第十五話 呼び出し

真守まもり…?」

「……ん…」


 まことがワタシを呼ぶ声がする。


「なに…?」

「何って、こんなところで寝てるから…」

「……?…あ」


 そう言われて、やっと自分がどこに居るのかを思い出す。


「その…、心配だったから…」

「そうか…、悪いな」

「ううん…、信が元気になったのなら別にいいよ。ワタシがこうしたかったんだから」

「…、そうか」


 心配なのは確かにそうだけど、本当は信のそばに居たかっただけなんだけどね。昨日はあんなこともしちゃったし…。


「あっっっ‼」

「…⁉なんだ⁉」


 そこまで考えて、気づいた。自分が昨日の晩に何をしたのかを思い出して、恥ずかしくなる。まあ…、何をしたかって言うと、ナニなんだけど…。


「昔から…、お前は何かと俺の世話を焼いてくれるよな」

「まあ…、一応幼馴染ですから?」

「そういうものか」

「うん、そういうもの。幼馴染って、意外と気になる」

「まあ、そうじゃなきゃ、幼馴染なんて言えないか」


 ワタシが信の世話を焼いてる理由は、それだけじゃあないんだけどね。信だから、ワタシはいろいろやっちゃうんだよ?あなたは、気づきそうにもないけど。


 突然、ワタシのデバイスに着信がある。


「黄瀬さんからだ…、なんだろう?」


 ワタシは、応答する。


青山あおやま黒川くろかわのほうの調子はどうだ?』

「もう、って感じですよ‼」

『それはよかった。それで、二人に…、って機動くん!邪魔しないで‼』


 どうやら、向こうでなにやら騒がしいことが起こっているみたい。


『やっほ~‼青山チャン‼突然だけど、黒川クンと一緒にボクのラボまで来てくれないかな⁇』

「なにかあるんですか?」

『いいからいいから‼とにかく来てちょーだい‼、黒川クンはキュアーが治したんでしょ⁇』

「…、わかりました」


 通信を切る。


「はぁ…」


 なんだか、気に食わない。信のことを『どうせ』なんて言いやがった‼いっそのことをバラしてやろうか…‼でも、まだ利用できるかもしれないしなあ…。我慢我慢。


「行こうか」

「ああ」

「信は…、その前に着替えたほうが良いね。着替え、というより制服だけど持ってきたよ」

「助かる」


 信は、紙袋に入れられた制服を受け取ると、沈黙する。


「なあ、着替えるんだが…」

「……?わかってるよ⁇」

「いや…、一応、退出していただけるとありがたいんだが…」

「………?あっ‼」


 ワタシは慌てて退出する。


「それじゃあ、下のロビーで」

「急いで行くよ」


 扉を閉じる。


 あぶないあぶない…、というより、もったいないなあ。せっかく、が見れると思ったのに…。


 ま、ワタシも着替えないとマズいか…。


 とりあえず、着替えるためにロッカールームへと向かう。


「ありゃー、糸ひいちゃってる」


 ワタシのパンツは、昨日の晩の一件で……、その…、だ。


「信もすぐに来るだろうし、さっさと着替えちゃおう」


 パンツを履き替え、何着か支給されている、別の制服へと着替える。その後、ロッカールームをあとにする。


 ロビーへと到着したワタシは、辺りを見回す。


「信は…、おっ、居た」


 信へと声をかける。


「おまたせ」

「行こうか」

「うん!」


 ワタシたちは、機動きどうのラボへと向かった。





「失礼しまーす…」

「失礼します」


 ラボへと到着したワタシたちは、そこに黄瀬きのせさん、縁葉みどりばさん、赤根あかね君が居るのを確認する。そして機動正きどうただし…。


「おお~!よく来たね‼ようこそ、我がラボへ‼‼もっとも…、キミたち二人はすでにここにきたことがあるか。あははははははは‼」


 うるさい…。誰かこいつを黙らせてくれないかな…。


 赤根君が、声を出す。


「あっ!黒川さん、元気になったんですね‼」

「ああ、おかげさまで」

「これで、43班全員集合ですね‼」


 赤根君は、元気だなあ。歳下なのもあるけど、かわいい後輩が出来たって感じだ。


「それで…、何かあるんですか?」


 信が、機動へと質問する。真面目な信もかっこいいね‼


「うん‼よくぞ聞いてくれた‼‼昨日の件なんだけどね…」


 そう言いながら、機動は手元のキーボードをいじる。すると、プロジェクターに画像が表示される。


「昨日、キミたちが戦った…、名前は……。まもるクン!何だったかね⁉」

「【ガスプ】ですか?」

「そうそう!それだ!キミぃ、記憶力いいねぇ…。そして、ソイツのところに現れた…【オレフ】という亜人…、、この二人についてだ」

「何か、わかったんですか?」


 信の質問に、自信ありげには答える。


「ふっふっふっ…!聞いて驚け‼!」

「は…?」

「と言っても、ガスプに関しては、急に確認された個体だからね。わからないことだらけなんだよ。今のところは、市民に危害を加えるということはしていないようだ」

「あの亜人…、何か妙でしたね」

「ズビシィッ‼キミの意見は求めていない‼」


 コイツ…、やっぱり…!信の話を聞け!


「とまあ、それは置いておいて。オレフのほうだ。この個体は、ずいぶん前から存在が確認されている」


 そう言い、機動はオレフの画像を表示する。昨日の、オレフのものだ。画像のオレフの胸には、【OREH】というより…、鏡写しの【HERO】という文字が確認できる。


「こいつは、【オレフ】という亜人だ。こいつも、直近で特に大きな被害を出していないようだ。しかし、最近の『失踪事件』には、こいつが関係しているものがあるみたいだね」


 機動は続ける。


「何が目的で、誰を標的にしているかは不明だが…、こいつが何か良からぬことを企んでいるのは確かだ。噂では、を消すとかなんとか…」

「なるほど。じゃあ僕たちは、それを阻止しなくちゃあならないってことですね?」

「さすがまもるクン!するどい‼はなまるあげるね」


 画面の画像が、別の画像へと切り替わる。


「そして、次の話なんだけれど、コイツはまあ、厄介だね」

「なんです、コイツ?なんか、カセットテープみたいですね」

「正解。こいつは、今の調べでは【ラジオカセットレコーダー】の要素を持った亜人のようだね。名前は、【ラジオット】」

「正解したから、はなまるもう一つくださいよ」

「もちろん‼執クンの今後に期待しているよ‼」


 黄瀬さんが、質問する。


「それで…、何が厄介なんだ?」

「それなんだよね…、柔楽やわらクン居るだろ?あの彼が、

「柔楽さんが⁉」

「驚くよね。彼の実力はボクも認めるところだ」


 赤根君が、楽しそうに話し始める。


「ああ!あの人ですね。いい人ですよね。それに、とてもやさしい…、顔は怖いけど」

「でも、実力は本物だよ。顔は怖いけど」

「「うわはははははは‼」」


 二人は、そんなやり取りをして笑う。赤根君はともかく、機動。お前は黙れ。


「まあ、負けたっていうのは、語弊ごへいがあるね。正確には、


 機動は続ける。


「黒川クンみたいなはともかく…、柔楽クンが逃がすとはよっぽどだよ。……、おっと、青山チャン。?」


 ——黙れ。


「ま!そういうわけだ。こいつは手ごわい。そして、能力はわかっている限りでは『取り込み』と『再生』らしい。これはそのままの意味で、人とか物体、あるいは炎などの現象を、に取り込み、それを使


 赤根君が声を出す。


「あー、使いようによっては、厄介ですね。ソレ」

「だろう?まあ、キミたちも他人事ひとごとではいられないよ?」

「どういうことです?」


 機動は、ニヤニヤしながら答える。


「これから、キミたちには…、コイツを


 コイツ…、マジかよ…。

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