男が恐れるもの

男は何も怖い者は無い。唯一怖いものと言うのは梟の置物だ。梟には悪い思い出しかない。梟の置物の目にカメラを仕掛けられた。父親は男が悪いことをしないようにカメラを仕掛けていた。男は物心ついた時から窃盗を繰り返していた。盗むものには男はこだわっていた。男はこだわっていたものというのは梟の置物だった。父親は男が初めて盗んだというものが梟の置物と言うことに気が付かなかった。梟の置物だけが増えていくことに父親は違和感を抱いた。男の行動を把握しておかなければいけない。自分の息子に限って罪を犯すことはあり得ない。それは息子を信じる親の気持ちだった。

「そんな息子は親の気持ちを知っているのだろうか?必死になって心配しているのに」

父親は虐待するときは鬼になる。その目付きは殺気立っていた。男は父親には向かおうとはしない。逆に言えば痛い目に出来るだけ合わないように心がけていた。男の部屋には梟の置物が散乱していた。父親は男に問いたださなかった。梟の置物に何故こだわりを見せているのか気にもとめなかった。男にとって梟は憧れと言うものがあった。高い木の上から獲物を目掛けて狩ると言う習性を知った時男は恐怖心を抱いた。梟の置物は何もしない。梟の中にカメラがあることを知らなかった。男はふと浮かんでいた。梟の置物をもっていった方がいいと。「念に念を。」

男にとって梟の置物は唯一の癒しでもあった。そんな男は梟の置物を手放した。梟の置物を手放すことは最後まで抵抗があった男だったが憎しみの方が優っていた。

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