第32話 白湯

 寒くなってから、寝る前に白湯を飲むようになった。


 就眠前の処方薬を飲む為と、腸の動きをよくする為である。


 以前、働いていた職場で昼休みに白湯をこれ見よがしに飲む奴がいて、あまり好きではなかったが、確かに、腸の動きは良くなったし、便通も良くなった。


 自衛手段として、飲んでいたんだなと今頃になって判った。


 その職場はあまりにも、健康的に良くない所で絶えず粉塵が飛んでるような所だった。


 そこには一年半程いたが、人間関係と健康的に責任は取れないと職場の上司が言っていたので、さっさと辞めた。

 

 で、白湯である。就眠儀式として、飲むようになってから、多分、後、一時間ぐらいで、意識が薄れるように、眠ってしまうだろう。


 その時、薄れる意識の中で、次は起きているだろうかと思うようになった。


 昨日、Twitterでそこそこ有名だった癖の強い編集者が朝起きていたら、息を引き取っていたと流れてきた。


 70行くか行かないかの年齢だろう。


 心筋梗塞だったらしい。主治医には健康には問題ないと言われていたと、代理でアカウントを使ってご子息が伝えていた。


 誰にも訪れる事だが、次の日も起きて日常を過ごしているかと言われれば、確信して言えるかどうか、心配になって来た。


 心配になって来たが、それに恐怖しても、いずれ召される時が来る。


 今日、見たドラマが面白かったら、来週も見られたら、ラッキーだと思えば良いし、今日、読んだ小説や漫画が面白ければ、得をしたと思えば良い。


 ただ、意識が薄れる時の、次には目が覚めるかなという単純な想いが哀しい。


 世界はあまりにも過酷で悲惨でも明るい日差しがさしているから。


 願わくば、明るい日差しの中、意識が切れて召されたい。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る