第14話  六年生の道徳の時間。

「無茶だよ出来ないよ、危ないじゃない!」

 そうお姉ちゃんが声を上げた、僕も思う出来っこないって!。


「そうだよな、普通の人はそう思う、でも父さんはやり遂げたよ、他の新聞社の人もTV局の人も、そこから走り出した同じ仕事をしてる人たちはみんなが、ちゃんとやり遂げた。」

「何でお父さんそんな危ない仕事してたの?」

「誰かがやらなきゃ為らない仕事、でも父さんは自分が成りたくて選んだんだ。」

「何で選んだの?、あたしでも解るよ危ない仕事だって?」

「単純な理由だよ、初めてその人たちを見た時にとても格好良く見えたから、其れだけだ。」

「怪我しなかったの、間違ったら死んじゃうよ?」

 それにはお父さんは答えなかった。


「俺が高校生の時修学旅行で初めて東京に来た時だ、バスで移動してたんだが今よりもっと渋滞はひどかった、バスに乗って退屈してた、その時に渋滞の中を魚が泳ぐように凄い速さで現れて、またたくく間も無く見えなくなって消えて行った方が居た、多分百キロ近く出て居たと思うよ。」

「お父さん、そこって高速道路じゃ無いんだよね?、お巡りさんに捕まらないの?」

勿論もちろん普通の一般道路だよ普通のバイク乗りなら捕まるよ、でもみんな白バイより速いから、白バイだって追い付けやしないよ。」

「嘘でしょ?、お巡りさんの中でも凄い上手い人達でしょ?、学校に職業案内でお巡りさんが来て仕事の説明の時に言ってたよ、成りたくても成れない白バイ隊員は本当に一部の人だって!」

「でも間違い無いよ、その仕事はそんな人たちの集まりだよ。」

 僕でも判るよ危ない仕事だって事、そのお仕事大好きだって事、でも解らない事が在る、何でめたの大好きなお仕事だったのに?。


「お父さんは怪我とかしなかったの、危ない仕事、命懸けって言ってたよね?」

嗚呼ああ、そうだな小さい怪我は転んで時々してた、腕とか脚を折った事も有るよ、でも父さんは生きてるし、だからお前達二人も今此処ここに居るだろう?、死んでたらお前達も此処ここに居ないんだぞ?、其れも解るよな?」

「お父さん…、お父さんがそう言うって事は亡くなった人が居るって事なの?」

 聞かずには居られなくて、お姉ちゃんか聞いてしまった、僕も聞きたかった事だった。


「残念ながら、遠い所に旅立ってしまった人が沢山いる、手や足を失った人、大事故で体の自由を無くした人も居るよ、父さんの会社にも亡くなった先輩も後輩も居るよ。」

「恐く無かったの…?、お父さんは?」

勿論もちろん恐いさ、まあ一日中、毎日そんな事ばかりじゃないさ、普段はどっちかって言うとのんびりしてるみんな普段は優しい何処どこにでもでも居る人達だ、ただ、無茶を承知で駆ける時が有る。」



「その時は仕事だからの義務じゃ無いんだ、その仕事を自分に出来ると任された、その責任と、受け取り、そして届けて見せると言う、自分自身のプライドに掛けて文字通り命を懸けるんだ。」


「ねえ?、しかしてお父さんは其のお仕事する為にこんな遠い所まで来たの?」

 そう言えばお父さんの故郷ふるさとはとても遠い所、九州の福岡の宗像むなかたって所大きい有名な神社が有る所、まだ二回しか行った事は無いけど、車で丸一日位かかった本当に遠い所。


「そうだよ、東京にしかその仕事は無いんだ、だからただ成りたくて此処迄ここまで来たんだ。」

「お父さんが修学旅行に来なければ、其の人を見なければ、あたしもこの此処ここに存在しなかったんだね?、本当に偶然が重なってあたし達は此処ここに居るんだね!」

「そう言う事だな、もし死んでたら、死ななくても体が動かない怪我でもしてても同じだな。」

「そう考えると奇跡だね、あたし達が此処に居るのは。」

「そうだぞ、ホントに一つ何かが違っても未来は変わって仕舞う、だから大切にし無いといけないんだよ人との出会いは、だから今あの子の為にお前達は何かしようと考えた、だから今は全力を出す事だけ考えなさい、きっと何時かその答えが出る筈だから!」

 軽はずみでやって良い事じゃ無かったんだ、さっきお父さんが言った事がようやくく判った、今回だけで終わるなら止めなさいって言った言葉の意味が、そうなんだ始めたからには続けないと意味が無いんだ、僕が何かをして上げられる限り続けよう!。


「さてソロソロ一時間たったな、出来上がりの時間だ、さあ確認しよう!」

 三人で出来上がった靴を確認した、地面に置いて見る右と左でぱっと見ただけじゃ気付かない、よく見ると右と左で二センチ位高さが違う、お父さんの言った様に両方に加工をして正解だった、中敷きは普段履いてる靴の形に作って在る、靴下を重ねて直ぐに合わせて置ける様に。


「左の中敷きを外してご覧、少し心配だからネジで補強しよう!」

 工具箱からネジを取り出した、継ぎ足した部分より少し長いネジ。

「これで中からネジで止めるんだ、ネジで止めるのはお前がやるんだ難しい事じゃ無いだろ。」

 ネジを渡された凄く軽いネジ長さが4cm位、同じ位の別のネジも渡されるこっちは重い。


「アルミのネジだ、片方は鉄のネジ全然違うだろ?、片方は靴底を足して重く為ってるだろ?、少しでも軽い方が良い、それで止めるんだズレない様にこうして下準備してからな。」

 コードの付いたさっきの工具を取り出した、先端に渦巻きに為った物を取り付け長さを測って、3cmの所にテープを巻いた。

「こうすれば何処迄穴を開けて良いかわかるだろ?、開け過ぎても強度が下がるからな!」

 大きな音と共に穴が開いて行く、かかとに二か所、土踏つちふまずの少し奥に一か所。


「さあドリルの下準備は出来た、仕上げのネジはお前が締めるんだ、仕上げだ責任重大だぞ!」

 おどかされてドライバーを手渡される。

「あたしにもさせて!」

「お前には別に仕上げを頼むから、一寸待ってろ!」

「判った、待ってるから早く締めてね。」

 三本ちゃんと締めた、ズレとめ具合を確認して貰う。


「良いだろう、じゃあお前の仕事だ綺麗きれいるんだぞ!」

「任せて!、平らにするんだよね?」

 お父さんが頷いた、頭が平らな皿ビスと言うネジの上、少しずつ凹んだ所を周りと同じ高さに接着剤を塗リ、乾いた処で中敷きを入れた、遂に出来上がった。


「さあおどろく顔を見て見よう、調整はいてもらって問題有ればすればいい。」

「僕が呼んで来る!」


 玄関に向かって駆けだしていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る