第24話

 倉橋さんと手をつなぎながら僕は約束の地へと向かう。

 ……温かい。

 僕は今、倉橋さんと繋がっている。神奈が僕に一切遠慮なく魔力のもととなるエネルギーを流し込んでくる。

 なんで僕は当たり前かのように手を繋いだのだろうか?

 普段小夜以外で感じることのない異性の体温に僕は内心ドキドキしっぱなしだった。


 ■■■■■


「剣光よ、世の乱れを切り尽くせ!」


 僕は剣を構え、ドヤ顔で叫んだ。

 今の僕はゲームのキャラのコスプレをし、手に剣を握っていた。

 ちなみに僕がしているコスプレは女の子である。

 僕の背は小さく、顔も中性的なので男の子のコスプレをするよりも女の子のコスプレをするほうが似合うのだ。


「何をやっているのよ……」


「違うよ!古華奥義!でしょ?」


「……なんで私までこんな格好しなくちゃいけないのよ」


 神奈も僕と同様にコスプレしていた。

 男のキャラの。

 神奈の高い身長は男のキャラのコスプレをするのに最適だった。

 ……ちょ、ちょっとむ、胸の主張が激しくて男の子とは思えないけど。


「いいでしょ!一緒に楽しも!」


「まぁ、いいけどね……ほんと無邪気に喜ぶのね。まだコスプレするの?」


「ふふふ、コスプレはもう十分だよ。そうだな……次は飽くなき世界の探求と行こうか……くくく、我が果てなき欲望を満たせる臓物があるか……楽しみだ」


「はいはい、お腹すいたのね。あとその姿で臓物なんて怖い言葉使わないで?」


 僕と神奈は自然に互いの手を握り、ごはん屋に向かった。


 ■■■■■


「おー!」


 僕は出てきたメニューを見て歓声を上げる。

 出てきたメニューはゲームに出てくるものと瓜二つだったからだ。

 すっごいここまで再現されているんだ……!


「いただきます!」


「ふふふ、かわいいわね。本当に」


 ■■■■■


「ガッテム!」


 僕は一番くじを投げ捨て、崩れ落ちる。

 これで50回目だ。

 僕の好きなキャラのフィギュアが一番くじの景品として出されていたので欲しかったから幾度もやっているのだが、びっくりするくらい当たらない。

 全部下位賞だった。ラバーストラップは嬉しいけど…….

 もう残りも少ないのだ。そろそろ当たってくれてもいいんじゃないだろうか。

 3つ全部残っているはずなのに!

 いっそ無理やり結果を変えて手に入れてしまおうか?

 いや、悠真に怒られる。

 ……辞めておこう。

 まだまだやりたいが……お金が。

 小夜にお願いしたらお小遣いupされないだろうか?


「はー、ものすごい熱ね。私も一回だけ引いてみようかしら?」


 幾度も挑戦する僕に触発されたのか


「あ、当たった」


「なんで!?(・Д・)」


 確かに神奈が僕に見せてきた一番くじにははっきりと僕が欲しかったキャラのフィギュアが当たったことを証明していた。

 くっ羨ましい!


「じゃあ、はい。あげるわ」


 せっかく当てた景品を僕に向ける。


「ふぇ?……いいの?」


「えぇ。勿論。別に私はこれがどうしても欲しいわけじゃないからね。これは私からのプレゼントよ」


「ありがと!」


 優しい!優しくていい人だ!

 この恩は必ず忘れない!

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