ストーカー殺しの前村くん

いっくん

メモリー 1「ストーカー」

俺は、前村 京滋(まえむら けいじ)、此処、京都府舞子市の『舞子総合高等学校』に在籍する高校二年生の十七歳である。そして俺には、産まれた時から親同士が仲が良いという理由で『腐れ縁』として、今日までずっと一緒に過ごしている『幼馴染み』がいる。それがただいま、登校中の俺の腕に絡み付いて歩いている、愛山 春奈(あいやま はるな)である。これは、そんな春奈と俺の只事では無い『恋愛』の記憶である。

さっきも言った通り、俺は、片腕にうざい幼馴染みを絡ませて登校中である。うちの学校は、いかにも『平凡』が似合うような学校であり、俺はとても気に入っている。だが、毎日このように側から離れない春奈のせいで、俺の評判は『憎きモテ男』である……実に迷惑だ。そして、毎日のように俺に絡んでくる、俺の親友、島原 一樹(しまばら かずき)まで現れた。俺は、頭を抱えた。何故なら、もう言ってくることが分かったからである。

「死ね」

…………………分かってましたよ。分かってましたとも。これで、何回目だ?出会ってから毎日だから、これでちょうど一年か。皆勤賞おめでとう。

「ちょっと!一樹くん。京滋にそんなこと言っちゃ駄目。めっ!」

春奈の可愛すぎる注意に、一樹は春奈にだけ、誠心誠意謝るのである………おい?俺には?

「許す」

一樹は心底嬉しそうに笑うが、俺と目が合うと目線で『嫉妬』が伝わってくる。そう、この一樹は、俺の立場に嫉妬して、親友でありながら、毎日のように『死ね』を『おはよう』代わりに言い放ってくるのだ。これは、親友と言って良いのか?まぁ、俺と仲良くしてくれる少ない中の一人だしこれぐらい?許してやるか………

そして、俺達の通う『舞子総合高等学校』に到着する。俺達三人は、同じ二年二組である。そして、一樹達は、真ん中の、前から二番目にある、俺の席の両隣に座る。俺は思う。先生………先生は、俺に恨みでも?

キーンコーンカーンコーン キーンコーンカーンコーン

学校のチャイムが鳴った。

ガララッ!

「皆、席に着いたな?今日から、転校生が入る。おい、自己紹介しな!」

勢い良く入ってきたのは、気が強めなヤンキー先生ではなく、気が強めな性悪先生である。ドアよく壊れないよなぁ……この先生は、水畑 千夏(みずはた ちなつ)先生。この可愛い名前が勿体ないと俺は、心底思う。そして、その後から入ってきた、転校生がヤバかった。「は……初めまして!」

シーン……

可愛すぎる裏声が教室に響き渡った…そして、この後俺は鼓膜が破れかけた。

「可愛い~、ヒューヒュー!」

一樹を始めとするアホ男子どもが転校生の可愛さに騒ぎ始めたのだ。

「おい、アホ男子ども!ドタマ、かちわんぞ、こらー!」

シーン……

教室のざわめきが嘘だったかのように消えた。千夏先生……これは、ナイスだ。

「私は、遠藤 理花(えんどう りか)といいます。これから、よろしくお願いします!」

「じゃあ、この真ん中の前から二番目の席の京滋の前の空席に座れ。」

千夏先生……前言撤回だ。何てことしてくれたんだ。春奈が、転校生相手に敵意オーラ剥き出しじゃねぇか!

「貴方が、京滋さんですか?よろしくお願いします。」

この笑顔、普段なら可愛いと思うだろう。しかし、隣に今にも殺しにかかってきそうな一樹の目線と、嫉妬で狂い始めている春奈の板挟みでそれどころでは、ない。あぁ……神様……私が何をしたのですか?そんなことを考えているうちに、昼休憩に入った。

ここ、舞子総合高等学校では、弁当を友達と自由に食べれるのだ。もちろん、俺の席に春奈そして何故、恨めしいのに来てるのか、一樹。そして、転校生の理花が囲む。

昼食は、楽しいイベントだ。本来は、な……。

「はい。あ~ん。」

春奈が自分の食べた箸で、自分の作った卵焼きを食べさせてくる。これって、「間接キス」では?それよりもだ。隣の虎をどうにかしてくれ………春奈。

「よし。京滋。お前は、死刑だ。」

おい。

「アハハッ」

一樹が誘った、転校生の理花はその様子を見て、楽しそうに笑っている。楽しいなら、良かったが俺は、全く楽しくないからな!

そして、地獄の昼食イベントが終わり、午後は精神的に疲れめちゃくちゃ眠く、千夏先生に3回は、頭を教科書で、しばかれただろう……体罰ではないだろうか?まぁ、身の安全のためにも黙っておこう。

遂に、学校の一日が終わり、俺は部活だ。といっても普通の部活じゃない………『ネット探求部』といって、ネット関係の研究をする部活だ。もう分かった人もいるだろう?そう。俺の将来の夢は、『プログラマー』である。そして、創設者が俺というよりは………千夏先生だからな…………………。

これは、俺が入学したての頃。この時も千夏先生が担任だったんだ。そして、千夏先生は休み時間はずっと一人でパソコンとにらめっこをしていた。そう、千夏先生は教師になる前は、プログラマーだったらしく、今でも趣味で、『教育プログラム』を制作したりしているという。いや、普通は教育委員会のやることだけどな………という俺もネットに詳しく千夏先生と話すにつれ、意気投合し、二人で、ネット探求部を立ち上げたのだ。

そして、現在……部員はまぁ…他の部活よりは、少ないが丁度良いと言える人数がいる。まず顧問の水畑 千夏先生、そして部長である俺。副部長には、幼馴染みの愛山 春奈。こいつに関しては、凄いの一言に尽きる。一応誘ってみると嬉しそうに入部してきたもんだから、お手並み拝見として千夏先生と、『タイピング勝負』をしたが、なんと互角だったのだ。

タイピングとは簡単に言えば文字を打つことである。

こいつ……まるで毎日パソコンと向き合ってるレベルの慣れ具合だなぁ?怪しいが置いとこう。部員は、三人いる。いや、今日で四人になる。まず、同級生の島原 一樹。こいつは、将来の夢が一緒なのだ。そして、一年生が二人。紹介しとこうか。まず、愛山 恵(あいやま めぐみ)。名字で分かるだろう?春奈の妹だ。そして、恵の親友である、加藤 愛奈(かとう あいな)。この子達も、筋が良い。現時点では、この五人でやってる。しかし、今日新入部員が来るらしいと千夏先生に聞いた。どんな子なのか楽しみだ。そして、俺は、部室に着き、入った。

「こんにちは、部長!」

後輩の二人は元気良くあいさつしてくれてる………後輩って尊いなぁ………。でも、癒しもつかの間なんだよなぁ…………

「京滋く~ん。」

春奈は、俺を見つけるとすぐに抱きついてきた。おい、一樹の目を見てみろ。最悪、俺と春奈をまとめて殺しかねん殺気を放ってるぞ………百獣の王のライオンやトラでも、逃げ出すんじゃないか?

「もうそろそろ千夏先生が新入部員連れて、来るだろうから、席着こうぜ?」

一樹の声が魔王並みに低く、聞こえる。そのやり取りをみて、後輩の愛奈と恵は、楽しそうに見ている。だから、俺は、楽しくねぇっての!

ガララッ

ここにまた一つ魔王のようなラスボス感のある力強さでドアを開け千夏先生が入ってきた。

「お前ら、今日から共にネットについて学ぶ新入部員を連れてきたぜ。」

『後輩のお二人は、初めまして。遠藤 理花といいます。一応、転校前の学校では、プログラミング部の部長をしていました。よろしくお願いします!」

まじか………今日、俺達の仲間に加わった転校生の理花が俺達と同じ趣味で、同じ部活とか、嬉しいな。

素直にそう思った。仲間が増えるのは、嬉しいことだ。それは、どの部活でも同じだと思う。この子は、良い子だしね。逆に、俺の周りに変な奴が多いだけだと思うんだな、俺は。春奈とか一樹とか、一樹とか。

そして、自己紹介タイムが始まった。まずは、部長の俺から順に、春奈→一樹→愛奈→恵の順で行った。

最後に、千夏先生が行ったが皆が千夏先生そっちのけでわいわいしてたので、教え方が『スパルタ』だったよ……………。

そして、今日は、『ハッキング対策』について学び明日も同じというところまでで、終わり、それぞれ帰宅した。

俺は、アパートで一人暮らしだ。何故かって?そりゃ、俺は両親が亡くなってるからだ。両親は、幼い頃に病気で亡くなり、おじいちゃんを亡くした実のおばあちゃんと二人暮らしだったが、昨年、亡くなったのだ。しかし、ここでも困ったことがある。それは、お隣さんが、春奈だということだ。何で、春奈かだって?そりゃ、春奈は隣で家族で住んでるからだよ。両親と恵との四人暮らしだそうだ。

そして、俺は春奈の家族に息子のように可愛がって貰っている。これが、春奈を突き放せない理由だ。大恩があるのだ。

そして、今日も今日とて、春奈が手作り弁当を持ってきてくれて、一緒に食べ、一人就寝した………ベランダに気配を感じるのは気のせいだと信じたい…………

「………………………。京滋君、いつも見守ってるからね。」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る