第34話

「……テストなんて滅んでしまえばいい」


 悠真が食堂の机に顔を突っ伏し、つぶやく。

 昼休みの時間、僕は食堂で悠真と一緒に勉強をしていた。


「……同意」


 僕はそんな悠真の言葉に同意する。

 6月ももう後半。

 僕達は来たる一学期期末試験に頭を悩ませていた。

 テスト要らない。面倒。なんでテストなんかあるのだろうか。


「あ、神奈」


 僕はたまたま近くを通った神奈に声をかける。


「ん?何?」


「期末テスト近いけど、神奈はどう?勉強の進捗のほどは」


「……え?」


 僕の興味本位で聞いた何気ない一言が、神奈の時を止める。


「きまつ、てすと?」


「あれ?」


 僕は神奈の反応に首を傾げる。


「もしかして知らなかった?」


 まだ来たばかりの転校生だから知らされていなかったとかかな?


「……いや、でもつい最近も先生が告知していたよね?」


「……考え事をしていて、聞いていなかった」


「えー」


 ちゃんと先生の話は聞いていなきゃだめだよ!まったくもう。


「ど、どうしよう!わ、私全然勉強していないよ!」


 神奈が目に見えて慌てだす。


「以前の学校での中間テストどうだったの?」


「……」


 僕の質問に神奈は目を逸らす。


「……赤点が3つ。……苦手な数学の授業とか何もわかっていない」


「え?やばくない?」


 こくり。

 僕の素直な感想に神奈は小さく頷いた。


「ふふふ、こんなところに俺の仲間がいたか……」


 食堂の机に顔を突っ伏していた悠真が顔を上げ、神奈のことを見る。

 その瞳は希望に輝いていた。

 ……底辺仲間見つけたくらいで希望を持たないで?


「二人はどうなの?」


「悠真は前回赤点ばかりだったけど、僕は赤点とらなかったよ。順位も一桁だったしね」


「えぇ!?」


 僕が神奈の問いに答えると、神奈は目に見えて驚きだす。

 え……?


「あぁ。意外なことにな……」


 倉橋さんに視線を送られた悠真も神妙そうな顔つきで頷いている。


「え?何その反応。まるで僕が馬鹿だと思われていたみたいじゃないか」


 僕の言葉に二人はうんうんと頷く。

 え……?


「し、心外だよ!心外!」


「いや、ねぇ?」


「なぁ?」


 二人は顔を見合わせ、頷く。

 な……な……なぁ!!!

 僕は馬鹿じゃないよ!

 失礼しちゃうよ!


「ふんだ!二人が赤点回避できるように勉強を教えてあげようと思ったのに!もう教えてあげないから!」


「えぇ!?あ、ごめん!お、教えて!本当に私無理なの!」


「ふんだ!」


 僕は一生懸命謝ってくる神奈に背を向けた。


「あぁ!?」


 『未完結のゲームで最初の方に死ぬクソ雑魚敵キャラに転生したと思ったらなんかクソ強いんですけど?……もしかしてラスボスだったりする?』という異世界小説を投稿したので良かったら見てみてください。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る