4-2
僕たちは席を移動した。葉巻を頼むとバーテンダーが穴開け機みたいので吸い口をつくってくれた。二人でそれを
「ま、充分なぶったから気は済んだよ。それでなにがあったんだ? どうしてカミラちゃんと
「そんなんじゃないよ。駅の前で待ち伏せされてただけだ」
「じゃ、どうして待ち伏せされたりしたんだ? なにもなけりゃそうはならないはずだろ?」
僕は葉巻の先を見つめた。オレンジにみえる火が
「おい、隠し事はするなよ。それとも恥ずかしくて言えないのか?」
「恥ずかしがってるわけじゃない。いや、恥ずかしい部分はあるけどな。どうしてあんな奴と関わるようになっちまったんだろう?」
小林はうつむいてる。そのままでこう言ってきた。
「俺がここで
「そうだったか?」
「そうだったんだよ。俺たちはそう誓いあったんだ。お前のことを
「いい加減にしろよ。もし本当に親友だっていうなら、これ以上はなぶるな」
小林はくいっと顔を向けてきた。悲しみなんて
「だって、カミラちゃんは『佐々木さんにいろいろ教えてもらった』って言ってたんだろ? そう聴いてるぜ。それはつまり手取り足取りいろんなことを教えられたってことだよな。それで突然女っぽくなったっていや――」
「うん、こたえはひとつだ。長続きはしないものの手だけは早いお前。それに、いろいろ教えてもらって女っぽくなったカミラちゃん。この材料じゃそうとしか考えられない」
「そこまで女っぽくなってないよ。厚化粧して、背筋伸ばしてるだけだ」
「そうなのか? ほんとにそれだけ?」
「そうだよ。見ればわかる。どうせ見てないんだろ?」
「ああ、見てないよ」
「なんで見てないのを自慢げに言うんだよ。
腹がたってきた。しかし、怒りを感じただけではなかった。肩にはまだつかまれた感覚が残ってる。――もっとずっとよくないことが起こるって言ってたよな。悪い
僕はチェイサーを飲んだ。怖ろしくはあるけど、あの女が
「なんなんだよ。なんで肩なんか見てる? ――ああ、『重要な話』ってのを聞かされたって言ってたもんな。そりゃなんだったんだ?」
僕は
「おい、どうしたんだよ。ほれ、なに言われたんだ?」
「ん、合コンに行くなと言われた」
「は? 合コンに行くな?」
顔をしかめ、小林は首を振った。
「それだけ聴くとやっぱりなにかあるように思えるな。お前は嫌がってるようだが、向こうは好きなんじゃねえか? そうとしか思えない。じゃなけりゃ、そんなこと言うか?」
「言う場合もある。ごく特殊な状況であればそういうこともあり得る」
「特殊な状況ねぇ。でも、どうするんだよ。お前好みの女がわんさと来るんだぜ。まさか行かないなんて言わねえだろうな?」
葉巻を
一緒に出社しただけで(しかもそれだって事故みたいなものだったのに)下らない噂が飛びかうことになったのだ。この男が発信する誤った結論はものすごく大きな尾鰭がついて活発に飛びまわるはずだ。それは手に取るようにわかった。だから、僕はこうこたえた。
「もちろん行くよ。行かない理由がない」
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