ハズレスキル【魔物生産】は倒した魔物を無限に作れて成長するチートスキルでした〜友達だと思ってた男に馬鹿にされパーティ追放されたけど、女だらけの騎士団に雇われたので戻ってこいと言われてももう遅い〜
無名 -ムメイ-
1章 パーティー追放〜ざまぁするまで
1話 友達だった男に追放されました
「アルト。お前のような役立たずは俺のパーティーには必要ない。出て行ってくれ」
いつものようにクエストをクリアしたその日のことだった。
冒険者ギルドに併設されている酒場で、俺は唐突にリーダーであるカインから追放を言い渡された。
だが、そんなことを易々と受け入れられるわけがない。
だって。
「俺たちは友達じゃないか。そんないきなりパーティーから出て行ってくれなんて……悪い冗談はやめてくれ」
「はぁ? 俺たちが友達だぁ? お前の方こそ冗談はやめてくれよな」
「冗談なんかじゃない。俺たちは子どものとき、冒険者になって有名になろうってともに誓い合った仲で……」
「そうだった……かもしれないな。だが、もう俺とお前じゃ身分が天と地ほど違う。俺は実質最強のSランク。片やお前は底辺のFランクだ。俺が実績を積み上げていく中、今までお前は何をやっていた?」
「でも、それでも俺は……」
カインとこれからも冒険者をやっていたい。
そう……言いたかった。
でも、何だよその表情。
カインは他人を見下すような視線を向けるような奴じゃなかったはずだ。
カインこそ何をやってきた。
何を見てきた。
今まで様々なクエストを受けて、四苦八苦しながらもクリアしてきて……。
それでいろんな人たちから感謝されて、俺たちは嬉しさのあまり笑い合った。
それなのに、どうして……。
どうしてそんなに変わってしまったんだよ……。
心の奥底から悲しみが込み上げてきて、今にも泣いてしまいそうになる。
だが、こんなところで泣くのは恥だ。惨めだ。
こんな事態を招いたのは、俺自身に他ならななかった。
だから、カインの言いたいことも分かる。
もう冒険者になって三年が経つというのに、俺は未だに底辺のFランク。
こんな奴とパーティーなんか組みたいわけないよな。
……でもさ、俺をこんな底辺冒険者に居座らせているのはカイン、お前なんだぞ?
俺のスキル【魔物生産】には確かな可能性があった。
一度倒した魔物を無限に作り出すことができるスキルなのに、カインは作り出した魔物を索敵にしか使わせてくれなかった。
どれが敵か分からないからという理由で。
だから俺は未だにスライムしか作り出すことができずにいる。
でも、分かってる。こんなことを言ったって何も変わらないことぐらい。
結局は自分から動かなかった俺が悪い。
「ハッ! ようやく自分の弱さに気づいたか。もう一度言うが、お前は俺のパーティーにはいらない」
「…………」
「ああ……それと、心配しないでくれ。お前の後任はもう見つかってる。まだランクはBだが索敵に関して右に出るものはいないって話だ。だから安心して出て行ってくれ」
カインはそう言って嘲笑った。
醜く。汚く。
そしてその嘲りに同調するように、今まで無言を貫いていた仲間たちも嘲笑する。
彼女たちもまたカインと同じように、明らかに俺を見下している旨の発言をした。
「さっさと目の前から消えてくれない? 目障りなの。分かる? さっさと死んだら?」
「ははっ、酷いことを言うね。でも、死ねば少しは役に立つかもね。優秀な私たちがあんたを見なくて済むんだから」
そうして再び、彼女たちは嗤った。
すると、周りの冒険者たちも騒動に気づいたのか、笑い始めた。全く関係がないのに。
中にはクエストでお世話になった人たちも少数混じってはいるが、基本は関わりのなかった人たちばかりだ。
どうしてそこまで人のことを見下せるのか。
冒険者の中ではそれが当たり前のことなのか。
これがおかしいことだと思う俺の感覚が間違っているのか。
もう……何も分からなかった。
俺の目指した冒険者は誇り高いものだったはずなのに。
でも、冒険者の実態はこんなにも醜い。
だからもう……いいや。
こんな冒険者になるぐらいなら、大人しく身を引こう。
「分かったよ。お前たちの望むように、俺はパーティーを抜ける。今まで……ありがとう」
苦楽をともにしてきた仲間たちに――夢を見させてくれた冒険者に別れを告げて、俺は背を向けた。
きっと、この後も笑い者になることだろう。
でも、もういいよ。それでも。
――俺は冒険者を辞める。
これが一番いい選択だ。
俺に冒険者は向いていなかったんだと思う。
今後二度と冒険者ギルドに足を踏み入れることはない。
本当に今まで……ありがとう。
俺は夢と希望に満ち溢れていると思っていた冒険者ギルドを後にした。
――侮蔑や見下しが多分に含まれた嘲笑を背にひしひしと感じながら……。
★
さてさて、可愛い女冒険者を引き入れるためだけにアルトをパーティーから追放したカイン。
彼は何も知らなかった。
いかにアルトがダンジョン攻略において、パーティーに貢献していたのかを。
彼らはこの後、地獄のような人生を歩むことを、まだ誰も知らないでいた……。
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