謎ジョブ【DLC】は異世界に後からなんでも付け足せる、とんでもチートスキルでした!一族で俺だけ無能と言われたけど、ストレスフリーに無双します。課金アイテム、新システム、なんか俺だけ使えるみたい。

月ノみんと@成長革命2巻発売

プロローグ

DLC1 転生した


「はぁ!? なんだこのクソゲー! 二度とやらねー!」


 ――ドン!


 俺はコントローラーを乱暴に、壁に叩きつけた。

 挫折して、引きこもり続けて、ゲーム三昧の日々。

 プレイ時間は誰にも負けないから、対人戦では俺が圧勝だ!


「クソ……! 俺にも課金アイテムがあれば絶対に勝てるのに……」


 だが、無職ニートの俺に、そんな金はない。

 必死にレベル上げしても、相手が金持ちだと、どうしようもなく負けてしまう。

 そこそこの差であれば、プレイングスキルで覆せるのだが……。


 MMORPG――フロンティア・ダイヴ。

 俺はそのゲームに、吞まれていた。


 課金しなきゃ勝てないってんなら、そんなゲームやめればいいじゃないか。

 そう思うだろう……?

 だけど、その圧倒的不利を、実力で覆したときの快感が、たまらないのだ。

 毎日働いている金持ち共に、無職の俺が反旗を翻す!

 これが俺にできる、唯一の社会への反抗だった。


「はぁ…………くだらねぇ…………」


 誰に言われなくても、自分が一番わかっていた。

 俺は、終わってる。

 どうしようもなく。

 だからこれは、ただの現実逃避だ。


 飯でも食うかと、冷蔵庫を開ける。

 しかし、中身はすでに空っぽだった。


「ああもう! コンビニにでもいくか……」


 数週間ぶりに、家を出た。

 冬、深夜。

 街はすでに、クリスマス気分だった。





 ――テロレロレローン。


「いらっしゃいませー」


 間抜けな音楽と、やる気のない店員の挨拶に出迎えられる。

 家から一番近くのコンビニは、同級生がバイトしてるから、ちょっと遠くのコンビニまで、わざわざ歩いてきた。


「えーっと…………」


 俺は適当に、コンビニの弁当を選び始めた。

 そうこうしていると、突然、レジの方から店員の悲鳴が上がった。


「きゃああああああああああああああ!」


「は……?」


 驚いて、俺が振り向くと――。


「おい、金を出せ……!」


 そこには、目出し帽をかぶった強盗がいた。

 オイオイオイ。

 おいおいおいおいおいおい……。

 これ、マズイだろ……。


 正直、こんな面倒事に巻き込まれるのなんてごめんだ。

 まして、こういうときにヒーロー面して、助けに入るような馬鹿は、俺のもっとも嫌いな人種だ。


 だけど……。

 だけど……。


「おい! さっさと出せ! 金を詰めろ!」

「は、はいぃ!」


 レジの店員をよく見てみると……。


吉野よしの……」


 俺の知っている人物だった。

 吉野璃乃りの――俺の中学の同級生だ。

 正直、初恋の人だ。

 今も、ときどき夢に出てくる。


「っち…………なんでこんなところでバイトしてんだよ…………っ」


 家から近くのコンビニは避けたというのに、世間ってのは、こんなにも狭いのかと思い知らされる。


「おい……! さっさとしろ!」

「きゃあっ!」


 強盗が、吉野の腕を引っ張る。

 やばい……このままだと、吉野が……!

 明らかに強盗はヒートアップし始めていた。

 いつ刺されても、おかしくない状況だ。


「そうだ……通報……!」


 俺は、強盗から見えない位置にいた。

 こっそり通報すれば、バレないかもしれない……!

 スマホをポケットから取り出そうとする。

 しかし……肘が商品の棚にぶつかってしまい、大きな音が出る。


「…………!? 他に客がいるのか…………!?」

「くそ…………!」


 強盗に気づかれた……!

 こうなったら、吉野が人質に取られたりする前に、俺から出ていくか……。

 俺はレジの方まで歩いていく。

 敵対心がないことを現すために、両手をあげて。


「お、おい! てめえ、通報しやがったな……!?」


 強盗は、俺を見るなり、そう言って焦りだした。

 これは……まずい……!


「い、いや……! まだ通報はしていない! 落ち着いてくれ! なにもしない……!」

「嘘をつけ! てめぇ……! はやく金を渡さないと、殺すぞ……!」


 強盗は逆上して、吉野に刃を向けた。


「へっへっへ、その綺麗な顔に、傷を刻んでやるぜ! そのくらいしねえと、俺の本気度が伝わらねえみたいだからよ!」


「いや……!」

「くそ……!」


 気づいたときには、身体が動いていた。

 俺は強盗にタックルし、馬乗りになる。


 ――ドン!


「吉野さん! 逃げて……!」

「あ、あなたは……!?」


 どうして私の名前を……?

 と訊きたそうな顔で、吉野はこちらを振り返る。


「いいから! 逃げて! 早く!」

「ありがとうございます……! 人を、呼んできます!」


 よかった……。

 吉野、無事に逃げられたみたいだ。

 これであとは、吉野が通報してくれれば……。


「って……あれ…………?」


 なんだか、下半身が温かい。

 俺は、自分の下腹部を見る。

 真っ赤だ。


「てめぇ……! よくもやってくれたなぁ……!」


 強盗が、俺の腹に包丁を突き立てていた。


「あ…………あ…………うそだろ…………!」


 しかし、どうしようもなく、これは現実だった。


「オラァ! 死ねえ! クズが……! でしゃばってんじゃねえ!」


 強盗は俺を押し倒し、馬乗りになると、腹だけでなく顔や、心臓をめった刺しにした。

 オイオイ……これ、死んだわ。


 真っ赤なメリークリスマス。


 でも、最後に吉野を護れてよかった。

 クズな人生だったけど、それだけはちょっとうれしい。

 まあ、俺の自己満足かもしれないけど……。

 だって、吉野、俺の顔をみてもピンときてなかったし、忘れてるんだろうな。


 まあ、俺みたいなのの命で、吉野の綺麗な顔が護れたんなら、百点満点だ。


「ハッピーメリークリスマス」


 力尽きた俺が、最後にどうにか口にした言葉。




■■■■■■■■■■




「よっしゃあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!」


 次に目覚めた俺は、心の中でそう叫んだ。

 俺、赤さんになってる!!!!

 だからまあ、実際に声に出たのは泣き声なんだけど。


「あらあら、元気のいい子だこと……」


 超絶美人の母親が、俺に笑いかける。

 はは……!

 人助けはするもんだな……!

 神さま、マジでありがとー!


 思えば、前世での俺は最低だった。

 上手くいかないことを人のせいにして……逃げてばかりで……。

 まあそれには、俺なりにいろんな事情があるのだけれど……。

 でも、せっかくもらった二度目のチャンスなんだ!


 よし、俺は決意した……!

 この異世界で、俺は本気で生きていく!

 もう絶対に後悔するような生きかたはしない!

 心も体も、生まれ変わるんだ!

 どんな困難にも、全力で必死に食らいついてやるっ……!



 そう覚悟を決めた矢先――――。



 次に母親が言った言葉に、俺は絶句した。



「さあ、記憶の消去を行いましょうか……」


(は…………?)


 いやいやいやいや…………!

 マジかよ……マジかよ……!

 そんなことされたら、転生した意味ないじゃないか……!


 俺は小さな身体でなんとか抵抗しようとする。

 でも、赤ちゃんの身体は言うことをきかない……!


「こらこら、暴れないの……! これはね、悪魔祓いのための、大切な儀式なんだから……!」


 ど、どういうことだ……?


 周りの大人たちの会話から察するに――。

 この世界では、産まれたばかりの赤ん坊に、記憶消去の魔法をかけるらしい。

 なんでも、そうしないといけない決まりだとか……。

 いったいなんでそんなことになったんだ……!?


(くそ……! 転生してすぐにこれって……!)


 だけど、赤ん坊である俺にはなす術なく……。

 見事に記憶を消されてしまうことになる。


 ああ、どうか数年後、なにかの拍子でこの術式が解けますようにっ…………!


 俺はせめて、そう祈るしかなかった。

 転生させてくれた優しい神様なら、このお願いもきっと叶えてくれるはず…………だろ?





【神様から、ギフトが授けられました――――】




――――――――――――――

【あとがき】


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