第19話 1人暮らし

 かくして私は、誰にも何も言わぬまま、グングン自己破産手続きを進めます。23歳の時でした。

 それから2、3ヵ月経った頃、家族に「ましろ今、自己破産手続きしてるからね」と告げます。


 母は大変ショックだったらしく、「もうお金の無心しないから、破産だけは辞めて」と言ってきました。

「10年くらいローンが組めなくなるし、事故情報が載るよ、どうするの」と。


 私としてはもう手続きは佳境に入っていましたし、ぶっちゃけ「冗談じゃねえよ」でした。


 自分で借りておいてなんですが、今後10年以上かけて――好きでもない――親の借金を返済するなんて、真っ平御免です。

 母が口だけなのは嫌と言うほど分かっているんですから、どうせ金の無心もなくなりません。


 ただでさえ人生を「無駄」にしているんですから、いい加減自分のために生きたかったのです。


 その頃にはさすがに、姉も兄も働いていました。

 父は相変わらず無職でしたが、洗濯物を干して、しまうぐらいはできるようになっていました。


 痴呆が進んだ祖母は、転んで足を骨折したのをキッカケに、寝たきり状態になって施設へ入居しました。

 入居費用は祖母の年金で払う――とのことでしたが、先日、実は母が一度も費用を払っていなかったことが判明しました。これはまた別の回で話しましょう。


 母もパートが続いていましたし……家計全体の収入的には、私が孤軍奮闘していた時よりも、プラスになっているはず。

 ――まあ、母の代わりにいくらでも借金していた私が抜けるのは、確実に痛手だったでしょうけれど。


 とにかく私は「もう今更手続き辞めるのは無理だし、自己破産は絶対にする。当然、もうお金貸すとか無理だから――ああ、車なくなるから、誰かちょうだい」と言えるぐらいには成長……いや、遅すぎる反抗期に突入していました? (笑)


 こちらの目論見通り、「娘を自己破産まで追い込んでしまった」という罪悪感に駆られたのか――母はそれ以来、金の無心をやや控えます。

 ここで「やや控える」程度で留まってしまうのが、サイコパスクオリティですよね。無心されても勿論、「自己破産するのもタダじゃないんだよね」と断りました。


 ちなみに、車は母が使用していたものをぶんどりました。


 やがて、裁判所から自己破産の承認を受けた私は、念願の1人暮らしを開始するために動き出します。

 これまた家族には一切相談せず不動産屋を訪れ、さっさと賃貸契約を済ませて。


 最初は必要最低限の、冷蔵庫、洗濯機、電子レンジ、炊飯器――ついでに安かったから、トースターを買ったかな?

 エアコンは部屋に元々ついていましたし、ガスコンロもオマケでもらえました。

 寝具はしばらくの間、実家で使っていたもので繋ぐことにして。


 引っ越し準備を終えた私は、またしても家族に事後報告です。「部屋が決まって借りたから、1人暮らしするね! 2週間後には出るわ、みんな元気で!」と。


 私は最後まで、家族に面と向かって恨み言をぶつけませんでした。

 こちらの気持ちなんて、口に出さずともこの「行動」で全て分かるだろうと。


 そもそも自分も大概、選択を誤った自覚がありました。

 色んなことを諦めて、決めつけて、怖がった結果が自己破産なのです。

 今更恨み言をぶつけたって、何にもなりません。使ったお金も時間も戻りません。スッキリもしません。人と言い合いする労力と、体力が無駄になるだけ。


 だっていつか兄が言った通り、会話が成り立たないのですから。相手は心のないモンスターたちですよ。


 それに、争いは同じレベルの者同士でしか起こらない――と思うぐらい、これでもかと見下していましたから。

 いや、ミジンコ対ミジンコの勝負ですけどね! (笑)


 ――ついに1人暮らしをスタートしたましろは、伸び伸びと暮らすようになりました。

 肌艶はよくなり、リスカ癖も回復し、安心したらぶくぶく太りました←


 ちなみに、過去「死にたい」と思っていた私を、「どうにかして生きたい」と思い直させた男性。

 当時働いていたホテルの上司だったんですけどね、実は彼が今の旦那――と言えたらロマンチックだったけれど、残念ながら旦那にはなってくれそうもありません(笑)


 今も一緒には居るんですが、年齢差が凄くてですね……私は構わないと言っても、向こうが委縮して――遠慮して? 結婚には全く乗り気じゃないんですよ。


 私とコメント欄で絡んだことのある皆さんは、私をいくつぐらいだと感じたでしょうか。


 中卒ということもあり浅学で一般常識に欠けているため、とんでもなく若い学生と感じた方も居るでしょうか。

 それとも昔のアニメや古いネタが分かるから、それなりに歳がいっていると感じたでしょうか。


 実は来年で、ちょうど30歳なんです。


 かれこれ6年ほど一緒に居る男性は、17歳も上でしてねえ……「若い女性を遺して死にたくない」とか「確実に要介護案件だ」とか言い訳して、結婚してくれません。

 その割に我が家から出て行かないのが面白いです。


 気付けばお互い、恋でも愛でもなく情で一緒に居る感じなので、「まあ、別に良いか! 籍入れないと色々自由だしさ!」と吹っ切れています(笑)

 私はともかく、相手は世間体も気になるでしょうしねえ……「ロリコン」なんて揶揄されかねません。


 彼は彼で過去、婚約者だった女性にこっぴどく捨てられたトラウマがあるらしく――それをいまだに引きずっている感があります。

 ちなみに顔は福山〇治似ですよ! (はーい、そうでーす、メンクイでーす!)


 いや、顔で選んだ訳ではなく、仕事中に頼もしい姿を見たから好きになったんですけど。


 長い間家族の面倒を見ていたせいか、「頼りがいのある年上に庇護されたい欲」が半端じゃないんです。

 今まで庇護されなかった分、どうにかして庇護されたい。「庇護を取り戻したい」ぐらいの感覚です。

 気付けば、10歳以上離れた男性でなければ好きになれなくなってしまいました。


 この「10歳以上」というのが、たぶん姉のせいなんですね。

 10歳離れた姉が「アレ」なんだから、もっと上じゃなきゃ無理だ、ヤベーと刷り込まれたのです(笑)


 40歳間際で、いまだに虐められているような人ですからねえ……あの人は特殊すぎるんでしょうけど。


 とにもかくにも、私は無事に家を脱して――顔を合わせることもないからと、金の無心も一切断れるようになりました。


 たまにメールで、家族の愚痴を聞かされるぐらい。

 よく兄や姉からは「母さんが金貸せばかり言ってくる」「また金を盗まれた」と送られてきましたが、「そうなんだ、つらいね~」ぐらいの返信しかできません。


 だって私は、8年以上耐えましたから(笑)

 私ができたんだから、そこまでは2人も頑張れよという感じでした。


 父は元々口下手だったので、家を出たら一切関わりがなくなりました。

 祖母は相変わらず施設に居て、見舞いに行ったことは一度もありません。どこに居るのかすら把握していませんでした。


 母は兄や姉について、「稼ぎが少ない」だの「お金を隠してる、貸してくれない」だの愚痴ってたかな?

 相変わらず、無職の父についても愚痴っていましたね。


 大事をとって誰にも新しい住居を教えなかったので、新しい生活は平和そのものでした。

 まあ、3年ぐらいしたら教えてあげたんですけど、一緒に住んでいる人が居ることも伝えていたので、遠慮して誰も訪ねてきませんでした(笑)

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