第17話

 ガチャガチャ。

 僕は無意味に左手で右手にかけられた手錠を弄る。

 魔力を使わない今の僕では到底破れるものではない。

 ガチャガチャ。

 それでもどうしても諦めきれずにガチャガチャと音を鳴らす。


「何をしているのですか?お兄様?」


「ひぇ」


 たまたまがヒュンッとなる。

 ヒュンだ!ヒュン!

 扉を開け、こちらを覗いてくるのは真っ赤に染まる包丁を手に握った小夜。


「余計なことはしないでくださいね?少し待っててください。美味しいご飯を作ってくるので」


「( ˇωˇ)"」


 僕は無言でコクコクと頭を縦にふる。

 小夜……なんであんな怖い感じになっちゃったの……?

 しばらく大人しく待っていると、夕食を作り終えた小夜が部屋に入ってくる。

 小夜の手に載せられているのはいい匂いを醸し出すオムライス。

 わーい!オムライスだ!

 小夜はわざわざオムライスを持っていない手で持ってきた椅子を置き、そこに座る。

 スプーンでオムライスを掬う。

 そして、

 自分の口にオムライスを含んだ。

 え?僕に食べさせるんじゃないの?

 小夜の予想外の行動に僕が驚き、口を開けていると、いきなり唇が塞がれる。

 小夜の口で。


「( ゚д゚)」


 僕の口にご飯が流し込まれる。

 さっきまで丹念に小夜がもぐもぐしていたものが。


「ふぇ?」


「お兄様は全て私に任せてくれれば良いのです。噛むのも私がしてあげます」


 え?そんな事する必要ある?心のなかでそんなことをめちゃくちゃ思ったけど、小夜が怖いので口を噤む。

 僕はその後も小夜から口移しで

 ……味がよくわからない。

 小夜の味(?)がする。

 普通にオムライスが食べたかった。

 食べ終わった後、小夜が僕が寝っ転がるベッドに入ってくる。


「血、飲みますか?」


 僕を覆いかぶさるように倒れてきた小夜はうなじを見せながら上目遣いで告げる。


「飲む」


 僕は即答し、小夜のきれいな肌に歯を立てた。

 何故かはわからないけど、8歳くらいの頃から人間の血を飲みたくなったのだ。

 別に僕は吸血鬼というわけではないんだけどね?

 いや、本当になんでだろうね?

 僕は夕食を食べ終わった後、毎日必ず小夜から血を飲むのだ。

 30分後、僕は吸血を終わらせる。

 げっぷ。

 ふぃ〜美味しかった。

 いつもどおりだと吸血の後にあるのはお風呂。

 だが、今の僕はベッドに縛られている状態。お風呂に入りたくとも入れない状態だった。

 しかし、僕は小夜の手によって服を脱がされる。

 え?いきなりなに!?

 そして、ベッドに敷かれているシーツを剥ぐ。

 すると、下に見えるのは浴槽。適温のお湯が入った浴槽がベッドの下にあった。

 どんなベッド!?

 なんかしたびっくりするくらいポカポカするなとは思ったよ。

 ……。

 いや、本当にどういうこと!?


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る