6 古文献講義(2)
せっかくのお茶なので、三人でそれをいただき、一息入れたところでまた拓也が話し始めた。
「六次元の主催神の
『
『
『
「でもこの文献には、なんかもっとたくさんの神様のお名前がありますね」
「今お話ししているのは主だった主宰神だけで、それぞれ眷属の神々、つまり御神霊がいらっしゃいますし、それぞれが担当を分担されています」
「この国は多神教なのですね。私が生まれ育った環境では徹底した一神教ですから、イメージがわきません」
拓也は声を挙げて笑った。
「私がお話ししているのは、宗教の話ではないのです。宗教の教義ではなく神界の実相ですから。だって、神界には宗教は存在しないんですよ」
「それは分かりますけど」
「だからこう考えてはいかがでしょうか。あなた方にとって『神』はお一方ですけれど、ものすごい数の眷属の天使がおられるでしょう? その多くの天使を多くの御神霊だと考えてはいかがですか? 神界の実相は宇宙創造の唯一絶対神はお一方ですから、その意味では一神教に近い。でも多くの眷属の神々、つまり御神霊がいらっしゃるからそういう意味では多神教だし、また森羅万象…」
「シンラ…?」
「ごめんなさい、言葉が難しかったですね。植物をも含むすべての生き物も、また岩石や土などに至るまでもがすべて宇宙最高神のお体の一部なのですから、そういう意味では汎神教です。つまり一神教、多神教、汎神教のどれもが本当で嘘で本当だということになります。実相の世界は宗教とは違って限定はできないということですね」
エーデルは一応という感じでうなずいていた。拓也は話を続けた。
「で、五次元の
『国万造主大神』様はこの地球の創造と人類の
『国万造主大神』様と申し上げます方はお一方で写なく、四十八のみ働きをする
「え、聞きたいです」
「またいずれ、お話ししましょう。とにかく
『国万造主大神』様はご苦労にご苦労を重ね、試行錯誤の末、何万年もの歳月を要してようやく人類の男性の霊成型を完成させました。それまでは龍体の一部を形にしたり龍体全体を縮小させたりしていろいろな生物を創造されましたけれどどれもそれを人類と称するにはふさわしくない。いわば失敗作ですね。でもそんな失敗作も『神様』は、動物としてこの世に生存させてくださっている。『神様』のご愛情ですね」
「やはり、アメーバや類人猿が進化して人類になったというのは嘘ですよね」
「その通りです。でも悲しいかな、この国ではその進化論をまるで絶対的真実として学校で教えたりしている。とんでもないことです」
「そうなんすね。でも、進化論なんて私たちの国では一つの仮説にしか考えていません」
「やはりそうですよね。この国だけがおかしい」
拓也はそこでため息をついた。エーデルも同調して大きくうなずいた。
拓也は続けた。
「そうして失敗作を重ねてたどり着いたのが、神々のお姿そのものに似せてやっと完成した我われ人類です。だから、そういうことを知らないで化石ばかり見ていると、動物がだんだんと人類に近くなるように進化したんだと錯覚してしまう」
「待ってください。その時の神様は『天神第六代』ですよね?」
「はい」
「おお」
エーデルは驚きのジェスチャーをした。
「『ベレシート』では、第六日目が人類の創造です」
「そうでしょう。さらにはまず男の霊成型を創られた神々は、約二万年後に男の霊成型を標本にして女の霊成型を創造されました」
エーデルはしばらく絶句していた。そしてつぶやいた。
「男のあばら骨から女は創られた……」
それを見て拓也はまた少し笑った。
「三日目から五日目まで少しずれましたけれど、五日目でまた合致しましたね」
「はい」
なぜかエーデルは嬉しそうだ。
「でも、『創世記』ではたしか、六日目に『神様』はすべての業をなし終えて、七日目はお休みになったんでしたよね」
「はい、そうです、そうです」
「でも残念ながら『天神第七代』はお休みにはなってないですよ。いよいよ人類の霊成型ができたところで、それを物質化しないといけない。それがまた話し出すといろいろ詳しい話がありましてね。それは婆様の方が詳しんですけど」
エーデルが婆様も見ても、婆様はにこにこしているだけで黙って座っていた。
「これもまたいつの日かお話しする日が来るでしょう。この神様のお名前は
『
『
「え、その神様は『古事記』にも出てくる太陽の女神様ですよね」
「それが違うんですよ」
「え?」
エーデルは怪訝な顔をした。
「その神様はこちらに」
拓也はテーブルの上の『世界の万国史』の本のページをパーッとめくって行った。
「こんなずっと後の方に出てきます。この『天神第六代』の神様は男神様です。この神様は四次元霊界から
「私たちがアダムとイブと呼んでいる最初の人類ですか?」
「いえいえ、アダムとイブはこの文献でも、もうちょっと後に出てきます」
「最初の人類じゃないんですか?」
「違うんですね。それに、世界でい最初の人類はアフリカだなんて学術界ではいってますけど、この文献ではアフリカではありません」
「では……」
「この国ですよ。この国の中の
エーデルは少し沈思し、それから本のページをめくった。
「でもそれ、この本ではまだ最初の方ですね。この後がまだずっと長い……」
「ここからが、人類の歴史が始まります」
本全体の分量では、まだほんの一割も読んでいないことになる。その先の分厚いページの感触を指に感じ、エーデルはまさしく悠久の歴史の始まりを感じていた。
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