変身!緑のタヌキ。

@ramia294

第1話

「私は、緑のタヌキをいただくわ。だって美味しいでしょ」


 現在、アイドルの中でも、断トツの人気を誇る『最中あん子』。

 年越しは、どうするのかと、記者から質問を受けた時、何気なく口にしたひと言。


「大晦日は、国民的歌番組に出た後すぐに、年越しそばを食べるの。年が明ける五分前には、間に合うわ」


 そのあと、手軽で美味しいからと、緑のタヌキ発言をしてしまった。


 このニュースが、こんなに大きく取り上げられるとは、平和な世の中と僕は、笑っていた。


 しかし、翌日、街から緑のタヌキが、消えた。


 程度の差こそあれ、この国の男子全てが、あん子ちゃんのファンであるという事実を忘れていた。


 僕は、近所のドラッグストアで、緑のタヌキを買おうと思っていたが、もちろんすでになかった。


 頻繁に通う僕は、店長と知り合いだ。


「仕方ない。店長、次に入った時、ひと箱で良いので、取り置きしてもらえますか」


「甘いな。学生君。残念ながら、緑のタヌキは、既にない」


 全ての街から緑のタヌキが、消えたらしい。


「しかし、あん子ちゃんと同じ時間に食べるだけなら、売り切れなんてしないのでは?」


「学生君、君は、独占欲という言葉を知らないのかね?自分自身は、あん子ちゃんと同じ時間に緑のタヌキを食していても他の人間には、食べさせたくない。恋とは、独占欲の言い訳なのだよ。男の子だって恋の勉強は、必要だよ」


 笑いながら店長は、奥に引っ込んでいった。

 

 落ち込む。

 三笠フワリ。

 僕は、これでも傷つきやすい乙女だぞ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る