。はっきり言って
伊吹も相当疲れて来ていた。しかし、これも
酒呑童子らの依頼の中に含まれている。
ここで立ち止まるわけにはいかない。
「着きましたよ」
墓場はとある寺の敷地にあり、伊吹らは墓場まで
歩くこととなった。墓場に辿り着くと先客がおり、
薄桃色の髪を背まで流した男が手を合わせていた。
肌は白く、横から見てもかなりの美丈夫に見えた。
残念ながら笠で目元は隠れていたが。
「……君達も彼の墓参りか」
「墓参りっていうか…違うというか、そうだと
いうか…」
言葉を濁らせている。しかも、目は泳ぎっぱ
なしだ。危険な匂いがしているのだろう。誤魔化
すのに必死なようだ。
「後ろの彼等は武士とみた。彼に憧れてやって来た
のだろう。頑張って精々一匹くらいは鬼を倒せると
良いな」
何処か悲しげな声音をしたさほど低くは無い高さ
の声は男の要素にとても合っていた。
「なんだよ、めっちゃ気に障るんだけど」
沖田が男が去った後、愚痴を溢す。
「まぁ、少し偉そうだったからな」
「ちょっとここで待ってて下さい」
伊吹は走りながらそう言い捨て男の後を追った。
「ったく、一人で行きやがって」
「…それがあいつなんだよ」
「待ってください!」
青年の声が聞こえ、振り返ると先程の青年が
走ってこちらにやって来た。薄桃色の男は
振り返る。伊吹を訝しみながら。
「君、どうしたんだ」
「っ、貴方にお聞きしたいことがあるんです」
息を切らしながら必死に伝えた。
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