7-15

 みらいは、思いっきり頭にきていた。


「貴方は、私に何をやらせたか分かっているんですか!?」

「もちろん分かってますよ」


 奇術師は、どこまでも涼し気だった。

 それが、よけいにみらいをいらつかせる。


「今やってた事って人体実験ですよね!?」

「臨床試験なんて、言葉を変えただけで実際は、人体実験以外のなにものでもありませんからね。それと同じ事ですよ」

「つまり、確信犯だったと自白するんですね」

「えぇ。正直ここまで腕が良いとは思ってもみませんでしたよ」

「上手くいったからいいものの失敗したらどうするつもりだったんですか!?」

「どうもしませんよ。実際に鈴凛君には同意をえてますからね」

「だからって!」

「みらいさん。手術を手伝って下さりありがとうございます」


 奇術師に食ってかかっているみらいに鈴凛が割り込んできた。


「それから、どうか奇術師さんを責めないで上げてください。全ては私と時也のわがままを押し通したがため。貴女に負担を強いてしまったことは謝ります。どうか許してくださいませんでしょうか?」


 みらいは、盛大なため息をつく。


「分かりました。貴女がそこまで言うのでしたら。私からは、もう言うことがありません」

「なぁ! おい! 奇術師! 手術は成功したんだよな!?」


 今度は、時也が奇術師に食ってかかっていた。


「ええ、当初の予定以上の成果を期待していいと思いますよ。みらい君にお礼を言ってくださいね」

「じゃ、じゃぁ、……」

「全ては、ご自分の目で確かめてみるべきかと思いますよ」

「ありがとう! みらいとやら! お前のおかげで師匠の目が見えるようになるかもしれねぇ。この礼は絶対にするから忘れないでくれ!」

「そうね、手術が成功していたら、相応の礼を受け取る事にするわ」

「いや! きっと上手くいっている! 本当に感謝する!」

「だ、そうですよ。良かったじゃないですか、みらい君。例え、自己満足の為であっても、その向こうに患者や、その家族の笑顔があるならボクは悪魔にでも魂を売ります。手伝ってくれて本当にありがとうございます」

「よくわからんが、みらいはスゲー事やったんだよな! 奇術師の兄ちゃん!?」


 龍好は、半信半疑のまま奇術師に問いかけていた。

 

「えぇ。思いっきり自慢して下さい。俺のみらいはすごいんだぞって」

「そうか、やったなみらい!」


 みらいの頭をなでる龍好。


「みらいちゃん、おつかれさんや~」

「むぴ~~!」


 万歳して喜んでいる栞と、良く分からないが尻尾をフリフリして喜んでいるピー助。

 刹風だけは、少し複雑な心境だった。

 売れば、とんでもない金額で売れるアイテムがあっさりと消えてしまったからだ。


「にしても、話がちがうじゃねぇか奇術師!」


 今度は、別の理由で奇術師に食ってかかる時也。


「なにがですか?」

「お前、言ったよな? 真剣狩る☆しおん♪には、化け物が居るって!」

「えぇ。確かに居たでしょう」

「あぁ、だがなぁ。化け物しか居ねぇの間違いじゃねぇのか!?」


 それに対し、龍好は異議をとなえた。


「ちょっと待ってくれ! 俺は、ノーマルだ!」

「ざけんな! てめぇが一番の化け物じゃねぇか!」

「どこがだよ!?」

「気迫だけで、俺らの足がすくむとか普通じゃありえねぇんだよ!」

「しょうがねぇだろ! 時間なかったんだから! 手加減してるひまとかなかったんだよ!」

「自覚あんじゃねぇか!」

「あ……」

「『あ……』じゃねぇよまったく。だがな、この借りは絶対に返す。なにかあったらいつでも言ってくれ」

「分かった、そん時はよろしく頼む」


 龍好と、時也は、あつい握手をかわしたのだった。

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