3-33


 三人の少女は薄い鼠色のモンスターに追われていた。

 二人の少女は、その脅威から逃れるために疾走している。

 白い回復魔法使いもどきは、黒い魔法使い見習いを背負い。

 白黒のシーフは、その後ろを追従していた。

 左右には厚く高い薄茶色の壁。

 そこには、ところどころ痛んだ壁画が描かれていた。

 やや濃い目の茶色で描かれた様々なポーズを取っているストーンゴーレム達。

 それは――

 まるで、象形文字の様だった。  


「ねー、みらいホントにコレで大丈夫なの!?」

「予定通り、必要以上に追って来ないでしょ」


 栞が、ここぞと思って右に曲がったら敵が追って来なくなったのだ。

 先程ちょっぴり――刹風が、ちょっかいを出したストーンゴーレムは、分岐路の一つ。 

 戻る道を塞いで待機していた。


「分岐路で曲がった時に敵が追って来なかったら当たり!」


 そして少し進むと新たな敵が待ち構えていた! 


「こうして敵が待ち構えて居たら大当たりなの!」


 新たなストーンゴレムと目が合えば!

 ギロリと目を光らせてロックオン!

 みらい達に向かって猛突進! 

 慌てて引き返せば!

 ついて来る敵が一体増えている!


「やっぱり栞の持つヒキの弱さは違うわね!」

「あう~。なんや、あんまり嬉しゅうないなぁ~」

「いいじゃない、ボスに遭遇できる確率は先頭を進む人のヒキの弱さで決まるみたいなの。過去一度もお目当ての物を引いた事のない栞にしか出来ない見事な作戦だわ!」


 この敵を釣るだけ釣って逃げまくる作戦は順調だった。

 ボスと遭遇する為の条件の一つ。

 それは、20体以上のザコゴーレムに敵意を持たせる事。

 倒しても良いし、こうして逃げてもいい。

 だた、逃げ巻くった場合。

 その先が袋小路だったら……

 思いっきりそれまでに釣りまくった怪力岩モンスター達にぼっこぼっこにされるというスリルがおまけで付いてくる。

 釣り釣り逃げ逃げ作戦を繰り返せば繰り返すほど……

 ドシドシ、と地響きさせてついて来るモンスターが増えていく。

 その大きさは軽く二メートルを越し腕と脚の太さは一撃の強さを語り。 

 胸板の厚さは圧倒的な防御力を見せては、威圧してくる。

 最初の一体だけは、それでも……なんて淡い期待で刹風が叩いてみたが。

 あまりの硬さに叩いた刹風の方が痛いくらいで――しばらく手がしびれていた。

 結果的に、逃げて逃げて逃げまくり――敵が増えて増えまくり。

 その数は20体を超えていく。

 左に曲がっても右に曲がっても――確実に敵の数は膨れ上がっていく!


 正にパーフェクトだった!


 最低20体のストーンゴーレムに見付かれば良いところ!

 栞は、最後の最後まで当たりを引きまくって!

 その数を30までに膨れ上がらせていた!


 そして――


 ようやく開けたた場所に出たと思ったら。

 どでかい灰色の怪物が待ち構えていた。

 もう、戦うとかそーゆー問題じゃない。

 アレは観光客の為に用意した観賞用の何か別な物に見えた。

 ここまでくるとかえって気持良く負けを認められる圧倒的な存在感。

 アレと戦って散るのも悪くないと――素直に受け入れられるほどの存在。

 心には怯えも恐怖もない。

 ただ、安堵感にもにた絶望だけが刹風の心にあった。


 コレで終われるなら本望だと――



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