第24話 悪魔の書1
2012年1月15日
自宅のベッドで目を覚ます。
まだ姿勢を起こす気はない。
今日は何かするつもりはなかったが、
そう簡単に単純なる日常を送らせてはもらえない。
そんな
「「聖夜さん、ちょっとお付き合いしてほしいんですが」」
「いいっ、つきあい!?」
起きたばかりか、突拍子な解釈をしてしまう。
もちろん男女の付き合いなわけじゃなく、
都内にある図書館に行こうと誘われた。
都笠図書館といえば、光一が学園から本を移した所だ。
「そ、そうか。
なんだ、借りてる本でもあったのか?」
「「私が借りている本の返却もですけど、
光一君に用がありまして」」
「そういえば、お前も図書副委員長だっけか。
クラスじゃ学級委員長で、混乱するわ」
「「よく言われています。
詳しくは向こうでお話します」」
「分かった、すぐ行く」
光一はクラスで副委員長で図書委員長。
それぞれ逆のポジションだから、誰でもよく間違える。
ただ1ついえるのは、2人共学園で1~2を争う成績で
そんなのが同じクラスにいるのはお約束と捉えるしかない。
今日は光一もいるのかまでは聞かなかったが、
ここで断るのも、お人好しの性を越して一任務として
心の中へ閉まってゆく。姉に軽食だけで良いと催促し、
さっさと支度して家を出た。
巷区に着く。
もう何回も来ているから、どこに何があるのかは
ほとんど把握している。
自分はたくさん読書をする性格でもないけど、
このメディア時代においてまだ本という紙を用いた
情報個体が必要とされているのも意外。
昔はそうでも、電子機器がある今になっても
読まれるなんて文化的
漫画がとても読まれているだけあるから、字や絵など
表現の塊が人へ伝える可能性も侮れない。
図書館前まで来たが、外にはいない。
マナはもう館内にいるようだ。
「で、話って何だ?」
「魔法書についてお話したいと思って。
光一さんと話し合いをします」
「魔法の本だって!?」
ちょうど到着したばかりの彼女と会って、
今回の件について教えてもらう。
魔法、ACから発する力の事についてだと思ったが、
今日は書物の件だという。
図書館に収めている本を光一と一緒に管理するために
どうするか直に詳しく話し合うと言った。
「ていうか、光一も関わってたなんて。
結晶に関する本とかか?」
「「その魔法書ですが、
誰かに目を付けられていると言っていました」」
急に小声に変わる。
2人共に図書委員だから前から何かしてたのだろうが、
それと本と何が共通しているかは不明だけど、
追って説明してくれるという。
とりあえず、どんな内容なのか館内奥に入ってみた。
都笠図書館、日本の中ではTOPクラスの広さと
入り組んだ本棚の集まりで有名な場所。
通路そのものも広く、本棚も高めで大の大人でも
台を持ってこないととどかないくらい本を敷き詰めた
歴史ある情報の施設だ。
交流ルームもあり、夏休みの宿題を一緒にやる時など
よく利用していてちょっとしたスポットでもある。
詳しく話すために空いている席を探していたところ、
昴峰学園の生徒がいた。
「透子さん」
「あ」
同級生の
授業中でも、何か読んでるくらいだからよくある
内向的な性格だ。
ただ、彼女も最近学校に来ていなかったから
どこで何をしていたのかまで知らないが。
「よくここに来てるのか?」
「うん、あまり学園に行きたくないから」
「・・・そう」
家に
私服なので、当然だが。
詳しくは知らないが、あまり調子の良い噂は聞かない。
ここで長居しても悪く、光一を待たせてしまうから
あまり細かく話をするわけにはいかなかった。
透子のいる席を後にする。
続けて他室へ進むと奥のコーナーに光一がいた。
一目に付きにくいようひっそりと椅子に座り、
数冊の本をテーブルに置いて待っている。
こちらに気付いて自分達を迎え入れた。
「待っていたよ、聖夜君」
「光一の方は大丈夫だったか?
都心の方に近い所だから、心配してたぞ」
「ああ、今のところ被害を受けていない。
悪魔は建造物内までは来ないみたいなんだ」
「なんというか、相当な事をしてるんだな。
まだ、ここに持ってくる本はあるのか?」
「いや、もう全て運んだ。
めぼしい物だけはこっちに移した」
「そうか。
で、マナと何やら色々と計画してるみたいだけど?」
「実は僕達はある魔術に関する本を調べている。
図書委員で守ろうという話だ」
「まじゅつ!?」
優等生という立場から抜けたような言葉だ。
ACではなく、本に関する魔法だという。
なんのこっちゃと発言しようと思ったが焦って止めた。
マナがウィンクする。
魔法も魔術も違いはないけど、
結晶に関して光一はまだ知らないようだ。
あまり生徒に話さないようにと、
3人やマーガレット主任に禁止されてる。
郷は川上の件で知られてしまったから仕方なく、
余計な口を開くなとは言ってあった。
TV放送については世間にとって作り物としか
思われていないようで、光一はマナの
まだまだ広まっていない。
つまり、結晶ではなく秘術の方面から
オカルト的な話として進めろというわけだ。
「お前が魔法学もやっていたなんて意外だなー。
図書委員はいつの間にかそんな計画してたんだ?」
「24日の事件以来、歴史に埋もれていた事実が
明るみに出てしまったからね。
都庁に張り付いた結晶の起源にも興味があるよ」
「そ、そうだな・・・けっこうキレイだし。
で、でも、そんな物をよく見つけたな?」
「図書室の隣の保管室にあったんだ。
まるで埋もれるようにひっそりと。
調べると、ヨーロッパ製の皮表紙だと分かった」
「・・・ヨーロッパ関連か。
マナから聞いたけど、本を狙う奴がいるんだって?」
「ああ」
深夜に覆面を被った何者かが
一般人に紛れてちょくちょく図書室に来たという。
人物は電気を付けずにろくに借りもせず、
流し見するように調べるだけで出ていく。
それらを公の場に置いておくのも無理だと判断して
違う場所へ隠そうとした。
内心、オリハルコンオーダーズの手先が探りに来て
魔法関連を物色しようとしたと思う。
でも、特殊工作班にいる身としてその件も禁句に、
口が滑る恐れがあるから言えない。
「ていうか、まんま
本当に魔術本を探しにきてるのか?」
「正規の図書館でないただの学園に
いちいち身を隠しながら来るはずがない。
考えられるとしたら、貴重品の類」
「わざわざここに持ってくるのも大変だろ。
自分家へ持って帰ってもダメなのか?」
「ああ、僕の部屋は父親の管理下で
メイドの人達にチェックされている。
だから隠し事の1つも許されない」
(なんていう家だ)
光一の家は財閥系で、図書館の設立に一役買っているのは
前から知っていた。
しかし、家柄が家柄だけに怪しい物を1つ置くのも
許されないくらい厳しいのだろう。
去年のクリスマスから、上流階級も周囲に敏感になり
不審物に目を尖らせて寄せ付けたくないようだ。
「僕の父は司書を勤めている。
だけど、主に管理をしているのは司書補の人なんだ」
「父さん、政治家もやってるからか。
でも、こっちで隠しても結局見つかるんじゃないのか?」
「最近、役員も度々この図書館に来ているんだ。
気付かれてはいないと思うけど、施しをしておいた。
司書補で協力してくれる人がいる。
バーコードラベルを無関係の分野のところに貼り、
わざと公共の場に置いた方が見つかりにくいと、
ここを選んだ。葉を隠すなら森の中が一番だ」
「相変わらず頭良いな」
マナと共に相談する理由がこれだった。
家柄の都合自宅で隠し持ってれば良いという、
単純な話で終わるものではない。
それにしても、成績優秀な光一がこんな分野に
興味があったのは意外だ。
彼女がいるからきっかけがあるのだろうが、
ここは襲来を受けそうな場所には思えないけど、
葉を隠すなら森の中。
信頼する司書補に管理させて
隠し棚に入れた方が良いとふむ。
図書委員のメンバーも思うように集まらず、
少しでも助けを必要としていた。
「そうだったのか。それで、俺のやる事は?」
「それは――」
しかし、残念ながらそのような淡い考えは通用せずに
結晶の者達はやって来る。
ACの侵略は知性極まる場所においても
例外なく侵食しかけていた。
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