第20話

「それにしても狭いわね。ここ。明らかに人が入りきれていないわ」

 

 ぼそりとお母さんが呟く。


「確かにそうだね」

 

 僕もお母さんの言葉に頷く。

 今は昼休憩。普通に僕はこの教室で昼休憩をとっていた。

 ちなみに接客は止まっている。お客さんは全員外で待っている。


「じゃあ隣の壁をぶち抜いちゃおうかしら?」


「……え?」

 

 僕は確定オカマさんの言葉に動きを止める。

 ……え?確定オカマさんまでそっちなの?そっちのアタオカに進んじゃうの?


「大丈夫よん。心配しないで。ちゃんと考えがあるのよん」

 

 確定オカマさんがそう言ってパチンとウィンクをする。


「別に良いわよね?先生」


「えぇ。それが賢人のためになるのであれば」

 

 担任の先生は確定オカマさんの言葉に頷く。

 ……いや、僕のためにはならなくない?僕の仕事が増えるだけだよ?忙し忙し。


「じゃあ行くわよん?」

 

 バンッ目の前から確定オカマさんが消失する。


「……へ?」

 

 ドゴンッ

 

 次の瞬間にはこの教室と隣の教室の壁が吹っ飛んでいた。

 そして──────

 壁が吹き飛んだときに飛び散った瓦礫類は全て粉となった。

 ……ん?粉?


「え?」

 

 急に粉になって消えた瓦礫を前にみんなが唖然とする。壁をふっとばした確定オカマさんまで呆然としている。


「あぁ。邪魔なものは全部吹き飛ばしておいたよ」

 

 和葉がなんてことがないかのように告げる。


「……そ、そう」

 

 僕はなんとも言えない表情を浮かべる。


「理沙。い、えぇぇぇぇ!?」

 

 そして、教室に入ってきた愛理が早変わりした教室を目にして驚愕に目を見開いた。

 後ろについてきた霧音も口をあんぐりと開けている。


「何をしているの……?」

 

 厨房から出てきた鈴鹿も苦笑いしている。

 理沙はせっせと粉を集めている。


「え?な、何を!?瓦礫を粉に!?」

 

 普段は狼狽えない天音さんも驚愕している。

 みんながワイワイガヤガヤ。和葉の超人的な身体の力に、教室に変貌具合に驚いている。


「あっはっはっはっは!」

 

 僕はそんなみんなを見て笑い声を上げる。


「ん?どうしたの?」

 

 いきなり笑いだした僕に向かって和葉が笑いかけてくる。


「ん?いや、楽しいなぁと思って」

 

 僕は和葉にそう返答する。

 今まででは考えられなかったことだ。

 ずっと引きこもっていた生活。僕の生活はそんな時より大きく変わった。

 結婚した。

 友達出来た。

 こうして誰かとリアルで混じり合い、会話もすることが出来た。

 世界は変わっていっている。

 昔。

 昔願ったゲームのリアイベに出るという夢にも手が届きかけている。

 

「僕は和葉とあえて良かったよ。ありがと。大好き」

 

 僕は和葉に向かって笑みを浮かべ、告げた。

 良し!

 ゲームのリアイベに出るため。これからも頑張っていこ……。

 

 

 貞操観念が逆転した世界へ転生した引きこもりニートゲーマー少年はリアイベに行きたいようです!  完🍊

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