髭男,徹夜して泥酔したら魔法少女になりました。

サボテンの汁

第1話 徹夜男とピンクの獣

我が名は「ノブオ」ォッ!!

研究・就活に失敗して酒浸りのどこにでもいる大学院1年生ッ!!!!!


 大学院生の居室で意味もなく徹夜してしまった帰り道。コンビニでポケット瓶のウィスキーT〇RYS を買ってそのままやけ酒を始めよう。そう思った矢先に、幻覚に水を差されたのだった。


「このままだと世界が危ないミア!!」


 ついに私はピンク色の象さんが見えるようになってしまったらしい。正確には象ではないが、そんなことはどうでもいい。俺もついにアルコール依存症の仲間入りだ。携帯でアルコール依存症に関する記事を検索しようとする。

「無視をするなミア!!!!!」

 あろうことか幻覚は意思があるかのように話し出す。以前誰かが言っていた。『毎日、観葉植物に話しかけなさい。何も聞こえなかったら健康よ。でも植物が話しかけてきたら病院へ連絡するのよ。』ああ、これはもう依存症以外にもいろんな精神疾病を抱えてしまったのかもしれない。

「オマエの頭はいたって健康ミア!!だから話を聞くミア!!」

 幻覚幻聴なんぞにテラピィを求めちゃあいねえ。そう思いながら声の先に視線を向けると、その容姿がくっきりと映る。見た目は綿菓子のようなふわふわ、大きなたれ耳、ベイビーピンクの体毛でこれでもかというほど目がキラキラしている。

 おれのどこにこんな趣味があったのだろうか。こんな女児向けアニメに出てくる変身道具を渡してくるタイプの獣には興味がなかったはずだ。せめて俺好みのグラマラスな美女とか飯とか酒が良かった。

「みーの顔を見てため息をつくなミア。」

 なんでこの幻聴はいちいち反応するんだろう。俺の幻覚なら酒を飲むまですっこんでてほしい。酒を飲んでもすっこんでいてほしい。

「話を聞かないヤツだミア。いい加減反応しないと『そしゃげ』の『がちゃ』で『さいてーほしょー』しか出なくなるようにするミア。」

 なんだって。スマホゲームのガチャで最低保証しか出さないだあぁ?可愛い語尾と見た目をしながらなんて恐ろしいことを言うんだこいつは。どうせ出鱈目で法螺吹きな脅し文句だろう。そんなウソに易々乗るほど吾輩は安くないね。そもそも言ってる言葉の2割もわからないまま言ってるだろう。さっきいきなり出てきたくせに。

「みーは知ってるから言いふらすミア。オマエがこの前『馬耳の生えた娘』の『そしゃげ』で『ばくしした』って泣きながらコンビニに「よかろう話を伺おうか。」」

 もう一度言おう。なんて恐ろしいことを言うんだこいつは。

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