彷徨

秋の昼下がり

わたしを乗せたワゴン車は

見慣れない自動車道をひたすら走り続ける

運転する老人も助手席の女も無言だ


夕方になって自動車道を降り

大きな川の河川敷にワゴン車は停車した


わたしは外に出て

葦原を駆け回る

首輪は外されていた

久し振りに眺める大きな空

川の流れ


ワゴン車が走りゆく音がした

振り返る

車は去っていく


どうしたんだろう?

わたしはなぜここにいるのか?


日は暮れかかる

葦原は赤く染まる

すこし肌寒い


帰ろう

家へ


わたしは本能のままに歩き続けた

高架道路に続く

灰色の坂道をのぼる


坂道を登ってしばらくすると

真っ直ぐな自動車専用道に入った


この道を進もう

空を見上げると紫色の薄暮

オレンジの照明灯

なぜか心細い


そしてブォーンという音が迫ってきた

一つのヘッドライトがわたしを照した

眩しさにわたしは立ち止まった

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衝突 猫乃なみだ @kanete2

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