6話 魔物を増やす魔法陣を見つけました
ノエルと一悶着あった後も俺たちはしばらくの間、歩き続けた。
アナベルが木に目印をつけてくれていたため迷うことはなかったが、やっぱりしんどいものはしんどかった。
ノエルもあれだけ張り切っていたのに、今では一言も喋らなくなっていた。
まあ、俺も話したい気分じゃないけど。
だが、このツラさからもようやく解放されそうだ。
まだ少し距離はあるが、アナベルの姿が豆粒程度に確認できるようになった。
後、もうしばらくの辛抱だな。
そう思いながら俺はただひたすらに歩き、そして……。
「……ん?」
アナベルと合流した。
どうやらアナベルも気づいたらしい。
俺が声をかける間もなく、振り返った。
「アルト? それにノエルまで。魔物の群れはどうしたのだ?」
「倒した」
「何? それは本当か?」
「はい! あれだけいた魔物をアルトさんが一瞬で片付けちゃったんです!」
「その様子を見るに嘘ではないようだが……」
そう言いながら、アナベルは俺の方に視線を向ける。
ん? 何だろう。俺の顔に何か付いてるかな?
「アルト、すまない。勘違いかもしれないが、キミの顔はそこまで青白かったか?」
あー、そのことか。
いくら魔力欠乏症から脱しているとは言っても普通に体調悪いからな、俺。
みんなもそうでしょ?
風邪を患ったときに熱が治まっても体調は優れないことあるでしょ。
つまりはそういうこと。
後、単純に人の顔色がそんなにポンポン変わるものじゃない。
安静にしていればもう少し顔色は良くなっていたかもしれないが、ずっと動きっぱなしで休めていないからな。
……と、そんなどうでもいいことを説明するより先に。
「……それよりも、魔法陣の方はどうなった?」
こっちの方が優先順位は高いだろう。
しかし、どうやら状況は良くなってはいないらしい。
アナベルは肩をすくめて言うのだった。
「……お手上げだよ」
「どういうことだ?」
「いや、そこまで難しい話ではない。魔法陣に魔法を
「なるほど……」
ということはこの魔法陣を仕掛けた奴は、それなりの魔法の使い手ということになる。
少なくともこちら側の魔法の使い手よりは遥かに腕が立つ。
魔法陣に仕込まれている解除魔法が、こちらの解除魔法をことごとく
「どうにかならないか、アルト」
「……俺に解除魔法の適性はないからなぁ。でも、やれることは一通りやってみようか」
「……頼む」
といっても、俺にできるのは【魔物生産】でスライムを作り出すことだけ。
とりあえず、スライムを手のひらに作り出す。
「スライム? アルト。お前はテイマーだったのか?」
「まあそんなもんだな」
実際のところは全然違うが、近しいところで言うとテイマーだから否定はしない。
テイマーは魔物を手懐けて力を貸してもらうものだが、俺の場合は初めから信頼度はカンストしている。
それにテイマーと違って手懐けることのできる数に制限はない。
たしかテイマーは最高で六匹までだったと記憶している。
「しかし、そのスライムで何ができるというのだ」
「まあ、見てなって」
アナベルのその反応も理解できる。
俺だってまだ【魔物生産】で作り出されるスライムの力を把握しきれてはいないのだ。
もしかしたら、まだ見ぬ力が隠されているかもしれない。
――例えば魔法を吸収する力、とかな。
今まで魔法を使ってくる相手と戦ったことがないため、この力が備わっているかは分からない。
だが、全てを溶かす最強の体液による圧倒的な攻撃力と全ての攻撃を無かったことにする強靭的な防御力。
その二つの力が備わっているスライムに魔法が通用するビジョンが見えない。
きっと、魔法すらも体内に取り込んでしまうだろう。
「行ってこいスライム。お前の力を見せてくれ」
俺は魔法陣に向かって、スライムを放った。
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