第29話 機工魔女の策略

 この世界に来て、本格的なダンジョンとなる。


 ダンジョンか。どんな相手が待ち受けているのだろう?


 おっと。俺だけが盛り上がっても、仕方がないな。こちらの世界の住人にとっては、死活問題なんだ。


 ここは、ドワーフにとって最高の採掘所らしい。

 このエリアを制圧されると、この一帯にある資源がほとんど失われてしまう。


 そんな採掘所を、機械人は完全制圧してしまった。ゴスロリの令嬢によって。


「ミーは機工魔女 クォワスよぉん! ここを、ダイデンドーの墓場にしてやるわぁんッ!」


 その令嬢は、格好こそゴスロリだが、結構、年齢が行っている。

 俺たちの世界で「熟女」という属性に入る女性だ。

 サイボーグ化と思ったが、違う。

 ロボットだ。

 目も腕も、すべて機械じかけであった。


「ふざけんな! ダイデンドーがいなくたって、お前なんか!」


 いきり立ったドワーフが、斧でクォワスへ斬りかかる。


 しかし、クォワスは日傘だけでドワーフの斧を止めてしまった。


 なんと。力自慢のドワーフを片手で?


「ムサイ男は、嫌いなのぉん」


 日傘を跳ねさせ、クォワスはドワーフの斧を弾き飛ばす。


「な……ぐはあ!」


 ハイキックだけで、ドワーフは吹っ飛んだ。


「弱いわぁん! まほうをつかうまでもないわねえん」


 アゴに指を当てながら、クォワスは身体をよじれさせる。


「ダイデンドーは、まだかしらぁん?」

「ここにいるぜ!」


 ドワーフたちをかばうように、俺は前に出た。


「魔女! 俺がお相手してやる!」

「あらあ。やっときたぁ。ダイデンドーちゃあん」


 ドン、と、足を踏み鳴らす。


「いっちいいいいい!」


 跳躍してからの、足刀蹴りが来た。


「くっ!」


 横へ飛び、キックをかわす。


「にいいいいい!」


 次に魔女が繰り出したのは、体を大きくひねってからの裏拳だ。


「ぐほ!」


 両腕でガードしたのに、弾き飛ばされそうになる。


 ゼロ距離の状態から、魔女が地面を蹴って飛んだ。


「さあああああん!」


 次なる攻撃は、サマーソルトキックである。


 こんな大ぶりの攻撃など、よけるのは簡単だ。


 しかし、どうもおかしい。


 魔女と言っているが、コイツのやっていることはすべて肉弾戦だ。


 何が狙いなのだろうか?


「しゅーりょー」


 なんと、魔女がドレスのスカートをつまんでカーテシーをする。


「ごきげんよう、ダイデンドー」

「逃げる?」


「まさか。これから死ぬ相手に」


「なんだ……とおおおおおお!」


 突然、地面が揺れだす。


 天井が崩れ、ガレキが降ってくる。


「いかん、リオ、ジョイス、逃げ――!」


 俺はガレキの下敷きになり、リオとジョイスから分断された。 


「そうか、お前の魔法は、土属性!?」

「ほほほーっ! 今頃気づいたのぉん!?」


 さっきの攻撃は、岩に魔法で刺激を与えていたのか。

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