エピローグ
『お?例の女が来たな?』
僕が昔のことを思い出していると、豚さんが興味深いことを告げる。
僕はゆっくりと振り返る。そしたら僕の一歩後ろにストーカーさんが。
……だから気配消して近づいてくるの辞めて?気づかないから。
「君か……」
「はい、刹那様」
ストーカーさんは僕に跪く。
なんとなく座ったままだとかっこつかないので、立ち上がる。
……。
…………。
沈黙が降りる。
重い、重い沈黙がこの場に降りる。
どうしよう?何もすることないがない。
なんとなく。
なんとなく何もしないのはかっこつかないと思ったからとりあえず両手を上げてみる。
別に特に意味がない。
意味はないったらない。
「おぉ!」
なのに……、何故か魔力が噴き出した。
僕じゃない。僕は魔力を開放していない。
地球が……いや、違う。地球が放っているわけではない。
降り注いでいるのだ。この大きな地球を覆いかぶすほどの圧倒的な魔力が。
僕は夜空を見上げる。そこには丸く輝く月が。
紅い輝きを放つ紅き月が。
おぉ!!!
僕は内心歓声を上げる。
月だ!紅き月だ!
かっこいい!!!
「流石は刹那様……」
僕の後ろに立つストーカーさんが関心したような声を上げる。
……ん?チョット待って?もしかして僕がなにかしたのかと勘違いしている?
僕は下を見下ろす。
いきなり現れた怪物たちに慌てふためく街の人達の姿が目に入る。
……僕はあの怪物を生み出す力なんてないよ?いくら魔力でもそんなの無理だよ?
というか、なんでこんなに大量の怪物が平然と町に出現しているの?やばくないか?
いや、そんなことより僕が今どう動くかだ!
どう動くのが一番かっこいい!?どう動くのが一番映える!?
とりあえず上げた両手を下ろす。
その瞬間、怪物たちが動き始めた。
……え?
僕はぽかんと口を開けそうになるのを我慢する。口をぽかんと開ける姿など影を支配する者にふさわしくない!今の僕は影に潜む者なのだ!
僕は両手を動かす。
まるで指揮するかのように
なんか指揮している人ってなんかカッコいいよね!
「美しい……」
ストーカーさんもうっとりとした声を上げる。
うんうん。
満足満足。何が起きたのか一ミクロンもわからなかったけど満足。
僕の視界の下では怪物たちに襲われ、逃げ惑う市民の皆さんの姿が。
そして、出来るだけ街の人たちを助けようと動くボランティアの方々。
別に僕が助けてあげてもいいけど……まぁ、痛みを知ることも必要なことだろう。
それにいくら僕だって日本全土を、世界を救えるわけではない。
どうやら魔物の出現はこの場所だけではなくて、世界中で起きていることのようだから。
まぁ、最近の人間はたるんでいるからな。これくらいがちょど良いだろう。
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