10-9



 翌日――


 刹風が求人広告を調べてみると、奇術師の言った通り。

 低レベルでも良いから、パーティーメンバーになってほしいと言う依頼は、それなりにあった。


「これって、おすすめとかってあるんですか?」

「そうですね……この、複数のボスが出現しているかもしれないと言う調査依頼なんかがおすすめですね」

「げ、でも、これってレベル高いですよ! それに、基本付いて行くだけで何もしなくて良いって書いてありますし」

「実は、今――この世界では、いくつかの異常事態が発生しているんですよね」

「は? なにそれ聞いてないんですけど」

「最近の事で言ったら、刹風君が狩っていたハニービーの大群もその一つなのですよ」

「えっ! あれってバグだったりするの?」

「はい、さすがにあの大群に真っ向から挑むのは厳しいですからね。普通は広範囲の範囲攻撃が出来る魔法職を最低でも一人雇ってクエストをクリアするのが常識になっています」

「そうだったんだ……」

「もっとも、貴女のことですから、効率が良くてラッキーぐらいにしか思っていなかったんでしょうけどね」

「あ、うん。そんな感じだったかな」

「とまぁ、そんな感じでゲームバランスがおかしな事になっている点が多々見受けられましてね。実は、ボクも運営から実態を調査してほしいという依頼を受けていたりするんですよ」

「は……それって、もしかして……」

「調査は、あくまでもついでですよ。それに高レベルの方々の技を見れる良い機会だと思ったのですが……お気に召しませんでしたか?」

「そっか! そうだよね! なんかもっと良い技とか盗めるかもしれないもんね!」

「はい。それに貴女好みの報酬だというのも理由の一つです」


 刹風は、珍しく自分が報酬以外の事に目がいっていたことに気付く。


「10万キャッシュ……プラス、出来高払い!?」

「この出来高払いと言うのは、本当に複数のボスが存在していた場合。相応のドロップ品が期待できるわけですからね。それゆえのボーナスだと思って頂ければ幸いです」

「やる! って、いうかやりたいです!」

「では、依頼主と交渉してみますかね……」


 そして――


 交渉は、まとまり。

 別の所でベル上げをしたいと言ってきたみらいを除くメンバーは、デルタイリアへの地へ降り立った。

 ちなみにピー助は、珍しくみらいに付いて行った。

 少なからず荷物の運搬もしていたが、それもすぐに終わり。


「んじゃ、俺達は、ここらへんで適当にレベル上げしてるから」

「せっちゃん、くろにゃんまたあとでや~」

「うん、行ってくるね!」

「では、行ってまいります」


 刹風と奇術師は、予定通りに街を出ると――

 山岳部の方へ向かって歩み出したのである。

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