学園祭

第1話

「やふー!!!」

 

 僕はふっかふっかのソファにダイブする。

 ソファは優しく僕を包み込んでくれる。

 柔らかけぇってばよ。

 ビチャっていう気持ち悪い受け止め方ではない。ふわっという気持ちいい受け止め方をしてくれている。


「んーはぁー」

 

 僕は深く息を吸って吐く。

 僕の鼻に入るのは気持ち悪い匂いじゃない。いい匂いだ。もう……なんか染み込んで腐ったゲボ吐く匂いじゃない。酢のようなすっぺい匂いだ。


「……ご、ごめん」

 

 そんな様子の僕を見て、和葉が謝る。


「いや、良いよ良いよ。僕がソファで誘ったのがいけないわけだからね」


「あ、ありがとう」

 

 新しいソファ。

 僕達がおせっせしたせいで、どうしようもないくらいにビチョビチョになってしまったソファを買い替えたのだ。

 やっとね。

 ようやくとんでもねぇ異臭を放つソファを捨てる事ができたのだ。


「よし、と」

 

 僕はゆっくりと立ち上がる。

 

「夜ご飯だね!一緒に作ろうか!」


「うん。そうだね」

 

 僕と和葉がキッチンに向かう。


「どうしようかなぁー。何作ろう」


「……牡蠣やうなぎなんかが良い。デザートにすいかとかも」


「……」

 

 僕は和葉の言葉に固まる。


「精力のつく食べ物ばっかじゃん。そんなにしたいの?」


「うっ……」

 

 僕の言葉を聞いて和葉は頬を赤らめ、うつむく。

 恥ずかしがるなら言わなければ良いのに。

 というか、精力のつく食べ物を食べても意味ないんだけどなぁ。もうサプリとかめちゃ飲みまくっての今なんだよなぁ。

 全然敵わない。ずっと下で死んでるよ。僕は。


「はぁはぁはぁはぁ」

 

 僕と和葉の会話を聞きながら息を荒らげる天音さん。なんかもぉ色々とカオスだよなぁ。


「じゃあとりあえず今日はカキフライでも作るか」


「うん!」

 

 僕と和葉は一緒に夜ご飯を作り始める。

 

 僕と和葉が籍を入れてから早一週間。

 別に何の問題もなくいつもどおりの生活を送っていた。

 籍を送る前との生活とほとんど変わらない。

 唯一変わったことと言えば、夜の生活である。

 死にそうです。

 切実に。

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