たとえそれが報われない恋だとしても、私があなたを想う気持ちは変わらない
橘奏多
第1話 私は先輩に恋をする
私の名前は、
どこにでもいる平凡な女子高校生だ。
でも、そんな平凡な私には好きな人がいる。
その名前は、
1つ年上で、すごくかっこいい先輩だ。
私が牧野先輩を好きだと気づいたのは、結構最近だ。
今考えてみれば、出会った時から惹かれていたのかもしれないけど。
まぁ、好きになったきっかけから、順を追って話していくことにする。
まずは私が牧野先輩に出会った時から。
その日は、高校の体育祭の日だった。
私が出場する種目としては、障害物競走、借り物競争、玉入れなど比較的足が遅くても大丈夫な種目ばかりだった。
しかし、障害物競走の最後の最後で転び、足を怪我してしまった。
そんな歩きづらそうに歩いていた私を助けてくれたのが、牧野先輩だ。
「足怪我してるみたいだけど、大丈夫?」
私が初めて牧野先輩を見た時の印象は、チャラそうで、真面目に勉強をせずに遊んでばっかりいそうな人、だった。
心配してくれている人に対して失礼だけど、正直あまり関わりたくないと思った。
「あ、大丈夫です…………って、痛っ……」
「絶対大丈夫じゃないよね。保健室まで連れて行ってあげるから乗って」
そう言って腰を下ろし、自分の背中をポンポンと叩く牧野先輩。
でも、今後関わりたくなかったし、この時の私はそんな牧野先輩の気遣いをスルーした。
それなのに…………
「意地張るなっての」
私を強引にでも背負ってきたのだ。
「あ、あの! やめてください! 恥ずかしいので!」
「ご、ごめん……でも、歩きにくいだろ? 補助だけはさせてくれ。このまま放っておくわけにもいかないし」
必死に牧野先輩の気遣いを拒絶した私を、更に気遣ってくれる牧野先輩。
すごく気遣ってくれたし、さすがに断ることが出来ずに「補助なら……」と承諾してしまった。
「あの……すいません。折角気遣ってくれたのに」
「いいっていいって。気にすんな」
そう言ってから見せてくれた爽やかな笑顔は、すごくかっこよくて、とても頼もしかった。
そして、牧野先輩と肩を組みながら保健室まで辿り着いたのだが、なぜか保健室には先生がいなかった。
体育祭だというのに、どうして先生がいないのか謎でしかない。
「しょうがないな……座って。俺が手当てするから」
「え……さすがにそれは」
「いいから。俺こういうの慣れてるし」
そう言って牧野先輩は私をベッドに座らせ、救急箱を探し始めた。
「すいません……私のために何から何まで」
「気にすんな。俺もちょうど競技が終わって暇だったからな。そういえばお前、名前は?」
「あっ……小泉咲良って言います。2年です」
「そうか、俺は牧野祐樹。3年だ」
お互い自己紹介をし終わったところで、牧野先輩が消毒から
「ありがとうございます。牧野先輩」
「おう」
この時の私はまだ、牧野先輩のことを気になってすらいなかった。
そして、体育祭が終わってから数日が経ち、部活に入っていない私が、いつものように帰ろうと外に出た瞬間、グラウンドで一生懸命走っている牧野先輩を見つけた。
牧野先輩はどうやらサッカー部のキャプテンらしく、誰よりも練習を頑張っていた。
その姿はとてもかっこよくて、不覚にも見入ってしまった。
私はその時から、全く気にもしていなかった牧野先輩のことが気になり始めたのだった。
その日から毎日のようにサッカー部を遠くから見るようになり、クラスの友達からは「好きな人でも出来たの?」と聞かれるようになった。
気になる人ができた、と答えたのだが、どうやらそれは間違っていたらしい。
そう気づいたのは、偶然牧野先輩と廊下ですれ違った時だ。
「お、小泉さんじゃん! 怪我は治った?」
「ま、牧野先輩……あ、あの時は本当にありがとうございました。お陰様でもう治りました」
「よかったぁ〜!」
ずっと気になっていたのか、私の無事を聞いて胸を撫で下ろす牧野先輩。
でも、私はいつも通り冷静に対応しようと思ったのに、胸がドキドキして冷静を保つことが出来なかった。
その後も何度か牧野先輩とすれ違って、話す機会が増えたのだが、どんなに冷静に対応しようと思っても、胸がドキドキして冷静を保つことが出来なかった。
不思議に思った私は、そのことを友達に相談してみたんだけど……
「お! とうとう咲良ちゃんも恋する乙女になりましたか!」
「……え? 恋?」
「そうだよ! いや〜、私心配だったんだよ? 咲良ちゃんがまだ恋したことないって言うから」
私が、牧野先輩に、恋してる、だって……?
確かに私は高校2年生になった今でも、恋を一度もしたことがない。
だから私は恋がどのようなものなのかすら、分からなかった。
「私、恋してるの?」
「間違いないよ。じゃあ、試しにその好きな人のこと考えてみてよ」
牧野先輩のことを、考える…………
やっぱり、胸がドキドキする。
牧野先輩のことを考えるだけで、顔や体が熱を帯びているような感じがして……すごく熱い。
そうか……これが恋をする、ってことなんだ。
私は牧野先輩に、恋をしているんだ。
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