それぞれの想い 3

 朝になりユモトは目が覚めた。若干、寝不足気味だが、時間になるとちゃんと起きてしまう。


 居間ではルーが真剣な表情で探知盤を見ていた。あれからずっとそうしていたのかと思うと、ユモトは尊敬と感謝の念を覚える。


「おはようございます、ルーさん」


「あぁ、おはよーユモトちゃん」


 元気そうにウィンクをしたが、その顔には少し疲れが見えた。


「あの、ルーさんも少し休まれては?」


「私が休んじゃったら探知盤見る人が居なくなっちゃうからねー、ヘーキヘーキ」


「そうですね…… すみません」


 ユモトは気遣って言った言葉だが、当たり前の事を返されて言葉が出なくなる。


「それよりお腹空いちゃった!!! ユモトちゃんごはん頂戴ごはん!!!」


 メイド服を着たルーはソファの上でニーソックスを履いた足をバタバタとさせた。


「はい、今作りますね」


 笑顔でユモトは言った後に朝食の準備に取り掛かる。


 やがて、簡単な朝食が出来上がるとユモトは皆を起こして回った。


「ンまあーーーい!!! さすがユモトちゃん、絶対私のお嫁さんにするから!!!」


 皆が揃う前にルーはガツガツと朝食を食べている。


「ですから、僕は男ですって」


 半分諦めたような苦笑いでユモトは言った。


「ルー殿、一晩中寝ずの番お疲れさまです」


「いいのいいの、私は夜の方が元気だから」


 モモがねぎらいの言葉を掛けると握ったフォークと一緒に手を振る。


「でも私、流石に朝になったら眠くなってきちゃったからギルドまでは誰かおんぶしていってよねー」


「お前は子供か」


 アシノは呆れたように言った。他愛もない会話をしながら朝食をとる、昨日キエーウというテロリストによる襲撃があったとは思えないほど穏やかな朝だ。


 そして朝食を食べ終えると全員が準備を終え、スーナの街のギルドを目指す。


「よーししゅっぱーつ!!! それいけムツヤ号!!」


「はい!」


 ムツヤの背中には本当にルーが乗っかっていた。


 裏の道具である『魔法の固定具』でしっかりと密着している上に、ルーはギューッと抱きついているので背中には小柄な体の割には大きな2つの柔らかい感触が感じられる。


 デレデレとした表情になるムツヤを見てモモは一言進言した。


「あ、あのー? ムツヤ殿? やはりルー殿は従者である私が背負うべきでは?」


 しかし、ルーはムツヤにしがみついたままだ。


「モモちゃん、これって魔力流しながら背負うと疲れも軽減されるし、私が力を抜いても落っこちないスグレモノっぽいの」


「大丈夫ですよモモさん、俺が背負っていきます」


 モモは複雑な気持ちになったが、確かに体力のあるムツヤが背負うのは理にかなっているので、それ以上何も言えなかった。

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