はじめての武器屋 8
「ムツヤ殿、鎧はこちらと……こちらではいかがでしょうか?」
モモは2つの鎧を指差す、片方は重厚な銀色の鎧だ。値段は20000バレシ、この店では一番良い鎧だろう、手入れもしっかりとされている。
もう一つは革を何層にも重ねて急所にだけ鉄板を仕込んだ軽い鎧だ。こちらの値段は10000バレシと少し安めだ。
留め金の赤サビが気になるが、動きやすさを好むムツヤには気に入りそうな一品だ。
「うーんと、そっちの革の方がいいですかねー」
やはりムツヤは動きやすい鎧を選んだ。すると丁度店の奥から金を用意したギルスがやってきた。
「はいはい、お決まりのようで。って、鎧はまぁ分かるけど剣は本当にそれで良いのか?」
ムツヤが手にとってカウンターまで来た剣を見てギルスはそう言った。安物で済むのであれば売上的には喜ばしいことだが……
「はい、気に入っだので!」
まぁ客がそう言うなら良いかと、ギルスはせめてその剣の説明だけはしてやることにする。
「その剣は魔剣『ムゲンジゴク』って奴のレプリカだ。レプリカつっても本物は誰も見たことが無いから形が正しいのかは誰も知らないけどね~、何でも本物は斬りつけたら相手が火だるまになるらしい」
「へぇ~」
剣が伝説の魔剣のレプリカである事と、本物の魔剣はまるで子供が自由に考えた空想のような効果を持つことに対しての生返事だとギルスは思っていた。
しかし、実際はムツヤの間抜けな返事は最近愛用していた剣の名前を知ったことに対するものだ。
『何当たり前のように伝説の魔剣を持っているんですかムツヤ殿!』とモモは心の中でツッコミを入れていた。
「鎧は特に由来も何も無い、ただの上質な革鎧だ。それじゃ取り引き成立って事でいいかな?」
さっと右手を出してきたギルスの手にハッと気付いて今度はしっかり握った。
「はい、ありがとうございます!」
ニッとギルスは笑って手を離した後に、少し真面目な表情をしてムツヤに語りかける。
「それとムツヤくん。これは友人としての忠告だけど、好きなものを持っていっていいと言われたら高価なもんを持っていくか、使わなくてもゴネて盾も貰っちまえば良いんだ、そしてどっか別の場所で売ればいい」
そこまで言ってギルスは少し間をおく。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます