参.キラキラ光る宝石もどき
「もっしー。みのみのどうしましたー⁇」
電話して三コール内に出たのは、
彼は私の担当である山田と異なり、電話に出てくれて、明るく人懐っこくて、愚痴も聞いてくれるとても優しいイケメンだ。
難点は、チャラくて合コン好きなところだ。
「モリモリ、お願いがあるの。私の家に行ってほしいの」
「えーっ⁇みのみの……僕、そんなつもりは無かったんです」
「あっ⁇」
私はモリモリから思った返答が来なかったのに対して、冷たい返事をしてしまった。
もしかしたら、突然家に来いなんて言ったから、モリモリを彼氏扱いもしくはそういう目で見ていると思われたのかもしれない。
そんなつもりで言っているのではないと、誤解を解かねばならない。
「いや、モリモリ⁇違うの。私は」
「僕はみのみののお母さんじゃないっすよ!!」
「……はっ⁇」
コイツは何を言っているんだ。
「もー部屋の掃除ですか⁇それとも、忘れ物を取ってきてほしいんですか⁇僕はそんな子に育てた覚えはないですよ⁇」
そもそもお前に育てられた覚えはない。ぽかんと口が開いてしまった。
「まぁ、冗談ですけどね!!ハハッ」
「……マジでふざけてる場合じゃないの!!!!」
大声を出して、ハッとした。
ゆっくりと後ろを振り返る。
私が隠れていた柱の反対側に、お河童の少女がぺったりと張り付いていた。
『みぃーつけた』
「あぁぁぁぁぁっっっっっ!!!!」
私は絶叫して柱から離れて全速力で走り始めた。
「みのみのー。耳が痛いでーす」
「うるっさい!!あんたのせいでバレたのよ!!」
ケタケタ笑うモリモリに殺意しか芽生えない。
とりあえず、またどこかに隠れなければと思いながら廊下を走り続けた。
曲がった先に玄関があった。
玄関から外に出ようとしたが、靴が無い。
とりあえず、裸足でも良いから外に出ようと足を下ろそうとしたが、足を下ろすのを止めた。
最初に入った時、玄関は石畳だったはずだが、キラキラと輝いている。
丸くてつるつるしそうな……まるであの時見た宝石のようだ。
『オジョォジャンニアゲルォォォッ』
突然横からガラガラで低い男の声が聞こえた。
声のする方に視線を移動させる。
そこには、真っ赤でギラギラした目の太ったおっさんが立っていた。
今まで走ってたのかと思うくらい息が荒い。
目が合うと、にっこりと笑ってきた。
「いぎゃぁぁぁっっっっ!!!!」
私は玄関を背に、廊下を全速力で走りだした。
「みのみのー⁇また遊んでるんですかー⁇」
「遊びじゃなくて呪いだよ!!」
半泣きになりつつ、とにかくおっさんから離れねばと思った。
あのおっさんは……
おっさんは……
何をするのだろうか。
わからないが、とにかく怖いので逃げた。
「みのみのー⁇逃げないで立ち向かう事も大切ですよ」
突然まともな事を言ってきたモリモリに文句を言ってやりたいが、確かに一理ある。
記憶にあるおっさんはそこに座っていただけだ。
私は立ち止まり振り返った。
……振り返った瞬間、頬をシュッと何かが飛んで行った。
そして、壁にぶつかったのだろうか、ガンッと大きな音が聞こえた。
壁を見ると先ほどの玄関にたくさんあった宝石もどきが壁に埋め込まれていた。
私は再びおっさんの方を見る。
すると、おっさんは先ほどよりもにっと口を広げて笑っていた。
『ブーレゼェンドォォォ』
おっさんは丸いキラキラとした宝石もどきを私に向けてぶん投げてきたのだ。
「ちょっむりやぁぁぁっ!!!!」
私の奇声を聞いて、またもモリモリがケタケタと笑っていた。
今度会ったら、絶対に踏み
右、左、しゃがむ、ジャンプを繰り返しながらとにかく廊下を走り続けた。
なんとか避ける事ができて一命は取り止めているが、目の前の壁がどんどん宝石もどきが埋め込まれておりキラキラと光りまくっていた。
廊下が思ったより長くて大変だったが、私はやっと曲がり角が見えて安心した。
だが、後ろから大きな声が聞こえてきた。
『ドォグダイブレゼェンドォォォ』
振り返ると、どでかい宝石もどきを持ち上げていた。
助走をつけて私に向けてぶん投げてきた。
「そんなん無かったでしょぉぉぉぉっ!!!!」
おりゃぁっと大声を上げて、曲がり角に飛び込んだ。
その瞬間、先ほどまで私がいたところに大きな宝石もどきが吹っ飛んできた。
ドゴンッッッと音とともに砂煙が舞った。
私はその場で腰が抜けてしまった。
「これ……真面目にお
私は震えて動けなくなりそうだったが、スマホから声が聞こえてきたので耳に当てた。
「みのみの⁇大丈夫ですか⁇」
「……ヤバいかもしれない」
こんな大変な状況なのにふざけてばかりのモリモリは本当に許せないが、今はそんなヤツの声ですら安心してしまう。
私はもう大人だと言うのに、あの頃のように泣きじゃくり始めた。
「モリモリー。ぐすっ、私の家……ぐすっ、小太鼓……」
「……わかりました!!とりあえず、みのみのの家まで行ってみます!!じゃっ!!」
「えっ、ちょっ」
そう言うと、モリモリは電話を切ってしまった。
人が怖い思いして泣いている時に、電話切るとは……実はモリモリは鬼なのではないかと思う。
「もぉーやだぁっ」
私はその場でスマホをぶん投げたかったが、命綱を手放すほど馬鹿ではなかった。
『どーこー』
また、あのお河童の少女の声が聞こえてきて、私はビクッとしてしまった。
どうやらこのまま泣いている事は許されないようだ。
私は身体を床に近づけ、
とにかく隠れられる場所を探しに。
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