第14話 キャンディでスマイル

Side:ショウセイ


 孤児院にお邪魔している。

 なんせ孤児院はティシュペーパーでスマイル100円ラッシュだ。


「ショウセイ、いらっしゃい。いつも寄付をありがとうございます」


 メグが俺を見つけたのだろう寄って来た。


「寄付するのが俺の仕事みたいなもんだから」

「強がり言わないで、品物を用意するにもお金が必要でしょう」


 スキルで出しているのを言っちゃおうかな。

 いや、勇者が居るなんて噂になったら困る。


「気にしなくても良いんだよ。金なんてもんは使ってこそ価値がある」

「無理しないでね」


「そうだ。やさしいメグにご褒美だ」


 俺はフルーツ味の飴を出してやった。


「美味しい。いっぱいあるけど皆にあげてきて良い?」

「ああ、持っていってやって」


 スマイル100円が貯まっていく。

 200円もしない飴で2000円ぐらい儲かった。

 孤児院はコスパがいいな。

 こういう場所を回って歩くのもいいかも。


 メグが戻って来た。


「街の子供達とは遊ばないのかい?」

「仲のいい子は何人かいるわ」

「その子達にも飴を持っていってあげたらどうかな」

「そんなのずるい」


「何がずるいんだ?」

「彼女らは家も家族もいるのよ」


「妬んでるのかい?」

「ううんそうじゃないけど。そうじゃないけど。ええと、笑わない?」

「笑わないさ」

「ショウセイがお父さんだったら良いなと思って。お父さんはよその子に、物を頻繁にあげたりしないでしょ」


 ああ、そうか。

 メグは俺を友達に取られると思ったのか。


「メグは特別だよ」

「どう特別なの?」

「この街に来て友達の第一号だ」

「そう、友達」


 メグは落胆したようだ。

 元気づけるにはどうしたら良いだろう。


「メグはパートナーだ。俺の商品を最初に試してもらう」

「パートナー! 私、パートナーになる!」


 メグの機嫌が直ったようだ。


「パートナーには色んな味の飴を試してもらう。大変だぞ」

「うん、頑張る」


 コーヒーキャンディ、キャラメル、黒飴、キシリトールキャンディ、ヨーグルト味のキャンディを出す。

 メグは飴を舐め始めた。


「何となく幸せ」


 スマイル100円頂きました。


「何で幸せなんだい?」

「えへへ、秘密」


 幸せそうな笑顔を見ていると理由はどうでも良いと思えてきた。

 このスマイルラッシュが長く続けばいいな。


Side:メグ


 私がパートナー。

 パートナーという事はお嫁さんよね。

 家族よね。


 ショウセイは色んな味の飴を出してきた。

 こんな色々な種類の品物をどこから仕入れているんだろう。

 きっとショウセイはやり手の商人なのね。

 その証拠に出してもらった飴はどれも美味しくて、人気商品になると思った。


 商品を見る目が凄い。

 くやしいけど、商品の上下がつけられない。


 どれも美味しくて笑みがこぼれる。

 駄目よこんなんじゃ。

 パートナーなんだから。


 飴を持って街に出る。

 よく遊ぶ子供達がいたので声を掛けた。


「孤児院にショウセイという大商人が来ているの。私と仲良くしてくれるみんなに、飴のお土産だって」

「変なの。大商人とメグは関係ないだろ」

「私はパートナーなのよ」

「そうなのか」


「私、お土産を早く食べたい」

「ちょっと押すなよ」

「仲良くね。食べたらショウセイに感謝するのよ」

「うん」


 遊び仲間達が飴をもらい笑顔になる。

 ショウセイは喜んでくれるかな。

 笑顔になると分かるみたいだから。


「美味いな」

「ほんと美味しいね」

「これってどこで売っているのかしら」

「小遣いで買えるのなら欲しい」


「じゃじゃーん、注文書よ。それと印章」

「うわ、すげぇ。印章じゃないか」

「みんな印章を持てるのよ。ちなみに飴は一袋銅貨10枚」


「少し手伝いをしたら買えるわ」

「そうね」


「欲しい人は注文書に印鑑を押してね」


 こんな美味しい物を銅貨10枚で売って大丈夫かな。

 きっとショウセイには何か考えがあるんだわ。

 でも失敗したら、私がフォローしてあげないと。

 だってパートナーだから。

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