新人賞

バブみ道日丿宮組

お題:暑い小説新人賞 制限時間:15分

新人賞

 これはただの八つ当たりだ。自己満足でしかない。

 両親にも、親友にも、親戚にも、彼女にも伝えられない想いが形になったものだ。

 心の中を描く。まさにそのとおりの作品だ。

 そのため、ひどい文章。好みが別れる内容。

 けれど、小説なのだ。物語なんだ。

 きっと世の中の一人くらいは絶賛してくれるはず。

 そう思い、ひたすらに筆を執った。

 休日、休み時間を使いに使った。

 そうして、応募した。

 結果は、新人賞。

 大賞ではなかったけれど、デビューを勝ち取った。

 クソみたいな現実に仕返しができそうだった。

 

 という妄想をお昼休みに思いついた。

 新人賞なんてすごくものは当然取れてない。

「相変わらず、気持ち悪い笑みだね」

「ほっとけ」

 彼女がいることは間違ってない。八つ当たりをするような相手でもない。愛を施す相手ではある。

「今年も応募するの?」

「あぁ、する。こないだ書き終わった大作があるからな」

「私読んだほうがいい?」

 彼女は首をかしげる。

「いや……今回はエロい感じでいったからいいかな」

「それって逆に読みたいんだけど。モチーフが私かもしれないんだからね」

 自意識過剰だ。

「普段私にしてることとか、脳内で考えてることが形になってるかもしれないんだよね?」

 小説とはつまるところ、欲望の塊だ。

 こういうのが書きたい、こういうのが好き。それらをまとめたのが小説だ。

「視線そらしたってことはそういうことだよね? こないだ、部屋でやったのってそういうこと?」

 思い当たりを感じさせてしまった。

 うっかりだった。

「そんなことはないと思う……よ?」

「えー、絶対そうだよ。奥手のあんたがさ、わざわざ攻めになるなんて、よっぽどだったし。まぁさ、あのときは良かったよ。悪くなかった。むしろ好きかもしれない」

 軽く頬を染めた彼女が、暴露する。

「だからさ、私が読んでさらに実践すれば、もっとよくなるんじゃない?」

 事実は小説より奇なりだ。

「……わかった。帰ったら、ファイル渡すよ」

「今回もスマホで見れる?」

「ちゃんとファイル形式変えるから、大丈夫だよ」

 放課後、彼女にその作品を見せると、そのままいたる結果となった。

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新人賞 バブみ道日丿宮組 @hinomiyariri

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