第16話

「ただいまー」


 僕は戦利品を手に提げ、帰宅する。


「おかえりなさいませ」


「うん。ただいま」


 僕の妹、小夜が玄関で僕のことを出迎えてくれる。

 わざわざ玄関で待っていてくれなくてもいいんだけど、何故か僕が出かけると毎回玄関で僕の帰りを待っているのだ。

 嬉しいことには変わりないのだが、そのせいで自由に外出しづらい。

 小夜は僕のことを子供か何かとでも思っているのか、寄り道はしないように口酸っぱく言ってくるのだ。

 全く。僕はもう子供じゃないというのに。

 だけど、寄り道したらとても小夜に怒られる。

 夜ご飯を抜きにされるので死活問題なのだ。


「ん?」


 僕は首を傾げる。

 いつもなら小夜は僕が靴を脱いだ時点で道を開けてくれて、僕の後をテクテクとついてくるのだが、道を開けてくれない。

 かといって小夜が歩き出すわけでもない。

 まるで僕のことを通せんぼするかのように立っている。


「お兄様。寄り道、しましたか?」


「ん?していないよ?」


 本当は倉橋さんを助けるために寄り道をしているのだが、それを小夜に言うわけにはいかない。

 僕の活動は極秘裏のものだからね!


「─────あぁ。お兄様。嘘をつくんですね。私に、嘘を付くというのですね」


 ぞくり。

 生まれてはじめて僕の背筋に悪寒が走る。


「お仕置き、しなきゃですね」


「ふ、ふふふ、僕はお仕置きされるほど子供じゃないのだよ!」


 僕は自身が初めて覚えた恐怖を打ち消すかのように右手を上げ、叫ぶ。

 そんな僕の右手に、

 カチャン

 無慈悲にも手錠がかけられた。


「( °◃◦)」


 僕の右腕にかけられた手錠は小夜の右腕とリンクしている。


「これはお仕置きです」


「ひゃぁぁぁぁあああ」


 予想外の力で僕は小夜に引きずられていった。

 引きずられた先は小夜の部屋。


「ひぇ」


 僕の口から変な声が漏れる。

 小夜の部屋に入ったのはこれが初めてだった。

 そんな小夜の部屋は明らかに異質だった。

 壁一面には僕の写真が貼られ、天井にはめちゃくちゃ大きいな僕の写真が。

 待って。いつ撮ったのこの写真?

 撮られた覚えの無い写真ばかりなのだけど。

 そして、小夜の部屋に置かれているものは以上に少なかった。

 あるのは部屋の中央に置かれた大きなベッドだけ。

 べ、勉強とかどこでしているの?

 僕は大きなベッドに寝かされる。

 小夜の右腕に繋がれていた手錠は小夜の右腕の代わりにベッドボードに繋がれる。

 足はロープでがっちりと縛られる。

 僕が自由に動かせるのは左腕だけだ。


「ふふふ、お兄様にはここでたっぷりと反省してもらいますね」


 僕をベッドに寝かせた小夜が怪しげな笑みを浮かべて、楽しそうに笑った。

 さ、小夜……?

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