16日 【掌編/コメディ】国政の実態 ~10万円給付決定の裏側~

 それは、殺戮であった!


「グワァァーーッッ!!?!?!」


 国会議事堂の議場、格式高い紋様の壁に『ズゴォンッ!』と叩きつけられ、クレーターを形づくるは……なんたることか! 内閣総理大臣、その人である!


「バ……バカな。奴の政圧せいあつが……膨れ上がっていく……!」

「ククッ、ククヒヒヒヒッ……!」


 総理大臣に一撃を喰らわせ、全身の骨を粉砕させたのは、かつてヒトだったモノ。即ち、の党首ッッ!!


「ヒィーヤハハハァーー!! 合体して四乗になった私の〝権力〟の前では首相といえどカスも同然よォーーッッ!!」

「ゴ、ガハッ……」

「とどめだァッ!!」


 四人の野党が合体した八本足・八本腕・四ツ首の怪物が宙に浮遊し、邪悪な権力を巨大なエネルギーの砲弾に変えていく!

 嗚呼、それは暗黒の太陽ッッ!!


「喰らえッッ!! 問責決議可決砲ォァーーーーーーッッ!!」

「く、くそォッ!! カスの分際でェェーーーーー!!!!!」

「てめェ~を弱らせ、私の中に取り込めば、権力は五乗ッ! そうなれば国政は……否、世界の政治はこの私の意のままよォォーーーーーッッッ!!!!」

「ぐぬゥアーーー」


 最後の意地でエネルギー弾を受け止め、押し返そうとするが……哀れ!! 総理大臣の権力は民主社民共産維新党党首の足下にも及ばぬ!!


「辞職しろォォオーーーーーーーッッッ!!!!」


 総理が国会議事堂ごと木っ端微塵になるかと思われた、その時であった!


「強制・法改正ッッ!! 総理保護法、施行ッッッ!!!」


 現れたのは法務大臣ッ! 総理の負担がフッと軽くなる! そしてッ!!


「超・国家予算案、強制通過ッ!! 国防費に5000兆円を割り振るッ!! ゆけい、防衛大臣!!」

「心得た!!」


 財務大臣と防衛大臣による阿吽の呼吸!! 自衛隊が巨大スーパーロボットを起動ッ!! 民主社民共産維新党党首に対してミサイルを発射し足止めを喰わすッ!!


「おまえたち……来てくれたのか!」

「総理、今こそアレをやる時ですッ!」

「ああ! おまえたちの権力、借り受けるッ!!」


 総理のもとへ、権力が集中してゆく!!


「癒・着ッ!!」


 嗚呼、嗚呼、その姿は!!


「法務財務外務総務防衛環境経済産業文部科学農林水産国土交通厚生労働官房長官一億総活躍総理大臣!!!!!」

「ば、バカなァッ!? 神にでもなったつもりかァッ!!」

「神権政治ではない……これが民主主義の姿だッッ!!!」


 二十八本の脚で地を踏みしめ、二十八本の腕をうねうね動かし、十四個の頭で政敵を睨むッ!!!


「消し飛べェッ、民主社民共産維新党党首ゥンンンンァァーーーーーッッッ!!!!!!」

「グワァッ!! こ、この、程度……!!」


 意地だけで立ち続ける、民主社民共産維新党党首ッ!!


「まだ倒れぬか。ならばッ!! 国民の支持率を上げ、権力を底上げするッ!!」

「ま……まさか!?」

「給付金だァァァァーーーーーーーーーーーーーッッッッッ!!!!!!!!!」







 18歳以下の子どもへの10万円相当の給付をめぐり、政府は15日、自治体の判断で一括で現金給付することを認めると地方自治体・地方議会へ通知した。政府が、現金5万円とクーポン5万円分の給付を「基本」としていた当初の方針を転換したことを受け、早期給付を希望する自治体からの求めがあったためだ。(朝日新聞デジタルより)

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る