第7話 マッチでスマイル
Side:ショウセイ
「ふぁー、よく寝た」
寝台は硬かったが、疲れていたので熟睡できた。
少し虫に食われて所々がかゆい。
衛生状況が悪い所のあるあるだな。
この辺の改善も後々にやっていきたい。
ぐがっ。
起きたら腕が猛烈に痛い。
筋肉痛だなこりゃ。
今日は力仕事を絶対にしないぞ。
「ショウセイ、起きた!?」
クロエちゃんが起こしに来た。
「うん、ばっちりだ」
「行こ、行こ。早く」
クロエちゃんに手を引かれて家に入る。
「おはようございます」
「おはよう」
シンタさんはリビングで水を飲んでくつろいでいる。
「おはよう。クロエ、朝ごはんの支度手伝って」
ジェシーさんはそう言って席を立った。
「ええー」
「文句、言わないの。いいお嫁さんになれないわよ」
「いいもん。将来、ショウセイと結婚する」
「あらあら」
「子供の言う事ですから。シンタさん、にらまないでくれます。クロエちゃん、朝ごはんの支度を一緒にしよう」
「やる」
三人で炊事場に入った。
ジェシーさんは灰が入った壺の中を鉄の棒でかき回し始めた。
「火種が消えているわね。クロエ、火熾しやってみなさい」
「分かった」
クロエちゃんが火打石をカチカチやり始めた。
木をほぐして綿状にしたものに火花を浴びせるが、一向に点く気配がない。
「できない」
「もっと力を入れて」
「できないよ。無理」
「もう、根気が無いんだから」
「俺のスキルの出番がきたようだ。出でよマッチとライター」
ライターは100円。
マッチは12箱で170円。
「これどう使うの。教えて、教えて」
「ライターは少し握力がいるからマッチにしておこうな。赤い方を箱に当ててシュッと擦る」
クロエちゃんはマッチを一本取り出すと火を点けた。
「やった、簡単だ」
スマイル100円頂きました。
「ショウセイさんのスキルに頼りすぎるとクロエが堕落しそうね。見た所マッチだと半年ぐらいしか持ちそうにないわね」
「それなら良いのがある。ファイヤースターターだ。一万回ぐらい使えると聞いた事がある。少し高いので今は買わないが、マッチとライターでスマイルを稼げばすぐに買える」
「ライターの使い方を教えて」
「このボタンを強く押すだけだ」
ライターのボタンをカチっと押し込む。
ボっと火が点く。
「便利なのね。近所に貸し出すようにするわ。クロエ、マッチを配って歩きなさい。説明もちゃんとするのよ。それぐらい出来るわよね」
「うん、任せて」
クロエちゃんのおかげで1500円が貯まった。
俺がおすそ分けした事をちゃんと説明してくれたんだな。
よし、ファイヤースターターを買おう。
ファイヤースターターはマグネシウムの棒に缶切りみたいな形状の着火器が付属している。
前にキャンプで使った事がある。
使い方は簡単だ。
着火器でマグネシウムの棒を擦れば良い。
やってみると盛大に火花が散った。
火打石など比較にならない。
「うわ、きれい」
「クロエちゃんも、やってみるといい」
「うん」
盛大に火花が散り、クロエちゃんは木の綿に火を点ける事が出来た。
クロエちゃんは、にぱっと笑い。
スマイル100円ゲット。
「ファイヤースターターなら湿気ないし、かなり長い間使えます。クロエちゃんの嫁入り道具になるぐらいにね」
「ありがとう」
ジェシーさんからもスマイル100円頂きました。
「さあ、クロエ、スープを作るわよ」
朝飯の支度が始まった。
Side:クロエ
火種が消えていたので、火熾しする事になった。
火打石を打ち合わせるけど、ほとんど火花が出ない。
なんで、こうも上手くいかないのかな。
見かねたショウセイがマッチとライターと言う物を出してくれた。
マッチは不思議だ。
赤い所を箱ですると火が点く。
どういう仕組みなのかな。
マッチを配って歩く事になった。
「ごめんください。おすそ分けにきました」
「ご苦労さん。ジェシーによろしく言っておいてね」
「おすそ分けはショウセイからだよ」
「ああ、あの巡礼者の」
「マッチの使い方を教えるね。赤い方を箱のざらざらした部分でこするの。そうすると火が点く」
「やってみてもいいかい」
「うん」
隣のおばさんがマッチを使う。
「こりゃ、便利だね」
にこっと笑って、家族を呼んでもう一度やる。
隣の家族全員が笑顔になった。
ショウセイの周りは笑顔が絶えない。
だから好き。
でもショウセイは私なんか気にしてない気がする。
決めた。
ショウセイの便利な道具をみんなに紹介して回るんだ。
きっとショウセイも喜んでくれるはず。
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