第26話/私の裸♡
放課後になると、朝宮は先に会議室へ向かい、俺は芽衣子先生に呼ばれて職員室へやってきた。
「俺、なんで呼ばれたんですか?」
「夏休みの宿題、よく全部終わりましたね」
「よ、夜更かししたので」
「まぁいいです。それより、風紀委員から苦情が入ってるから、あまり女遊びしないように」
「してませんよ」
「先生がどう思うかじゃなくて、生徒の感じ方が大切だから。とにかく、文化祭実行委員頑張りなさい!」
「はーい」
「伸ばさない」
「はい」
答え見たの絶対バレてるけど、なんか許してもらえたみたいでラッキーだ。
とりあえず俺も会議室行かなきゃな。
早歩きで会議室にやってくると、まだ会議は始まっていなく、みんな好きなように携帯をいじったり、雑談を楽しんでいた。
すぐに朝宮の隣の席まで行き、アルコールティッシュで丁寧に椅子とテーブルを拭いて座る。
すると、朝宮が小さな声で話しかけてきた。
「島村さんに謝られましたが、辞める気はないとのことでした」
「そうか。てか、会議ってなにするんだ?」
「分かりません」
「あれ!? 和夏菜ちゃん!?」
「なんだ、B組の実行委員は爽真と咲野なのか。なにかと一緒になるな」
「僕としてはなかなかに気まずいんだけどね‥‥‥」
「そういうこと言うからだろ」
「そ、そうだよね」
「和夏菜ちゃん和夏菜ちゃん!」
「はい」
咲野は嬉しそうに無表情の朝宮の頭を胸に抱き寄せた。
「一緒に頑張ろうね!」
「抱きつかないでもらえますか? 髪が乱れます」
「ごめんね!」
「おい爽真」
「な、なに?」
「羨ましいって顔に出てるぞ」
「わ、わざわざ言わないでくれよ」
「とても不快です」
「僕は今すぐ飛び降りる!!」
「早まるな! ここは一階だ!」
「賑やかだね! さぁ、会議を始めよう!」
陽気な三年生の女子生徒が会議室にやって来て、すぐに会議は始まった。
「まず、文化祭実行委員長を決めたいんだけど、誰かやりたい人いる?」
「はい! 僕がやります!」
「わーお! 爽真くんだよね! 他にいないみたいだからお願いしようかな!」
「ありがとうございます!」
多分、朝宮の前で良いところ見せたいんだろうな。
「一年生が委員長だと不安もあるから、副委員長は二年生にしてほしいな!」
「それなら俺が」
「ヨッ! 中野くんよろしく! それじゃ、後の進行は任せます!」
そして、爽真は早くも中野先輩に頼りっぱなしで、中野先輩が会議を進行し始めた。
まぁ、一年生に関しては学びの年ってことで、二年と三年も理解してるんだろう。
それに中野先輩はインテリメガネをしていて、こういうことに関しては頼りになりそうな感じだし。
「まず、文化祭の宣伝ポスターを貼ってもらえる場所を探したいです。同時に、チラシ配りなどで宣伝すべきかと。委員長はどう思う?」
「そ、そうですね! まずは美術部にポスターのイラストを頼んで、それから電話や直接出向いたりして、ポスターを貼る許可をもらいましょう!」
「いいね。それじゃ、俺達二人が美術部に頼みに行くので、三年生にチラシの内容やデザインを任せてもいいですか?」
「うん! 任せて!」
「ありがとうございます。二年生と一年生は、より良い文化祭になるように、なにかアイデアを考えていてください! 思いつかなくても責めないから、気楽にね!」
んじゃ、気楽にやらせてもらおうかな。
「
「今はサボる時だぞ」
「二年生は輪になって話し合っています。一年生だけですよ? 携帯とかいじってるの」
「一年生にはまだ団結力ってものがないんだよ。クラス対抗行事とかもしてないし、これが自然だ」
すると、すぐに朝宮に一年生が集まり始めた。
「和夏菜ちゃん! 一緒に考えよ!」
「絶対盛り上げようね!」
「朝宮さん、疲れてない? 大丈夫?」
団結力無いの俺だけとか、そんなの嘘だろ!!
あぁ、咲野もだわ。
朝宮に群がる一年を見て、静かに殺意を抑えてるのがハッキリ分かる。
そんな顔してる。
※
結局、一年生の俺達じゃたいした案も出なかった。
「美術部が早急にポスターを描いてくれることになりました!」
「おー」
「一年生は、なにか良い案出た?」
「なにもでませんでしたー」
「そっかー。二年生は?」
「ポスターなんだけど、今年も隣の
「それはいいな」
桜城里高校って、確か女子校だよな。
「それじゃ朝宮さん」
「はい?」
「君は優秀だって聞くから、A組の二人で行ってくれないかな」
「私は構いませんよ」
「君もいいよね?」
「あ、はい」
「かなり優秀なお嬢様校だから、なにか条件を持ち出されるかもしれないけど、その辺は上手く話し合ってよ」
「分かりました」
「それじゃ二人は、電話でアポ取ったら帰っていいよ!」
「それじゃ、お先に失礼します」
「頑張ってね和夏菜ちゃん!」
「咲野さんも」
「きゃー!!♡ 和夏菜ちゃんに応援されちゃった〜♡」
相変わらず咲野は幸せそうだな。
女子高に行くとか不安でしかないけど、朝宮に任せとけばなんとかなるはずだ。
会議室を出て朝宮の後ろをついて行くと、朝宮は急に立ち止まって振り返った。
「なぜついて来るんですか?」
「電話するんだろ?」
「私一人で大丈夫です」
「そりゃ助かる」
全部朝宮に任せて、俺は自転車のサドルとハンドルを拭きまくって、自転車に乗って家に‥‥‥帰りたかった‥‥‥。
しっかり鍵閉めてんじゃねーよー!!!!!!!!
※
結局歩いて家に向かっている時、後ろから自転車のベルの音が聞こえて振り返ると、朝宮が俺の自転車に乗って、すぐそこまで来ていた。
「お先です」
「てめぇ!」
そのまま俺を通り過ぎていき、ムカつくことに先に帰られてしまった。
そして、朝宮からだいぶ遅れて家に着くと、朝宮は金魚に餌をあげているところだった。
「あ、おかえりなさい!」
「勝手に自転車使うなよ」
「サドルの高さ合わなくて乗りづらかったので、謝ってもらっていいですか?」
「本当に一発殴ってやろうか!!」
「やめてください! 目覚めちゃったらどうするんですか!」
「そしたら罪を負うことなく殴れるだろうが」
「威勢だけ良くても、私に触れないじゃないですか。口だけの僕くん!」
「あー、今日から飯作らないからな」
「ごめんなさい!!」
朝宮は速攻で土下座をし、そのままその場で逆立ちをし始めた。
「お前、最初からやる気満々で短パン履いてただろ」
「はい」
逆立ちしてスカートがめくれたが、ちゃんと短パンを履いていた。
にしても、支え無しで逆立ちできるのは地味に凄いな。
「そういえば、アポはどうなった?」
「明日の放課後行けることになりました」
「そうか」
「体制戻すので、脚支えてもらっていいですか?」
「無理」
「うぐっ!」
逆立ちまでは凄かったが、ちゃんと体制を戻すことができず、痛々しく背中から倒れてしまった。
「だ、大丈夫か?」
「そんなことより、今日は大変でしたね! 焦りましたよ!」
「いや、マジで大丈夫か」
「床がひんやりして気持ちいいだけです!」
「そうか。てか、いつか嘘もバレそうだよな」
「そうですよ! バレたらあの人絶対怖いです!!」
朝宮は急に立ち上がって頭を抱え、怯え出してしまった。
「いや、全然ビビってなかったじゃん!」
「怖いですよ! 女って本当に怖いんですから!」
「それは同感」
「でも私は怖くありませんよね!」
「色んな意味で怖い」
「どうしてですか!? 私何かしました!?」
「色々してるだろ!!」
「い、いや‥‥‥反省はしてます‥‥‥でもしょうがないじゃないですか!!」
「なにがだ! 言ってみろ!」
「お風呂入ってる時、出したくなることぐらいありますよね!」
「‥‥‥なんの話してんだ?」
「お風呂でちょっ、ちょっと出してしまったと言いますか、それって、潔癖症の
「ちょっとならいいって問題じゃないからな!? 高校生だろ!? 高校一の美少女なんだろ!? なにしてんの!?」
「ちょっとがダメならハッキリ言います! 堂々と出し切ってやりましたよ!! すっごく泡立ちました!」
「どっちもアウトだよ!! あと病院行け!!」
「ちゃんとシャワーで流しましたよ?」
「そういう問題じゃねぇよ!! マジでふざけんなよ!!」
「楽しければいいじゃないですか!! そんなに怒らないでくださいよ!!」
「なにに楽しさ感じてんの!? 痴女なの!?」
「白いのがピュッピュって出て、それがモコモコって! 楽しいじゃないですか!」
「えっ、お、女も白いのって、その‥‥‥出んの? モコモコってなに?」
「そ、そりゃ、女の子だって‥‥‥したくなりますよ‥‥‥」
「な、なんか聞いてごめんな。高校生だもんな、そうだよな‥‥‥」
「はい? だから、
「あー! なーんだ! っておいー!!!! どうりで週一でシャンプー切れるのおかしいと思ってたんだよ!! しかもなんだよ! 風呂掃除しないのに、証拠隠滅で泡だけ流してんじゃねぇよ!!」
「だって怒るじゃないですか! エッチなの想像したくせに!」
「想像するように誘導しただろ!」
「やっぱりしたんですね! イカ臭いです!」
「今は臭くないよね!? てか、泡風呂したいなら、専用の粉とか売ってるだろ。それ買えよ」
「そうですね! 次から白い粉使ってお風呂でキメますか!」
「言い回しが危険だからやめような」
「はーい!」
それから朝宮は、さっそく泡風呂の素を買いに行き、俺は先にお風呂を済ませてしまおうと、朝宮が居ないうちに、ゆっくり湯に浸かることにした。
※
「ふんっふふふん〜」
朝宮?帰って来るの早いな。
お風呂に入っていると、朝宮が鼻歌を歌いながら脱衣所にやってきて、俺は開けられる前に声をかけることにした。
「今入ってるから、どっか行ってくれ」
「ふふんふっふっー」
「朝宮!?」
いくら声をかけても返事をしない朝宮は、擦りガラスの扉越しに服を脱ぎ始め、地肌のシルエットが見えてしまっている‥‥‥。
「朝宮!! おい!! まさかイヤホンしてんのか!?」
次の瞬間、お風呂の扉が開き、俺は朝宮を見て固まってしまった。
「きゃー!! なに見てるんですか!!」
上と下を手で隠す朝宮を見て、俺は慌てて顔を逸らした。
「す、すまん! イヤホンしてたお前も悪いんだからな! つか、着替え置いてあっただろ! 気づけよ!」
「はい‥‥‥実は、見られたくてわざと‥‥‥」
「マジで痴女なの!?」
「見てもいいですよ‥‥‥もちろん誰にも言いませんし、私がいいって言ったので、怒ったりもしません」
見ていいの!?絶対ダメだろ!!
でも朝宮は見られたがってるし、俺は悪くないんだよな?
これは見なきゃ損じゃないか!?
「手‥‥‥どかしましたよ‥‥‥」
俺は誘惑に負けてゆっくり朝宮の方を見ると、朝宮は今にも笑い出しそうな顔をしていて、すぐに吹き出した。
「プッ、あははははは! 見ました! 本当に見ました!」
「み、見ろって言ったのは、ああっ、朝宮だろ!?」
「顔真っ赤ですね! それに、ど、どうですか‥‥‥? 私の裸♡」
「‥‥‥なんか、ん?」
大事なものがないように見えるのは気のせいか?
やけにツルツルなような‥‥‥。
「全身タイツドッキリでしたー!」
「テメェー!! 男の純情もてあそんでんじゃねぇー!!」
「‥‥‥か、
「あっ」
俺は思わず立ち上がってしまい、朝宮の視線が一点を見つめている‥‥‥。
「そ、その‥‥‥それは‥‥‥」
「朝宮!?!?!?!?」
朝宮は全身タイツの、正直エロい姿のまま脱衣所で気を失ってしまい、しばらくして目を覚ましたが、その晩、とても気まずい時間を過ごすことになってしまった‥‥‥。
会話する時も目を合わせないで、ずっと俺の下半身を見つめながら会話して来るし、もう嫌だ‥‥‥自分の家なのに、この家本当嫌だ‥‥‥。
帰りたい‥‥‥自分の家なのに‥‥‥。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます