本部急襲
戦いが始まって5時間ほど経った頃です。5回目の報告が来ました。
戦いはこちらの優勢に進んでいるようで、拠点では今の和やかな雰囲気が流れています。
「魔族は恐れるほどでも無かったですな」
「ああ。これなら今日には戦いが終わるだろう」
そういうのをフラグって言うんですよ。縁起の悪い……
「おや?何か騒がしい音が聞こえませんか?」
「本当だ。一体何やっているんだ?」
「ほ、報告です!アンゴラと名乗る魔族が1人で突っ込んで来ました!」
「1人?そのくらい警備の兵士で倒せるだろう?」
「非常に足が速い上に強いので、近づけません!」
アンゴラ…確か魔族文明の一つのNPC創造主の名前でしたね。魔族の創造主って本人も強いからやっかいですね。
「すぐに避難するぞ!」
「今から逃げても間に合わないだろ!すごく足が速いらしいじゃないか!」
「私の後ろに固まってください!対魔術結界を張ります!兵士の皆さんが来るのを待ちましょう!」
「あ…ありがとう!」
私の結界はまだそこまで強力ではありません。
誰か戦える人はいないんですか。そこの立派な剣を付けてる人とか。それは飾りですか。
普通に戦っても勝てないでしょうし、兵士じゃ戦えもしないでしょう。
これは魔族の村をボロボロにしてアンゴラが自主的に帰るのを待つしか無いですね。
「ファイアアロー!」
攻撃が来ましたね!威力が強い…!あっという間に結界が削られていきます。流石魔族ですね。これだと後ろの人間は守れないかもしれません。
「後ろにいるみなさん!もう結界はあまり持ちません!何か盾になるものを用意してください!」
アンゴラはさらに魔法を撃ってきます。
「ふはははは!少し様子見に来ただけで全員大慌てだな」
「あなたも慌てた方がいいんじゃないですか?兵士達がもうすぐ集まって来ますよ!」
「兵士…?ああ、あのノロマの事か。あんなのに負けんわ。ファイアアロー!ファイアアロー!」
あんなに撃っても魔力が尽きないなんて…!既にマナで強化していると見たほうが良さそうですね。
パリン。
結界が…!後ろの人達が危ないです。仕方ありません。攻撃を仕掛けて相手に攻撃をさせないようにするしかありませんね。魔力は持つでしょうか…
「サンダー!」
私は最近習得したばかりのサンダーを撃ち込む。この魔法には一瞬麻痺させる効果もあるため足止めには非常に有効なんです。
「お前はまだまともなようだな」
アンゴラが結界を張ります。
「しかしその魔力がいつまで持つのか。優しい私はじっくり待ってやろうではないか」
よく分かりましたね。もう魔力はほとんどありません。村を堕とすのが先か私が堕とされるのが先か……
その時村の方から別の魔族がやってきます。どうやら幻影魔法で姿を隠していたようです。
「アンゴラ様………………です」
「何?村に大きな被害が出ただと?それは本当か。すぐに戻る」
「人間よ。幸運だったな。今回の所は兵を引いてやる。後々、休戦の使者を送るから丁重にもてなせよ?」
そう言ってアンゴラは去っていきました。
はぁ……なんとかなりましたね。
ていうか何が丁重ですか。あんまり調子に乗ると首だけにしてやりますよ?
「どうやら前線の兵士の皆さんが勝ってくれたようですね」
「桜さんありがとう。本当になんと礼を言えば良いか」
「本当に助かった。私にも礼を言わせて欲しい」
「気にしないでください。それよりも休戦交渉のために意見をまとめておきましょう」
「ただいま戻ってまいりました!大丈夫ですか!?」
やっと前線の兵士達が戻ってきたようです。
「なんとか無事でしたよ。戦争結果はどうなりましたか?」
「よかった…。はっ!こちらには250の犠牲が出ましたが、敵にも60以上の被害を出しました」
大勝利といってもいいですが…そのうち私の村の被害はどれほどなのか……。ミトさんも無事でしょうか…。
その後各国の王はそれぞれ自分の軍の被害の確認や負傷者の手当て、兵達にねぎらいの言葉をかけるなど戦いの後始末に向かいます。
私も回復魔法を使えるのでみんなを手当てしに行きましょう。
「桜様!」
「ミトさん!無事だったんですね!本当に良かったです」
「心配ありがとうございます。何とか勝てました!」
「おめでとうございます。お疲れ様でした」
ミトさんもこの大勝利に大喜びしているようです。しかし仲間が死んで悲しそうな雰囲気はないですね。
一応生まれた頃から同じ村に住んでたんですよね?
「その…ミトさんは悲しくないんですか?仲間の人が大勢亡くなってしまって…」
「それはもちろん悲しいですけど…まぁ死ぬ事はよくある事だし、仕方ないですよ。いつも嵐が来たり、狼が来たりしただけで悲しんでたら何も出来ません」
「そうですか…」
この世界では人が死ぬのは当たり前なんですね……。ゲームの数字だけで見る人口とは大違いです。
私もこれが当たり前じゃないような国目指して頑張りましょう。
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