関ヶ原戦争

ヒロシマン

第1話

 第二次世界大戦後、敗北した日本はアメリカの植民地となった。


 これに不満を抱いたソ連が北海道に侵攻し、核兵器の実験場としたことで冷戦が始まった。


 時は流れ、2030年。


 アメリカを抜いて経済大国となった中国が、日本を植民地から解放するという名目で、突如、新潟に人工知能搭載ロボット兵器とドローンを侵攻させた。


 それに呼応するようにソ連から変わったロシアが青森に、同じように人工知能搭載ロボット兵器とドローンを侵攻させた。


 アメリカ軍はじりじりと後退し、大阪を拠点として交戦した。


 中国は天皇を保護し、東京を首都とする満州国の暫定政府を樹立した。


 これに対してアメリカは、日本の植民地政策をやめ、日本州とし、大阪に州知事をおいた。そして、ついにアメリカも人工知能搭載ロボット兵器とドローンを投入した。


 アメリカは攻撃用ドローンに加えてネット中継用ドローンを広範囲に展開し、ネット動画としてこの戦争を公開して、莫大な広告収入を得て、それを戦費とした。


 ネット中継用ドローンが映し出す戦場では、ロボットやドローン同士が戦闘を繰り返す合間を日本人が逃げ惑う様子がナレーションもなく淡々と中継されていた。


 各国は最初、超大国同士の戦争に沈黙していたが、あまりにも悲惨な動画に、ロボット、ドローン兵器の禁止条約を作ろうとした。しかし、それでは人間の殺し合いのほうがいいのかという議論が巻き起こり、国民を殺す、人殺し政治家という非難が高まって、条約案は消滅した。


 1年後、動画による戦争中継は日常化し、まるでリアルな戦争ゲームのゲームプレーを観ているような緊張感のないものとなった。


 逃げ惑っていた日本人も慣れてきて、地下の穴倉生活を普通に営んでいた。


 戦争は関ヶ原付近を境に膠着状態となり、満州国と日本州が日本列島を二分して統治し続けた。


 この戦争特需で、朝鮮は第三位の経済大国にのし上がった。


 動画を観続けていた人々は、次第にクスクスと笑い始めた。


 ロボットとドローンの戦争は、物と物を壊しているだけで、無駄な消費でしかないことに気づき始めた。


 世界中が戦争のバカバカしさに笑い転げた。


 アメリカも中国もロシアも世界に大恥をかいていることに気づいた。


 しばらくして、日本からロボットとドローンの兵器はすべて撤退し、日本列島はまた一つの国となって、新しい日本として独立をはたした。


 ただ、ネット中継用ドローンは、日本が復興していく様子と日本が二度と軍備保有しないように監視した。


 関ヶ原戦争記念館には、子供用の防空頭巾が展示されている。


 どう見ても子供の頭を守れるはずもない、布に少しの綿が詰めてあるだけの薄っぺらい物だが、母親が一針一針、丁寧に縫っている。


 この子供用の防空頭巾の説明板にはこう書かれている。


「二度と、母親に子供用の防空頭巾を縫わせるような国にはしない」



終わり

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