冒険者になろう 2

「知り合いなんですか?」


「いえ、オークには仲間を見かけるとそう挨拶をする習慣があるのです」


 オークは種族の平等宣言がされる前、人間から特に目の敵にされた種族であり、その人数も極端に少なくなった。


 昔から一族の仲間意識が強いオークは挨拶を重んじていたが、そうでなくても数少ない自分と同じ種族を見かけたら一言二言話しかけてしまうだろう。


「オークにはそういう習慣があって、人間にはないんですね」


「そうですね……」


 不思議そうにムツヤは言ったがモモは説明することをしなかった。しないと言うより出来ないと言ったほうが正しい。


 この話はムツヤが、もっとこの世界の生活に馴染んでからでないと理解が出来ないだろうと。


「いらっしゃいませー、二名様ですかー?」


 黒色のワンピースにフリフリのエプロンを付けた給仕服の女店員が笑顔で出迎える、それを指差してムツヤは言った。


「め、め、メイドさんだ!! モモさんメイドさんでずよ!! 俺、このせ」


 モモは素早くムツヤの後ろに回り込んだ。柔らかな薄緑色の手がムツヤの口を、鼻をふさぐ。


「二名だ」


「か、かしこまりましたー。ご案内しまーす」


 店員には少し引かれたが、それだけで済んで良かった。


 モモがホッとしていると口も鼻も塞がれたムツヤはんーんーと苦しそうに唸っており、慌てて手を離す。


「申し訳無いムツヤ殿! ですがサズァン様との約束を思い出してください」


 そこでムツヤはあっと声を出した、自分が住んでいた所の事は内緒だったと。


 だが、この世界で絶対に見たいものベスト5に入るメイドさんを見てしまい、ついテンションが上がってしまったのだ。


 と言ってもメイドではなく、ただの店員なのだが……


 案内されたテーブルで二人はメニューを見る。ムツヤは文字を読めないが、どんな文字の意味も解読できる便利な指輪を付けているのでそれは問題は無かった。


 しかし別の問題がある。


「モモさん、ペペカグって何ですか?」


 そう、ムツヤは料理の名前を知らない。小説に出てきた物や祖父のタカクが作ってくれた物は知っているがメニューの大半は知らない。


「えーっと、茹でた麺をエビとイカと一緒にニンニクとレッドペッパーで炒めた料理ですね」


 麺は知っていた。塔の中でたまに落ちている貴重な物だ、黄色いのが『ぱすた』で白いのが『うどん』だ。

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