第21話


「神奈。……私の言いたいことが……わかっているよな?」


「……はい。お父様」


 私はうつむき、お父様の言葉を待つ。


「お前が戦ったのは人災級。君の兄や姉は高校生にもなれば単騎で退治していた。倉橋家の人間ならば最終的に単騎で災害級まで倒してもらわなければ困る」


「……はい」


 私は落ちこぼれ。

 倉橋家の落ちこぼれだった。私は。兄や姉には到底敵わない。

 私はまだ、部下を率いてもなお人災級に負けそうになってしまうくらいには弱かった。


「今回はたまたまなんとかなったものの……。あぁ、そう。お前を助けたという謎の組織についてもこちらで調査中だが、2度も会ったのはお前だけだ。出来る限り探しておけ」


「了解しました……」


「倉橋家の名に恥じぬよう、お前も努力しなさい」


「……はい」


 努力くらい……私もしている……。

 泣きそうだった。弱い自分に、不甲斐ない自分に、どうしようもない自分に。


「まずはお前に与えた任務。なんとかしなさい」


「はい……」


 ■■■■■


「ねぇねぇ、倉橋さん!」


 銀髪に赤と黒のオッドアイを持っている珍しい美形で可愛らしい少年、夜桜 風和が私に明るい表情を見せながら話しかけてくる。


「あぁ、ごめんね。今忙しいからあなたに構えないの。ごめんね」


 申し訳ないが、私は彼と会話しないように動く。

 一時、何の魔素も力も感じないこの少年が、私を助けてくれた仮面の男なんじゃないかと思い、話しかけていたのだが……クラスの女子から睨まれた。

 どうやら、彼の親衛隊なるものが結成されているらしく、軽々しく夜桜さんに話しかけた私は彼女たちに捕まった。

 そして、二度と軽々しく話しかけないように誓わされた。

 彼女ら曰く、触らない、軽々しく話しかけない、遠くから優しい目で見つめる。

 この三条を徹底的に守るようにと。

 若干夜桜さんへのいじめのようにも感じるが……私の目的は戦えそうな人を探すこと。

 申し訳ないけど、ここで私がみんなからハブられるわけにはいかない。

 夜桜さんについては色々と探りを入れてみたが、特に嘘もついていないようだし、おそらく何にもない。

 ただ魔素を持っていない体質として生まれてきたのだろう。

 私は彼女たちに従い、彼とできるだけ喋らないようにする。

 なのだが……。


「(゚ロ゚)」


 夜桜さんはショックを受けたような表情を受かべ、固まる。

 その結果……。

 私はクラスメートの女子たちから一斉に睨みつけられる。

 こんな声なき声が聞こえてくる。

 彼を悲しませるとか何様のつもり?と。

 答えてもいけない。逆に無視するのもいけない。

 あぁもう!面倒くさいわね!このクラス!

 私は心のなかで吠えた。

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