6:食文化について
【食文化について】
シルヴァミストの食文化は、大体十九世紀半ばのイギリス、アイルランドあたりをモデルに設定しています。
が、ファンタジーなので、ロマンを優先しており時代考証は適当です。
ジャガイモ、トマト、玉ねぎといった、現実世界でいう中南米原産の野菜が、既にシルヴァミスト人の食生活に根付いていますが、これらの野菜が、ヴェネレ大陸など、いわゆる新大陸にあたる地域から持ち込まれたものなのかは不明です。
シルヴァミストの土地は魔力の影響により、現実世界よりもかなり肥沃な土壌で、小麦も茶葉もあり得ないくらいよく育ちます。あまり大規模な植民地を持たないシルヴァミストが、それなりの国力を維持しているのは、この土地柄による所が大きいようです。
シルヴァミスト国内でも、地域ごとに異なる食文化があります。ざっくり区分すると、東部・北部では牛が、南部・中部では豚がよく食べられ、西部はやや魚介文化が強めです。全域で羊肉も好まれています。
また、西部の人は芋類をよく食べ、南部には豆料理が多いようです。
以下、作中に登場した料理をいくつか解説します。
◆バターつきパン
第4話に登場。冒険者達の集う酒場『跳ねる仔狐亭』のメニューです。西欧ファンタジーや童話によく登場する、いわゆるバタつきパン。
エイダンは価格が安いという理由で、このパンとミルクをよく食べています。野菜スープがサービスでついてくるようです。
◆挽肉ときのことハーブのパイ
第10話に登場。『跳ねる仔狐亭』のメニューです。
挽肉は羊の肉で、たっぷりの香草によって臭みを消しています。きのこの味はマッシュルームに近いですが、アンバーセットの北側、ノムズルーツ周辺で穫れる地元の固有種で、紫の水玉模様という、やや毒々しい外見をしています。
◆
第10話に登場。現実世界で言うところの、ジンに近い薬用酒。
『跳ねる仔狐亭』では、蒸留酒を水割りやお湯割りにしたり、ライム果汁などを足して楽しむ事が出来ます。
荒くれ自慢の冒険者が、ストレートでの飲み比べをする事もあるようです。エイダンはシェーナに、ああいう真似は決してしないようにと言われました。
◆タコのオーブン焼き
第38話に登場。エイダンの親友キアランが作った料理です。
ぶつ切りにしたタコとジャガイモを和え、オリーブ、香草、粗塩で香りづけ。屋外で漁師のまかない用に作る場合は、熱した石か鉄板の上で豪快に炒めますが、この時はオーブンでグリルにしています。
◆バロメッツの干し団子
第38話に登場。シルヴァミストの料理ではなく、北ラズエイア大陸のハオマの故郷で食べられている、魔物料理です。
挽肉と葉野菜をいっぺんに食べたような食感で、作中のエイダンはロールキャベツを思い浮かべていますが、日本人なら、野菜餃子の餡を連想するかもしれません。
また、干し団子の外観は里芋の煮っころがしに似ています。
◆蕪のシチュー
第39話に登場。エイダンの祖母ブリジットの得意料理です。フォーリー家は代々の蕪農家で、彼女は蕪料理レシピを色々知っています。
この回のシチューの具は蕪と蕪菜、山菜のみでしたが、祝い事のごちそうの場合は、イニシュカ名物の塩鱈を具材に加えます。
たっぷり作った方が美味しいので、大鍋で作って何日かかけて食べたり、近所の人に分けたりします。温め直してくたくたになった所にパイ生地を被せ、シチューパイにしたものは、特にエイダンの好物です。
◆タコの串焼き
第44話に登場。イニシュカ島の港の、小さな魚市場で売られています。
ぶつ切りのタコの足を串に刺し、イニシュカで穫れる柑橘類の果汁をベースとした秘伝のタレを塗って、網焼きにしたもの。癖になる美味しさで、仕事上がりの漁師達は、よくこれとエールで一杯やってから帰ります。
シルヴァミスト国内でも、タコを食べる地域は限られているため、温泉が湧いて以来ちらほら訪れるようになった遠方の湯治客からは、珍しがられるようです。「食えば一口で分からせてやれる」と、店主は自信を覗かせています。
◆目玉焼き乗せトースト
第44話に登場。イニシュカ島の港に店を構える、喫茶店兼居酒屋『オハラの店』のモーニングメニュー。島では珍しいコーヒーや、本土風の紅茶、島の地鶏の卵料理が味わえるお店です。
漁業の盛んなイニシュカ島ですが、島の西には牧場もあり、乳製品、鶏卵、羊毛などを島民向けに出荷しています。地鶏は卵の味が濃厚で、また肉質は固いものの、スープにすると独特の滋味が堪能出来ます。
◆オリーブとイワシのパイ
第51話に登場。スターゲイザーパイではなく、一口サイズのサーディンを、パイ生地の切れ端で軽く包んで焼いたもの。元々、ロイシンの父ディランのおつまみレシピでしたが、ロイシンも気に入ったので、夕時の軽食によく食べています。
◆あんずパン
第57話に登場。ブリジットはじめ、イニシュカ村の女性達にレシピが伝わるお菓子です。刻んだ干しあんずと木の実をパン生地に練り込んで焼き上げ、クロテッドクリームと、あんずのシロップ漬けを添えて食べます。
バターと果物をふんだんに使う、島民にとってはかなりの贅沢品なので、祭りや子供の誕生パーティーの席で出される事が多いです。
◆カニと豆の煮こごり
第66話に登場。イニシュカの網元・オコナー家に伝わる漁師飯です。枝豆に似た品種の豆を型に敷き、カニのほぐし身、魚の出汁などを重ねて固めたもの。
煮こごりと書くと和風っぽいですが、テリーヌのような印象の料理で、蒸し野菜を付け合わせに、ニワトコ酒のアテとして食べるのが最高とされています。
◆ニワトコ酒
第66話に登場。アンテラ山麓で栽培されているニワトコ(現実世界でいう西洋ニワトコ)の花を漬けて作った、伝統のリキュール。女若衆が仕込み、村の祝い事の席で振る舞われるものです。一緒にニワトコのシロップも作っていて、子供やお酒の飲めない人はそれをジュースにして飲みます。爽やかな味わい。
◆レモネード
第75話に登場。シルヴァミスト最先端の瓶詰ドリンクです。
炭酸のドリンクで、冷やすと特に美味しいのですが、この世界では硝石が発見されておらず、また水属性冷却特化の氷魔術は呪術が多いため、冷たい食べ物・飲み物の開発普及にかなり苦労しています。
◆魚のグリル
外伝第1話に登場。『跳ねる仔狐亭』のメニューです。グリルしたトラウトに、レモンと焼き野菜を添えたもの。店主が自ら渓流で釣ってきたようです。
アンバーセット周辺はレイディロウ湖以外にも、湖沼や河川があちこちに広がっているため、淡水魚がよく食べられています。
とはいえ肉体労働の冒険者には、魚より肉派が多く、シェーナなどは完全に肉党なのですが、漁村育ちのエイダンにとってはごちそうと言えば魚介で、貯金が一定額以上になると、自分へのご褒美として魚メニューを食べていたようです。
◆腸詰めの煮込み
外伝第3話に登場。馬肉のソーセージと豆と干し野菜を、瓶詰のトマトペーストで煮込んだもの。冒険者界隈の定番料理の一つですが、お腹を満たし体を温めるための食事といった感じで、あまり美味しくはありません。
軍事基地と
【その他・本編で未紹介の小話】
◆エイダンの好物は牛乳、魚全般、タコ、蕪のシチューパイ、あんずパンなど。酒以外特に苦手な食材はなく、何でも美味しく食べる健啖家ですが、自分で作る料理はいまいちだと自覚しています。
◆酒好きのシェーナは、エールを特に好んでいますが、ワインやミードも嗜みます。また食べ物では、スパイシーな肉料理、つまみ全般、ティプシー・ケーキ(スポンジにシェリー酒を染み込ませたケーキ)などの刺激的なスイーツが好みです。
◆エイダンはティプシー・ケーキを食べても酔っ払います。
◆ハオマは基本的に、食べ物を含め世俗の物品には執着しません。ただ、街なかで寝泊まりする時は、聴覚が敏感過ぎて寝つきが悪くなりがちなため、寝酒を飲む事があります。寝酒は健康に良くない習慣なので気をつけましょう。
◆フェリックスは上流の
◆マディの母親は南ラズエイア大陸出身で、母から教わったクスクスやタジンといった異国の料理を、彼女も作る事が出来ます。
ただ、冒険者暮らしの中では器具やスパイスが揃わないので本格的なものは作れず、たまに実家に帰った時に、趣味として料理を楽しんでいるようです。また、
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