第31話
「あー」
僕は精魂尽き果て、ソファの上で倒れていた。
「その……大丈夫……?」
無我夢中で僕の上で運動をしていた和葉が戸惑いがちに僕に聞いてくる。
和葉に疲れた様子は見れない。
理不尽。僕はこんなにも精根尽き果てているというのに。
途中これ僕が死ぬ、って思って、和葉が持っていた道具とかも使って僕の休憩時間を作ったのに。なんなら休憩時間の方が長かったくらいなのに!
和葉はずっと叫んでいたのに!なんで疲れないんだ……。
今日。
僕は大人の階段を登った。前世じゃ登れなかった大人の階段を登ったのだ。
ついに!!!歓喜の極み!気持ちよかった!和葉可愛かった!
だがしかし、そんな喜びの気持ちがある一方で。
「……うん」
恐怖の感情もあった。
……これ。
一人でこれでしょ?
数人いたらどうなってしまうんだ……僕は震える。
ヤバい。この世界ヤバい……。そりゃ自殺するわ。男たちがこぞって自殺する理由がわかった気がする。
好きでもないやつから搾り取られ続けるとか地獄だわ。
「その……ごめん……」
和葉が項垂れている僕を見て申し訳さそうに頭を垂れる。
「もう……しないか」
「は?」
僕は和葉の言葉を遮り、僕のそばに立っていた和葉を引っ張り自分の口元に和葉の唇を持ってくる。
今日でもう何度目かわからないほどしたキスを交わし、和葉の耳元で囁く。
「僕は一度も嫌だと言っていないよ?和葉のことは好きだし、気持ちよかったよ」
「はぅわ!?」
僕の一言に和葉は耳を真っ赤に染め上げる。
「……もう一度、しよ?」
「ごめん。それは無理」
「はぅわ!?」
頬を真っ赤に染め、ためらいがちに告げられた言葉を僕は拒否する。
ごめん。それだけは無理。本当に死んじゃう。
「ほ、ほら!片付けしないと!」
僕はビチョビチョになったリビングを見る。
なんかもぉ、まぁすごいことになっていた。
水たまりができていやがる。
ソファなんかもう水のソファ。海の上に寝そべっている。
それに……。
「うっ」
僕はリビングの端に視線を向ける。
そこにはもう一つ小さな水たまりができていた。
視線の先にいるのは天音さん。天音さんは気まずそうに視線から逃れる。
僕と和葉のおせっせを見て滾りまくった彼女が一人で作ったものだ。
「そっちの片付けもあるしね」
「も、申し訳ございません……」
「そういう時用のお部屋も用意していいかもね」
僕はそんなことを呟きながら、立とうとして……上手く立てなかった。足腰がガクガクだった。
「次は止めて!って言ったら止めてね!」
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