第16話 襖の隙間
2011年12月31日
今国でいう大晦日、31日においても国は
晃京内の散りばめられた暴動鎮圧にとらわれていた。
警察、自衛隊、防衛省に休みはない。
X線を改良したセンサーでACから出現した悪魔の動向に、
最低限の兵装で緩やかな波のように走り回る。
自動小銃もより慎重に扱い、市民などに当たらないよう
発砲しなければならない。
作戦司令室に責任者が自衛隊員と話をしている。
「正倉院大臣」
「・・・・・・」
防衛省大臣、
自衛隊の動きを逐一監視し続ける。
予想だにしなかった場所から現れた悪魔への対処に
遅れをとられていた。
交通情勢も一部の者達が地方へ開かれると分かるや、
一斉に押しかけるように首都高へ詰め寄せて自衛隊の
進行を阻み、対処を遅らせてしまう。
都庁から出現すると分かっていても、凄まじい速度で
外部へ飛び出したり、気が付くと都庁ビルの周囲から
浮かび上がってきたりして都内のどこかへ消えてゆく。
隊員が待ち構えて射撃準備をしてもすぐに逃げて
目を
「「奴らは・・・人間の行動が読めるのか」」
「出現予測位置はいずれも高速道路外周との事。
結晶体は未確認ですが、空間の歪みは同様の条件と一致」
「X線反応も高速道路からわずかに出た模様。
個人的見解ですが、やはり都庁と同様な要素で
結晶内から這い出てくるという事は・・・大臣――」
「はっきりと断定はできん。
だが、内部からの仕業なのは濃厚だろう。
我々が介入できん以上は外界から守るしかない」
ここにいる者達は結晶の性質に否が応でも
悪魔という異物が関与すると認めざるをえなかった。
都庁に張り付いた虹色の結晶は破壊不可能。
内からモノを手当たり次第に排除する術しかない。
被害状況は多くないものの、
都民の数十人はすでに犠牲者もでている。
夜間に襲われているのがほとんどで、
派手な服装をする者ばかり狙われているのが分かった。
蓮は作戦展開を都内じゅうに配置したかったが、
さらに上に居る組織によって
女性議員の
部下が続きを語る。
「ロケットランチャーの使用はほぼ下りません。
政府が発砲を許可したがらない傾向で、
極度な射撃制限を要求されています」
「内閣め・・・世間の目を気にし過ぎだ」
国が余計に火薬と音を出すなと警告。
よって、大胆な行動を大臣は起こす事ができなかった。
部下が大臣の意向を理解したのは理由がある。
蓮も19年前は自衛隊員で、経験からバッシングなどの
重圧を受け続けていたからだ。
一時期ガタ落ちしかけた市民の信頼は彼によって回復し、
歴代の防衛大臣で最も頼りになる者だと
総理大臣から評価されるくらいらしい。
部下の目からしても腕や脚の太さが役員とは違う風格に
タフさを
視点は蓮に戻る。
自衛隊陸将補、武田から連絡がきた。
「「防衛大臣、敵残存予想数はおよそ15。
クリアリング範囲は埼王方面も行います?」」
「そうしてくれ、
高速道路一角から現れたと推測される陸上、飛行型の
悪魔はルート上に沿って移動、奇襲している」
「「現在、装甲車両を2隻で対処中。
一部の市民以外は全て避難を完了。
目標が外側に出ていかないのが気になります」」
「ただ、指揮外による撃退もみられるが、二人組の模様。
どこの組織だ?」
「「
AC適性者とされる昴峰学園在学中の」」
「何?」
予想外な事に民間の者が鋭利な刃物を奮って
数体排除してくれていた。
バイクに乗った若い2人組が悪魔に通用する武器を
所持しながら対処しているのが目撃されたという。
「警察の指示か!?」
「「違うようです、彼らは科警研に所属する・・・ん?
1人は無関係者でもう1人がそのようです。
目的は不明ですが、他県に出ようとしていると推測」」
「こんな時間にか」
「「ACを改良した装備を所持している模様。
特殊工作班などという警察機構がいつの間にか
設立した魔術専門機関による仕様と宣告が含まれるで、
こちらは全て把握できませんがね・・・。
彼らを抑えますか?」」
「・・・いや、いい。協力して駆除にあたるように」
誠は回りくどい言い方をする。
理由はもちろん、過去に起きた未解決事件。
結晶を
展開を述べた。
晃京一帯から湧き出てくる悪魔との接点を捨てきれず、
自衛隊陸将補からの指摘にうなずく大臣。
書類に書いてある個人情報覧を見ながら
淡々と思い返させるように語る。
「「個人としての見解ですが、連中が人だけ襲うってのが
また色々と引っ掛かってるんです。
今回の発生理由は突然勃発したものとは思えません」」
「・・・・・・」
突然という言葉を使ったのは2人にとって
よく覚えている事件ゆえに使われたから。
異常な黒い蟲が大量に湧き出してテロリストを飲み込み、
跡形も無く場が治まったのが今回のケースと重なり、
あたかも人為的な根拠だけが残された気がした。
武田が得意気に語る供述は部下達にとって妙な事でも、
重鎮にとっては嫌でも脳裏にこびりつく。
「「形は違えど、自分もよく覚えています。
19年前の再来かもしれませんよ。
ヨーロッパの来訪者が再びやって来ている線も
一応捨てきれませんね」」
「・・・そうかもしれんな、以上だ」
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