戦場の空気
8話 戦場の空気
――アジ連合軍総司令官キキ視点――
普段のアテーネ共和国の軍は200人程度。しかし今回は魔族相手なため各国は少し多めに軍を派遣した結果700人もいる。700人の軍が動くのは壮観だった。
今回、私はこの連合軍の総司令官となっている。
この700人の部隊が負ければ2、3の国が滅ぶこともあり得るので朝から胃が痛くて仕方がない。それでもいつも通りの仕事をするだけだ。
まずはスパルタン王国軍200人が敵のゴブリン部隊に突撃していく。
ゴブリンは200匹程度が集まっているものの、その数を急速に減らしていく。しかしその間にゴブリンジャネラル3匹が率いる残りのゴブリン800匹や、コボルト部隊100匹が部隊側面に攻撃してくる。
ゴブリンジャネラルはゴブリンの能力を上げる効果を持つし、コボルトは連携の得意な種族だ。
私はスパルタン王国の邪魔をさせないように各国の軍に迎撃命令を出した。
「コボルト共を追い返せ!決して近づけさせるな!」
さらに魔族突然部隊にも命令を出す。
「すぐに村に突撃出来る様に準備を始めてくれ。そろそろスパルタン王国が敵の防衛線を突破する」
「わかりました!魔術師は部隊の後ろに、戦士は盾持ちが前に出て槍持ちを護衛してほしい」
ニポン皇国のミトが部下に命令を出した。
「キキ司令官!スパルタン王国軍がゴブリン部隊を殲滅しました!」
ゴブリン部隊は最後の1匹まで戦ったらしい。魔族に支配された哀れな末路か。
「ニポン皇国軍よ!魔族に攻撃を仕掛けてください」
「キキ司令官!追加のゴブリン部隊400匹が連合軍の後ろに回ろうとしています!」
「何!?どこに隠れていた!?このままでは取り囲まれるぞ!アテーネ共和国軍は囲まれる前にこっちから攻撃を仕掛けろ!」
全く斥候は何をやっているんだ。そんな部隊聞いていないぞ。とりあえず攻撃をすれば向こうは動けなくなる筈だ。
――ニポン皇国軍司令官ミト視点――
とうとう村の防衛部隊が殲滅されたのでこの隙を逃さずに急いで突撃させる。
「今のうちに村に入ってください!魔族は魔法を得意としているため、魔術師は対魔法結界を盾部隊の前に張ってください!」
そう言いながら私も対魔法結界を張る。この魔法は中級魔法を極めると使えるようになる魔法の一つ。ただこれ敵の魔法攻撃から身を守れるんだけど、中級魔法なのでそこまで耐久力はないんだよね。
その間に村中に広がって、油断していた魔族をばらばらに分断しないといけない。
私達の軍がが村に広がると、その後ろから連合軍が次々と入ってくる。
「ファイアボール!」
その瞬間。連合軍に対してファイアボールが打ち込まれた。本来はそこまで威力はないけど、まとまって入ってきた連合軍を混乱させるには十分だったみたい。
「一体どこから…」
右を見ると広場に集まっている魔族達が見えた。
え?逃げたんじゃ無いの?
魔物を倒している間魔族達がいなかったのは逃げたからじゃ無かった。子供達を避難させただけで、自分達は戦う準備をしていたみたい。
「全軍、魔族に突撃せよ!」
連合軍総司令官のキキがすぐに命令を出してくれる。
すぐに他の魔法も飛んできて私たちが張った結界もあっという間に削れていっちゃう。
スキルと盾のおかげで多少頑丈な私の軍はまだ被害を出していないけど、私たちの軍を盾として期待していた他国軍はさっそく犠牲者が出ているようだ。
悪いけど魔術が上を飛んでくのは盾じゃ受け止められないからね。
「ファイアアロー!」
「!?」
敵にも上級魔法が使える人がいたなんて…!
ファイアアローは上級魔法の中で珍しい、小規模だけど威力は非常に高い魔法なんだよね。
「ぐわっ!」
私の軍から初めての犠牲者が出てしまう。
そりゃ盾じゃこれは防げないよね。
これ以上桜様から預かった大事な戦士に被害を出させるわけにはいかないね。
「ごめんなさい…御冥福をお祈りします」
犠牲となった兵士に謝る。私に出来るのはこれくらいだから。
すぐに頭を切り替える。まだ魔族には1人の犠牲も出ていない…。その時。
「ミト様!本陣が襲われたようです!」
「えっ!?すぐに助けに行かないと!」
「いえ、本陣からはこちらに構わずそっちに集中して欲しいと……」
「それ本当なんだよね?帰ったら焼け野原とか無いよね?はぁ……とりあえずこっちを早く終わらせて帰るって伝えといて」
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