雑ネタ投稿枠

埴輪モナカ

夢と旅路の物語

僕は旅を続ける。自分の夢を叶えるために。永遠に叶わない夢を叶えるためだけに。

そんな長いタイトルを思いついた。我ながら相当に暇になってきたんだとわかってくる。今までしたことを全部日記にして売り出したら、それなりに儲かるんじゃないか。ってくらいには楽しい旅をして来た。

この夢を叶えるためだけに創られた世界で、自分が願ってしまった夢。

「みんなの夢を叶えること。」

この世界は、一度夢を叶えた者は世界から消えていなかった事になる。

故に、この世界にただ一人取り残されてしまったわけだ。「みんな」には「自分」も入っていた。

今、僕は僕の日記を見ながら本を作っている。今までの行動に対する結果に、意味を見出すために。


7月7日。僕が生まれた日で、人類を消し去る人類が産まれた日でもある。

僕の両親は七夕、願う日にいまれた僕を、夢徒(ゆめと)と名付けた。

夢を叶えるための使徒。そんな意味を着けたのだろう。

僕自身も少し疑問だったのだが。この世界は、願ったことが叶い終わる瞬間までに同じ位、強い願いをすると願いが変わるそうで、両親共に生まれることを願ってすぐに、育てることを願ったそうで。親の事ながらとても誇らしい。


そんな幸せの最中、幸せ頭の小さな僕は、素直で、真っ直ぐに願ってしまった。この世界のみんなを幸せにしてあげられたらいいのにな。

このときから僕は、この世界唯一無二の標本になったんだろう。


この世界の常識。僕が初めて聞いて少し驚いたのは、頻繁に人が消えるそうだ。それも、年齢も、性別も、何も脈絡が無く。

どうしようもない神隠しが多発してるという常識だ。

それを初めて目にしたのは小学校で、自分と友人二人と屋上で昼休みで日向ぼっこしてるときだった。

昼休み中ずっと寝てしまった僕たちは、起きてから少し慌てていた。一人授業に遅れてる、と。もう一人は、一人足りないじゃないか、と。

きっと、先に戻ってるんだろうと思った、でもいない。

「先生。窓側の一番後ろの席の人がいないのですが。」

「何言ってるんだ?そこにはもとから、誰もいないだろう?」

嘘はついてなかった。

ずっと不思議で、不安で、でも時々誰かいなくなることはあって。覚えてるのは自分だけ。


中学3年の時。そして、トリガーを見つけた。

教室に筆箱を忘れたものだから取りに戻ったら。クラスメイトの仲の良い男女が居た。

おっとこれは明日用の新聞記事(真似)でも作って冷かそうかな。(めんどいからやらないけど)とか思っていると。男子が「好きです。付き合ってください。あわよくば結婚してください。」と言った。

おいおい、それは攻めすぎだろ。と思いながら見ていると。

女子は涙を流して顔を真っ赤にしながら、唇を動かしていた。が、何も聞こえない。

異変を感じて観察し続けていると、二人とも光の粒子になって消えた。

そうして、すぐに答えは出た。

幸せになることがこの世界から消えるトリガーなんだという事が。

だからといって、何をするも無かったのだが。


それから、自分は何を願っているのかと、考えるようになった。

まぁ、そんなこと分かるはずもないのでダメ元で親に聞いてみると。

「あんたはいつも泣いている人を見ると。『みんなが幸せならいいのにね。』って素敵なこと言ってたわよ。」と、笑顔で答えてくれた。

昔の自分よ。何故そんな恥ずかしいことを...とか思ってるのもつかのま。

両親が消えた。学校から帰ってきたときには、誰もいなくて。翌日になっても連絡すら入ってこなくて。

携帯の連絡帳を見たら、両親の番号があるはずのところは他の人のもので埋まっていた。

ついでに、七夕で僕の誕生日だったこともあって。ホールケーキがあって、

僕は、泣き崩れてしまった。

両親が居なくなったことが辛かった。幸せになったのに、それを憎む自分が許せなかった。

何故家族の幸せを受け入れない!?

いい事なんだぞ!?

辛いことじゃないんだぞ!?

ある声がした気がした。無邪気で、弱く、真っ直ぐな声でこう言った。

『みんなが幸せならいいのにね』

この瞬間から、僕はそうしようと決めた。二度と、僕みたいな人を出さないために。ひ弱のくせに、バカみたいにでかい夢を願う人に憎悪を向けて。

世界中の人を幸せ(無き者)にしようと決めた。


そうして、両親の金と色々を持って、父親のバイクに跨り、旅に出た。

まずは、隣町だな。


幸せを望む世界だけあってか、この世界はどこも街と街の間に森があるような感じで、隣町の人が居なくなっていてもなかなか気付くのは難しい。

そんな隣町でバイクを駐車し、ある程度の荷物はバイクの中に入れて、鍵をかけて、あるき始めた。

しばらくすると、道端で同じくらいの年の女子が泣いていた。

「どうしたの。」

普通に考えて不審者だろう。

「嫌になったの。私は、早く死にたい。」

「じゃぁ、僕が殺してあげる。」

「え?

でも私、死ぬのが怖くて死にたいのに死ねないのよ?」

普通、死ぬとは怖いことだ。

でも僕だけは、他の死に方を知っている。

「痛いことも、辛いこともない死に方をさせてあげる。

だから、君の一番の願いを聞かせてほしい。」

案の定、不思議そうに見てくる。そりゃそうだ、文章に脈絡がなさすぎる。

「もし、もしそうなら。

私の願いは、心の穴を埋めることです。私の心に空いた、何が入っていたか分からないような。不思議な、不思議なこの穴を塞ぐことです。」

正直、少し迷った。元がなにかもわからないような心の穴を埋めるなんてほぼ不可能だ。しかし、幸せは心を満たすと言う。手伝わせるか。

「そうか、じゃぁ、俺のしてる事を手伝ってくれないか?」

「君は何をしているの?」

「人を幸せにする事だよ。素敵なことだろう。」

そう、言葉だけなら。

「そう、素敵ね。でも、幸せじゃない私が他人を幸せに出来るのかな。」

心配そうに行ってきたが、心配無い。

「人を幸せに出来るのは、幸せになる努力をした人だけだよ。だから君は他の人を幸せにできる。」

「なら、少しだけ手伝ってみてもいい?」

少し迷った様子で言ってきたので思い切り返そう。

「うん!頼りにしてるよ!」

そう、僕は小さな反逆者なんだ。


二人で歩いていると、いかにも売れてなさそうな店の前でタバコを吸ってため息をしている。男性がいた。

チャンスだと思ったのだろう。女子の方から喋りかけていった。

「こんにちは、何か悩んでることはありませんか?」

泣いていたときとは別人のような無邪気で可愛らしい笑顔で話しかけていた。

お陰で、普段なら邪険に扱いそうな男性も、意外と素直に話してくれた。


男性曰く、男手一つで育ててきた娘と喧嘩をして、どうしても帰ってきてほしいとのこと。ここ一週間、彼氏の家でお世話になっているそうで、心配でしかたないんだとか。

その話を聞いた女子は、その子とは知り合いらしく直ぐに会えることになった。


いざ、その時になって話してみると。

「何その男。彼氏?」

「「違う。」」

二人して即否定。

「それで、なんのよう。他のやつみたいに親と仲直りしろって言いに来たの?」

「別に?事情も知らない人にそんなこと言わないよ。なんで喧嘩したのかが知りたくてね。」

俺が出した口だが、あまりいい印象はなかったようで。

「何で、知らない人にそんなこと言わないと行けないのよ。」

まぁ、そうなるな。

て訳で、質問を変える。

「ねぇ、今君は幸せ?」

少し不気味に聞いてみる。

「あ、当たり前じゃない!一週間もずっと彼氏と居られているんだもの!幸せじゃない訳がないわ。」

否、そんなはずはない。

「そういえばさっきからその【彼氏】が見当たらないけど、どこに居るの?ちょっと気になっちゃったw」

少し軽く聞いてみる。

「え?いるよ?ここに。」

そう言って彼女はくまのぬいぐるみを見せてきた。

「彼氏?それが?」

不意に少女が聞いてしまった。

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