[20211222] 四角の外(二)
不思議なにおい。目を開けたら「人」がいた。前にいた「人」と同じ? 違う?
苦しかったけど、首を伸ばして近付いて見る。「人」はいつもわたしより小さい。不思議なにおいに鼻を近付ける。喉が締め付けられる。苦しい。
「助けて」
わたしが言ったそれは「言葉」。そうだ、誰かが喋っていた。わたしもそれに言葉を返していた。わたしは喋れる。
でもわたしは「人」の言葉はわからない。「人」はわたしの言葉がわかるのかな。締まって苦しい喉を伸ばす。
目の前の「人」は、前足の手をこちらに伸ばしてくる。
「助けるよ」
不思議な音だった。これも「言葉」なのかわからない。でも、その音は確かにそう聞こえた。
わたしの言葉は伝わった? わたしは「人」の言葉がわかる? 嬉しい。もっと近くに行きたい。首を伸ばす。「人」の前足の手がわたしの鼻に触る。
熱い。「人」の前足の手が熱い。きっとこの熱いのが「助ける」ってことだってわかった。
わたしの首を締めていた「首輪」が弾け飛んだ。きっと熱いからだ。体が軽い。
「嬉しい」
そう、「嬉しい」。光は「首輪」。光と「人」の熱さが混ざり合う。四角い中で、ぐるぐると丸い。口を開けてそれを飲み込む。熱い。もう苦しくない。嬉しい。
大きく体を伸ばす。気持ち良い。
どうして「人」は小さいのかな。わたしが大きすぎるのかな。ああ、そうか。わたしも「人」と同じになれば良いんだ。
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