time 18

あれから、しばらく夕凪には会わなかった。


ショウとは冬よく鍋したが、彼が普段ほとんど食事をしないと聞いたからだ。


ショウの家で、鍋する時に彼女を呼んだらと言ったら意外な事を告げられた。


彼女との連絡方法は無いと。

携帯も持っておらず、固定電話の番号も知らないと言う。

彼女の家も通っている高校も聞いてない。


全く興味がないらしい。

いつもは彼女がショウの部屋の窓から原稿を置いていくだけで、彼がいたら其処から少し話して去っていく。

「知り合いだから、それでいいかなと」

「凄く馴れ馴れしい感じやのにな」


「彼女の他人との距離感0やから」

ショウは困った顔になった。


「高校の行き帰りに仲よくなった子と腕組んで帰るからレズって言われてるらしい」

確かに手を繋ぐより近い。


でも、ショウには一切触れてこないそうだ。


彼は夕凪が自分のことを何故か神聖視してくるので苦手らしいが、拒む事はしていない。

「何神聖視って」

「何かと“流石、古川さん”とか“やっぱり古川さんは違いますね”とか言うんや。よう分からんが、感激して泣かれたことある。存在がありがたいって…」

「うん、余り、深入りしとうないな。せん方がいいのは分かった」

今時の女子高生はよくわからん。

「好きです、言われたこと、あらへんな」

「熱烈に言いそうやのにな」


「夕焼けを見るときの感情以上に人に心揺さぶられたことない、らしいで」


「詩人やなあ」適当に言った。


久音は隣にいたショウを引き寄せて一緒に横になった。

「スルの?」

背中から抱き寄せた。

「しばらく、このままで」

鼻で髪の毛をかき分けて首の後ろに唇を寄せた。

「触れ合った方が全然いいのにな」

カプッと軽く首の付け根を噛んだ。

はぁっとショウは甘い息を吐いた。


「まだ、早いけど」久音が囁いた。

「うん?」

「俺が大学卒業したらさ、一緒に住まない?」

「僕と久音で?」

ショウは体の向きを変えて、彼の方を向いた。

うーん、と少し唸っていたが、キスして「いいよ」と言った。

「ここ、僕ん家だから、ここにおいでや」

久音はガバッと抱きついた。

「ありがとう!うれしい!」

「別にいつでもええよ、住むの」

ショウは久音の背中に手を伸ばしてポンポンと叩いた。

「親御さんには、なんて言うの?」

Tシャツの中に手を入れ始めた久音はそれを止めた。


少し考えたが面倒くささが勝った。「何も言わないつもり」

「そう、久音がそれでえーなら」

シャツの中に入っていた手に自分の手を添えた。

「続けて」ショウは恥ずかしそうに言った。


ショウの方が積極的に誘ってくるのだが、素肌や行為の最中の顔を見られるのを極端に恥ずかしがる。


たまには向かい合ってしたいのだが真っ赤になって断られる。


ショウはよくイッた後に失神するので、こっそり前から2回目を始めたら叫ばれて、ガッチリ抱かれ、最後まで離してくれなかった。

その時はしゃーないから首筋を噛んでキスマークも付けたったが。

後で怒られて、鏡を見ながらだいぶ気にしてた。

でも終いには笑ってお返しだと、鎖骨を齧られて青タン(青あざ)になった。お返しがキツイ…






  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る