迷い木の怪物

迷い木の怪物 1

 かいつまんで、今までのムツヤの生い立ちを話し始めるとユモトは真剣に聞いてくれていた。


「そうだったんですか、とても信じられないような話ですが」


 しかし、ムツヤとモモの話を真剣に聞いたがユモトは話がいまいち頭に入っていないようだ。だが、無理もない。


「ユモトさんに飲ませた薬も本当はたくさんあるんですよ、嘘ついてごめんなさい」


 そう言ってムツヤはペコリと頭を下げて謝った。


「い、いえいえ! あのお薬のおかげで僕が助かったのは事実ですし、感謝していることに変わりはないですよ!」


 ユモトはあたふたしながら命の恩人に言う。


「そうでずか、それならよがっだですが」


「ムツヤ殿、説明も終わりましたし何か食料を取り出しては頂けませんか?」


 気まずい雰囲気を変えるためにもモモは話に割って入った。ムツヤは「そうでじたね」と言いカバンから何かを取り出そうとする。


「あ、そうだ。野宿するならこれがありました」


 そう言ってムツヤが取り出したものは……。







 森の奥にその魔物は居た。


 迷い木の怪物と呼ばれるそれは上半身が人間の女の形をしている。


 緑色の髪をし、服のように樹木の葉っぱを身にまとっているが、露出している部分のほうが多い。


 下半身は大きな木と融合している。


「マヨイギ様、彼等の偵察が終わりました」


「ご苦労さま、いい子ねヨーリィ」


 ヨーリィと呼ばれた女が膝を地につけて報告をした。


 年は12か13歳ぐらいで、ゴシック調の黒いドレスを着ている。


 そのドレスと同じぐらいに黒い髪。濁った紫の瞳はまっすぐに眼の前の主人を見つめていた。


「それで、奴等は何をしていたの?」


「はい、家を作ってそこで寝ています」


 迷い木の怪物はその報告を聞いて固まる。今なんと言ったのだ、家だと? だがヨーリィが冗談を言うことは決して無い。状況が全く理解できなかった。


「家とは何だヨーリィ、ただの寝床じゃないのか?」


「はい、家ですマヨイギ様」


 迷い木の怪物はいまいち状況が飲み込めないでいた。この森で人間1人ぐらいの養分を吸収しようと思い、下調べをした時には小屋の1つも無かったはずだ。


「わかったわヨーリィ、私をその場所に案内しなさい」


「かしこまりました、マヨイギ様」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る